ナポリ戦後に過激な発言でクラブを批判した本田圭佑【写真:Getty Images】

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ナポリ戦後に不満を爆発させた本田

 ミランは現地時間4日に行われたセリエA第7節のナポリ戦で0-4の完敗を喫した。この試合で日本代表FW本田圭佑に出場機会はなく、2試合連続出番なしとなった。試合後、普段あまり記者の質問に答えることのない本田が、現状について不満を爆発させ、過激な批判をしたことが日本でも大きく報じられた。その矛先は、クラブの補強方針、監督の自身の起用方法、そしてファンにまで向けられている。果たして、彼の発言の真意は何だったのだろうか。

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「敗戦から何かを学ばないと、いつまでたっても再建というのは程遠いかなと思います」

「選手は気づいていてもこのチームは変わらない。やはりそのトップの部分で、経営陣が気付く、そして監督が気付く。そして選手たちが気付く。そしてファンたちもやはり気づいていかないと」

「今ユーベもちょっと危ないでしょ? ほんとイタリア危ないっすよ。だから、イタリアのメディアにこれ伝えておいてください。今僕が話していたことを。また、散々っぱら僕のことを叩くでしょうけど」

 大放言だった。ナポリ戦後のミックスゾーンで本田圭佑は立ち止まり、「聞くことないでしょ」と言いながら6分間にわたり思いをぶちまけた。なんだかんだでチャンピオンズリーグ(CL)で2勝しているユーベのくだりなど突っ込みどころも少々あったが、フラストレーションが溜まっているのは伝わった。

 日本でも大々的に報じられたと聞いたが、強い口調での批判に至った真相が気になるところ。ただ断片的にしか伝わってないかもしれないが、コメントの中で彼は不満の所在をはっきりと語っている。

 まず、「なんで出れなくなったのか分からない」ということ。本人の中では、シニシャ・ミハイロビッチ監督から命じられたタスクをこなしていたという自負はあったのだろう。ただ指揮官はそれを認めつつも「攻撃面ではもう少しやってほしかった」と地元メディアに話していた。

 もしかしたら本人にもそれは伝わっていたのかもしれないが、ともかく納得はいっていない。先発を外されたジェノア戦、ナポリ戦の2試合で攻撃陣が爆発するのならともかく一点も取れず、おまけに組織的バランスを崩して負けたのならば、一言いいたくもなるだろう。

 さらに本田はそこから監督のみならず、クラブやメディア、そして地元のミランファンに至るまで批判の矛先を全方位に広げた。フラストレーションの本流はここだ。チームの強化が進まないことについて「お金を使うか、そうじゃなければやはりストラクチャー(構造)の部分から見直していくか」と彼は提言をしたが、後者についてはメディアやファンも含めた風土に阻まれていると彼は考えている。

本田の批判はファンにも…完敗したナポリはミランの手本に?

 1年前のエンポリ戦後のことだが、彼はこういうことを言っていた。

「変にブーイングが鳴り始めると、後ろから繋いで前に行けるという雰囲気が出てこない。(ブーイングで)選手が上向きになるんであればどんどんやればいいけど、それでじゃあ自信なくしてつなげるところをロングキックに頼ってしまい、相手にまた簡単に拾われてしまう」

 攻撃的にボールをつなぐサッカーができないのは、批評的になりがちなイタリア(少なくともミラノ)の空気がそうさせていると分析し、これまでも少なからず批判的な発言をしてきた。これはずっと一貫している。

 興味深かったのは、本田が再建のヒントとして「シンプルに言えば今日のナポリにある」と言ったことだ。確かに彼らは全員がボールのないところで良く動き、自信を持ってパスを回していた。長い下積みを得て昨シーズンはエンポリで旋風を巻き起こし、ナポリの指揮官に抜擢されたマウリツィオ・サッリ監督は「選手が楽しんでプレーできているのが好調の秘訣だ」と試合後に語っていた。

 ただその背後には、確固としたバックアップがある。今のナポリは若手を主体とするという強化方針のもと地道に経営規模を拡大したクラブで、サッリも育成手腕と戦術的コンセプトの合致を理由に招聘された。

 ファンも熱狂的で、負ければブーイングもするが応援は熱い。もちろん批判されることもあり、現に開幕からしばらくは結果を出せなかったサッリ監督はその対象になった。しかしクラブは方針を曲げずに現場を支持。その結果、ラツィオやユーベをも簡単にひねる非常に攻撃的なチームが出来上がっている。

 本田がどこまでナポリの事情を把握しているかは不明だが、確かに今のミランには欠けるところである。再建のための構造的なバックボーンが欠落し、自らなんとかしようにも連係そのものが十分でない。

本田の発言は既に地元メディアへ…

 にも関わらず、「誰がいいとか誰が悪いとかという話し合い(本田)」の末に戦犯として叩かれ続けるような状況では、それは違うという気持ちにもなるだろう。この重圧を考えれば、よくモチベーションを保って苦闘しているものである。

 とはいえ、選手としてクオリティの向上は常に求められている。これはチームの状態には関係がないだろう。事実タスクをこなす一方、攻撃面での物足りなさは外野からも明らかだからこそ批判にもつながるのだ。

 何より彼は、責任者として容易に批判の対象となる背番号を選んだ。「自信がないと10番は要求しないし、駄目だった時の反動も全て理解している」。これは入団会見の時に、彼自身が語った言葉だ。

 経営者的な視点でチャンスを多く作れないチームを嘆くのも結構だが、少ないチャンスを活かして点につなげ、信頼を勝ち取るという道も追求して欲しいものである。もちろんそのためには練習から評価を挽回する必要があるが、ともかくミランのようなクラブを移籍先に選んだのもまた彼自身なのだ。

 発言内容は、すでに地元記者たちの知るところとなっていた。知り合いの記者は「ナポリに学べ、さもないと再建は10年かかるか。これは面白いな」と本田に理解を示した一方、「自分のプレーについて彼自身はどう言ってたんだ? 何も触れなかったのか?」とも語っていた。

 そして早速、今朝の『ガゼッタ・デッロ・スポルト』や『レプッブリカ』には記事になっている。「ミランはどう取るのか分からない」と書かれていたが、事態はどう転がっていくのか。

text by 神尾光臣