3日、ラグビーワールドカップ1次リーグ第3戦でサモアに26対5で快勝、通算成績を2勝1敗とした日本代表。

勝利のウラには、2012年からチームを率いる名将エディー・ジョーンズが課してきた“世界一厳しい練習”があった。選手が「理不尽とも思える仕打ちを受ける」とコボすほど過酷な、その強化法とは?(参考記事⇒「ラグビー日本代表を改革した世界一苛酷な長期合宿とは」)

■どんなに苦しくても選手も納得の成果

日本のトップ選手でさえ恐れをなす猛練習で体力ベースをつくり上げると、次に指揮官はこれまた従来の常識を覆し、弱点とされていたスクラムを重点的に強化し始めた。体格の問題もあり、強豪国に押し込まれるのが前提だったスクラムを武器に変え、攻撃の幅を広げようとしたのだ。

その目標を達成するため、スクラムに定評のあるフランスから専門コーチとしてマルク・ダルマゾを招いたのだが、彼の練習がまた猛烈だった。チーム最年長の37歳、LO(ロック)の大野均(ひとし)は昨年、週プレの取材にこう答えた。

「みんなヘトヘトの夕方6時からスクラムを組まされるのも当たり前。本来スクラムでは絶対にあり得ない、理不尽な状況で押せと言われたことも。昔はスクラムの上にダルマゾが乗っかってきたりしました(笑)。

ヒザを完全に折り曲げた力の出ない体勢で組まされ、『押せ』と言われた時はさすがに選手の間で『無理だろ』って雰囲気が流れたんですが、『やれ。8人全員が一体になれば絶対できるから』と。でもやってみたら、意外と押せたりするんですよ」

しかもダルマゾは「スクラムは戦争だ。ここで負けたら試合も負ける」と精神論を説く一方、FW陣の足の運び方からジャージをつかむ際のピンポイントな位置まで、細かいノウハウも持っていた。

「そんな彼の言うことを信じてついていったら、FWの強いイタリア相手のテストマッチでも、以前ならやられっぱなしのスクラムで押し込むことができたんです。我ながら感動しました」(大野)

過酷なトレーニングの対価として目に見える、そしてこれまでになかった成果が上がる。となれば、苦しくても選手たちは納得してトレーニングに食らいついていく。

だから短い間隔で組まれた複数のテストマッチや親善試合の直前直後でもジョーンズHCが練習強度をまったく落とさず、疲労困憊(こんぱい)の体でスタジアムのピッチに立つことになっても選手は誰ひとりとして不満を漏らさなかった。W杯のタイトな日程でもベストパフォーマンスを発揮するため不可欠なシミュレーションだからだ。

W杯本番での日本は南ア、スコットランドという難敵が続く初戦と第2戦が中3日という過密スケジュール。悔いのない試合をしたければ、前もって本番以上の悪条件を乗り越えておかねばならないのである。

チームを絶えず肉体的、精神的に極限まで追い込む作業はW杯直前まで続いた。その総仕上げを終え、ついに臨戦モードに入ると、ジョーンズHCはようやく手綱を緩める。一転してコンディション調整に注力し、就任以来初めて、選手を心身ともフレッシュな状態にリセットしたのだ。

その結果が選手に何をもたらしたのかは、南ア戦後のスクラムSHハーフ日和佐篤(ひわさ・あつし)の言葉が如実に表している。

「疲れている中でも、(日本は)よく動けていた。まるでみんな、酸素ボンベを積んでいるみたいだった」

練習は決して裏切らない。

エディー・ジャパンは使い古された言い回しの本当の意味を、あらためて日本中に問いかけたのだ。それは南ア戦だけでなく、押しに押したサモア戦でのスクラムにも如実に勝利に結実した。