身近な“健康づくりのプロ”指導者の価値とは? wavebreakmedia/PIXTA(ピクスタ)

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 さまざまな指導者や団体が提唱している「ファンクショナルトレーニング」。文字通り"機能性(ファンクショナル)を高める"のが目的だ。

 小柄ながらも、屈強な外国人相手にも当たり負けしないサッカーの長友佑都選手や、いまや"生ける伝説"となったイチロー選手も、実践しているという。

 フィットネスジムの宣伝文句や、雑誌の見出しにも登場する人気のファンクショナルトレーニングとは、そもそもは何なのか。

 その定義は、「機能解剖学やトレーニング科学の原理、原則に基づき、身体の機能を高めることを目的としたトレーニング」「トレーニングの原理・原則に基づく、動きをベースとしたトレーニング」「人間本来の正しい動きを求めながら行うトレーニング」などといわれている。そして、それには「5つの原則」がある。

ファンクショナルトレーニングの5原則

―杜呂陵用
 日常生活やスポーツ動作の基本は立位だ。立つから歩く、走る、ジャンプへと発展する。そして、常に重力という外力を受け、それに抵抗しながら自己調整する。そのため、重力を考慮、利用した運動やトレーニングを行う必要がある。

∧離と協同
 多くの関節を可動域内で上手に使えば、最大限に関節機能を発揮できる。人体には大きな動きに適した関節、適していない関節がある。だから、その役割を分離する必要があり、関節がしっかり固定されることで隣の関節が力を発揮(協同)する。分離と協同は機能的な動き作りに重要だ。パフォーマンス向上につながる。一方で、パフォーマンス低下はケガを招く。

1親囲∈拭Εネティックチェーン
 キネティックチェーンとは運動連鎖のことだ。人の動作は、多くの筋肉や関節が連動する。これらのスムーズな連動が効率のよい動きを生む。

3面運動
 動作は基本的に3面(矢状面、前額面、水平面)で成立している。その機能を改善するためにも、3面を意識したトレーニングが有効だ。

ノ呂竜杣と力の発揮
 ある動作の前に、無意識にその反対の動作を先に行うことはないだろうか。たとえば、ジャンプの際にしゃがみこむ。これは力を発揮する前に力の吸収を行っている。より大きな力を発揮するには "力の吸収"に着目しなければならない。

説明不足による誤解された"知識の伝達"に陥っていないか

 とても理にかなった、しかもわかりやすい原則だ。先人たちが培ってきたトレーニングの原理、原則に基づいており、私も一指導者として大いに共感できる。

 だが、現在の「ファンクショナル」ブームは、その言葉に躍らされていないだろうか。前述した定義、雑誌やネットの情報だけで理解したつもりになっていないだろうか。

 「ファンクショナル=機能的な身体=余計な筋肉をつけない動きやすい身体」という、いささか方向性が違う説明になっているものも散見する。

 元来、筋肉は簡単に"つく"ものではない。何の目的や行動に対して機能的なのか。そんな根本的な部分でさえ、議論されていない気がする。動きだけを見よう見まねした、ただのモノマネになってしまう。

フィットネス情報のリテラシーをもつように

 つまり、ファンクショナルトレーニング限らず、「○○トレーニング」がうたう効果も、情報を提供する際の説明不足によって、誤解された"知識の伝達"に陥ってしまっているケースは少なくない。

 流行り廃りに左右され、基本(トレーニングの原理原則)をおろそかにした情報をうのみにせず、フィットネス情報のリテラシーをもつように心掛けてもらいたい。

 健康やフィットネスにかかわるさまざまな情報があふれる現代だからこそ、健康づくりのプロフェッショナル、身近な指導者の存在価値がある。


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村上勇(むらかみ・いさむ)
フィットネスアドバイザー。JT東京男子バレーボール選手を引退後、現・スポーツクラブ「ルネサンス」に勤務。2007年から「メディカルフィットネス+スパ ラ・ヴィータ」のゼネラルマネージャーとして施設運営に携わる一方、トレーナーとして主婦や高齢者、アスリート(サッカーチーム・モンテディオ山形、加藤条冶:スピードスケート、黒田吉隆:レーシングドライバー)、著名人(指揮者・飯森範親など)を幅広く指導。現在は株式会社ドリームゲート代表として、スポーツチーム・アスリート・企業などを指導、運営協力に携わる。