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小惑星探査機「はやぶさ2」が目指す小惑星の名前が「Ryugu(リュウグウ)」に決定した。「リュウグウ」はこれまで、「1999 JU3」という仮符号で暫定的に呼ばれていた。

「リュウグウ」は1995年5月10に米LINEARチームが発見。大きさはおよそ900mで、地球と火星に挟まれるかたちで太陽の周りを公転している。

通常、小惑星の名称は発見者が国際天文学連合(IAU)に提案し、その後IAUでの審査を経て、IAUの下部組織である小惑星センターが発行する科学誌「マイナープラネットサーキュラー」に名称が掲載されることで正式な発表となる。今回はの場合はJAXAがLINEARチームに「はやぶさ2」プロジェクトから提案させて欲しいと申し入れ、了承された。

○商標権トラブルなども考慮した選出

「リュウグウ」という名称を選んだ理由について、名称案選考委員会の委員長を務めた多摩六都科学館の高柳雄一 館長は「(『リュウグウといえば』)日本では世代を超えて『浦島太郎』の物語が思い出される。浦島太郎は竜宮城から玉手箱を持ち帰ったが『はやぶさ2』もサンプルをカプセルに入れて持ち帰る。」と語るなど、サンプルリターンを目標としている「はやぶさ2」の姿が昔話の主人公と通じることを挙げた。また、「リュウグウ」が水を含むと考えられていることや、既存の小惑星と類似しておらず商標権のトラブルなどの心配がないこともポイントだったという。

また、「リュウグウ」は地球接近小惑星(NEO)に分類されることから、神話から名前をとることが慣例となっており、今回もそれに従っている。この点について「はやぶさ2」プロジェクトチームの吉川真 ミッションマネージャーは「(『はやぶさ』の目的地だった)「イトカワ」のときは伝説的な人物だったが、今回は神話じゃなければ通らないのではという心配があった。一般名詞だと厳しいと思っていたので本当に良かった」とコメントした。(注:「イトカワ」は日本のロケットの生みの親である糸川英夫 博士にちなむ)

○異例のスピード決定

さらに、JAXAからLINEARチームに名称案を送ったのは9月中旬だったとのことで、通常3カ月以上かかるとされる審査をわずか数週間で終えたことは極めて異例だ。吉川ミッションマネージャーは「正確な理由はわからないが、通常は名前が適当かどうかという議論で決定が延びる。今回はそれがなかったのではないか。また、『はやぶさ2』のミッションターゲットのことは(IAU側の)審査委員も知っているので、早めに考えてくれたのだと思う。」と語り、「リュウグウ」という名前が適切であったことと、12月3日に地球スイングバイというイベントを控えている「はやぶさ2」のミッションスケジュールを考慮してのスピード決着だったのではと推測した。なお、何らかの理由で「マイナープラネットサーキュラー」が本来のタイミングで発行されていないため、正式な名称決定日は確定していないものの、IAUの他のwebサイトで「1999 JU3」が「リュウグウ」であるということは明記されており、名称決定は間違いないという。

「浦島太郎」の物語といえば、玉手箱を開けた主人公が中から出てきた煙を浴びて老人になってしまうという決してハッピーエンドとは言えない結末を迎える。一方、「はやぶさ2」ではカプセル内のサンプルから出たガスを蓋を開ける前に採取し、分析にかけることになる。「はやぶさ2」プロジェクトの津田雄一 プロジェクトマネージャーは「『浦島太郎』にはさまざまな解釈があると思う。『はやぶさ2』の場合はサンプルを開けることで惑星科学、生命の歴史を紐解くという意味で、その時計を前にすすめることになる」と「はやぶさ2」がもたらすであろう科学的成果に期待を寄せた。

ちなみに、「リュウグウ」のほかには「アマテラス」「ヤマト」などの名前が人気だったとのことで、前者はすでに天体の名前として使用されていること、後者は戦時中の戦艦を想起させることから選出が見送られた。

(神山翔)