宇野昌磨は、シニア参戦のシーズン開幕前に、初となるジャパンオープンに出場した。

「シニアの大会はいつもテレビで観る側だったので、その中に自分が入っているのは不思議な感じです。団体戦なので足を引っ張らないように頑張りたい」

 大会前日にはそう話していた宇野だったが、10月3日の本番では2015年世界王者のハビエル・フェルナンデス(スペイン)や、休養から復帰した元世界王者のパトリック・チャン(カナダ)を圧倒する、堂々の演技を披露した。

 ジャパンオープンの前、宇野は9月16日から開催されたISUチャレンジシリーズのUSインターナショナルクラシック(ソルトレークシティ)に出場。この大会、宇野はショートプログラム(SP)の冒頭4回転トーループが3回転になって転倒、後半に入ってすぐのトリプルアクセルもダブルになって着氷を乱すなどミスを連発した。その後、フリップとトーループの3回転連続ジャンプを跳んだが、セカンドのトーループが「ソロジャンプで使用した種類はコンビネーションジャンプでは使えない」というルールに抵触して0点に。52・45点で9位発進という予想外の結果になってしまった。

 それでも、翌日のフリーでは4回転トーループと4回転トーループ+2回転トーループの連続ジャンプを成功させ、154・96点を獲得して1位。合計順位を5位まで押し上げた。ただ、フリーの後半では疲れが出てしまい、トリプルアクセルの着氷で手を突いてセカンドジャンプを付けられず、次のルッツは2回転になって転倒と、納得できない演技に終わっていた。

「シニアで戦うには体力が一番重要だと思って課題にしてきましたが、初戦ではその課題が出てしまった。SPでは体力をセーブして滑ってしまい、演技が終わった後、もう一回できるのではと思うほど体力を余してしまいました。逆にフリーでは後半がすごく疲れてしまい、まともにジャンプが入らない状態になってしまいました。SPで失敗して、体力がなくても前半で倒れてもいいくらいの意識でやっていかなければいけないと思った」

 こう話す宇野は、以前は氷上の曲をかけた練習でミスをするとそこで曲を止めてやり直していたが、帰国後はミスがあっても最後まで通しで続けたという。帰国してからジャパンオープンまでの期間は短かったが、そんな意識を集中させたトレーニングの成果が、フリーのみで勝負する今大会で早くも表れた。

「元々の構成の確率が悪かったので、ふたつ目の4回転を後半に入れただけで、難しくしたという意識はないです」と言う宇野は、最初に4回転をふたつ並べていた初戦の構成から、4回転からの連続ジャンプを後半に入れる構成に変更した。

 迎えた本番では、冒頭の4回転トーループは重心が少し前に残ってしまう不安定な着氷になりGOE(出来ばえ点)の加点も0・11点にとどまったが、6分間練習から好調だったトリプルアクセルは単発の加点が2・00点、3回転トーループとの連続ジャンプは1・71点の加点をもらう完璧な出来で流れに乗った。

 その後のスピンやステップとつなぎのスケーティングでも、昨シーズン以上に指先まで意識を張りめぐらせた丁寧な動きに加え、重厚な曲調の音楽にも乗った、大きさと力強さのある演技をした。

 そして、後半のジャンプの要素も4回転トーループ+2回転トーループを含めてすべてで加点をもらう完璧な演技をし、パーソナルベストの185・48点を出したのだ。

 試合前に「アメリカの試合ではいい演技ができなかったので、日本の初戦では自分の気持ちに火がつくようないい演技をしてシーズンへ向かっていきたい」と話していた通りの結果。この大会でシニアでも十分に戦っていける力があることを証明した。

 宇野本人は、この演技を80点と自己採点。「点数が出るまでこれだけいただけるとは思っていなかったので、自分でも驚きました。185点という点数もうれしかったし、海外の試合が悪かったなかでここまで出来たので達成感もあります。でもここで満足することなく、もっともっとやっていかなければと思いました」と意欲的だ。

 フェルナンデスやチャンの練習を見て、「トップ選手は、曲がかかるとすごく滑らかなスケーティングをするし、幅や安定感のあるジャンプを跳んでいるので、僕もああいう風になりたいなと思いました」と話していた宇野。

 シーズン前から口にしていたように、「自分がシニアと戦っていくなかで一番足りないものは、ジャンプ以外の表現とかスケーティングだと思っています。そういう練習もジュニアの頃はオフシーズンに少しやるだけでしたけど、今は時間をとってしっかりやるようにしている」と、シニアデビューのシーズンを見据えて準備を続けている。

 宇野のグランプリシリーズへの本格的なシニア参戦はデニス・テン(カザフスタン)や無良崇人らと戦う10月23日からのスケートアメリカになる。

 それまでにやっておかなければいけないのは、ソルトレークシティでミスを重ねたSPを仕上げることだろう。「『こういう曲も出来るようにしよう』ということで選んだ曲で、本当に難しいんです」と本人が言うように、このプログラムは宇野にとって演技の幅を広げるための挑戦でもある。

 ジャンプの完成度を上げるのはもちろん、これまでとは違う世界を切り開きながらスケーティングを磨いていく。宇野昌磨は大きな意欲を持って、シニアシーズン1年目に臨もうとしている。

折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi