9月24日、東証は5年ぶりに株式売買システム「アローヘッド」を刷新し、注文処理のスピードを約2倍に上げた。注文を受けてから応答にかかる時間は500マイクロ秒(1マイクロ秒=100万分の1秒)未満になるという。
 
「システムを新しくした背景には、『超高速株取引』の増加があります。コンピューターによる自動発注で、大量の売買を超高頻度で行なう業者が増えているのです」(東証関係者)
 
 そうした取引による注文件数は東証全体の取引の6割以上を占めるといわれる。決められたプログラムをもとに1000分の1秒単位で注文を繰り出し、人間のトレーダーが太刀打ちできないケースもあるという。カブ知恵代表・藤井英敏氏が説明する。
 
「人間の目が追いつかない速さで売買して、それぞれの利幅は小さくても確実に儲かるやり方があるといわれています。
 
 株の売買では、『この値段で買いたい』という買い注文と『この値段で売りたい』という売り注文が合致すると取引が成立(約定)します。買いたい人が多ければ、値段(株価)が上がっていくわけです。超高速株取引が使われていると考えられるケースではまずコンピューター側が、すでに保有している銘柄に大量の買い注文を出します。そうすると他の投資家が『買い注文が多い=株価が上がりそう』と判断して、追いかけて買いに走ります。
 
 コンピューターはそうやって株価を少し上げておいてから持っている銘柄を売り、出していた買い注文を瞬時にキャンセルする。他の投資家からみると買った瞬間に株価が少しだけ下がるという現象が起きているのです。こうした取引ではコンピューター側が儲かる。1回当たり0.5〜1円程度の非常に小さな額ですが、膨大な回数を積み重ねることで大きな利益につなげていくのです」
 
 買うつもりのない注文を出して株価を上げる手法は、人間がやると「見せ玉」と呼ばれる違法行為(金融商品取引法違反)になるが、コンピューターの場合、「複雑なシグナル解析の結果であり、現状では違法性を問われないことがほとんど」(藤井氏)という。取引所としては、注文数が増えて売買が活発化されるメリットもあるので、今回のようなシステム刷新の対応となったとされている。

※週刊ポスト2015年10月9日号