『ネット風俗嬢』(中山美里/泰文堂)

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「おっぱい見せて」「おしり見せて」、あっという間に集まってきた何百人の男性のリクエストに応じて、ランジェリー姿の女性はなまめかしく身体を動かしはじめる。過激なポーズ目当てにますます集まってくる過熱した男性たちを前に、やがて、全裸になった女性はパフォーマンスのクライマックスとなる、オナニーをはじめる。透明で男性器の形をしたアダルトグッズ(ディルド)を女性器に差し込み、カメラのレンズを当てると、透明のアクリル越しに膣内が丸見えに。モニターには放射状に粘膜の映像が広がる──。
 
 これは現在、ユーザーを増やしている「アダルトチャット」の世界の一場面だ。その多くはFC2やDMMライブチャットといった大手のライブチャット上で、配信者の女性(ネット風俗嬢)がメイド、女子高生、人妻などの設定で、チャットをしながらセクシーな動画を配信する。ネット風俗嬢が一人でストリップやオナニーなどを複数のユーザーに見せるのが一般的なパフォーマンスだが、なかには、動画に男性も登場し本番セックスまで行うものもあるという。場合によってはほんの2時間で20万円を稼ぐことができ、週に2〜3回で月収100万円にもなることがあるらしい。

 配信者側(ネット風俗嬢もしくは所属する風俗店)が価格帯を設定するが、チャットなしで動画を見るだけであれば無料のケースもある。チャットがくわわれば、1時間あたり6000〜9000円がかかり、風俗産業でいえばピンサロや格安ヘルス、平均的なキャバクラと同価格帯になる。しかし、男性ユーザーにしてみれば、家にいながらにして風俗体験ができるという自由度がウケているようだ。

 ネット風俗嬢側も、最初はただチャットするだけ、という気軽な気持ちでネット風俗に飛び込むことがあるらしい。『ネット風俗嬢』(中山美里/泰文堂)では、そんなネット風俗嬢のリアルな声が紹介されている。

 東京都下に在住の19歳の女性は、「東京に出るには少々時間のかかる場所の上、実家住まいのため夜遅くなりすぎることもできない。しかし、バレてしまう可能性のある地元の風俗で働くこともできない」と常設式のチャットルームで働き始めた。

「大学を中退してしまったのですが、やっぱり入り直したいと思い、お金を貯めたくてこの世界に入りました。今、だいたい日給が1万5000円〜2万円くらいで、時給が3000円ちょっとくらいですかね。地元のキャバクラだと、正直こんなに稼げないですね」(19歳の女性)

 彼女は男性経験は一人ながらも、ネット風俗をそつなくこなしているという。

 また、ある処女の子が、家賃や水道光熱費を数カ月滞納してしまい、高収入求人サイトを見て、応募してきたケースもある。さすがに男性経験がまったくない女性に大胆なオナニーを求めるのは無理があるが、チャットルーム運営者は「他の女の子と差別化を図るためにアニコスをさせることにしました。その女の子には某アニメのキャラクターの格好をしてもらい、女性用に作られた男性の外見をしたラブドールを購入してきてそれに学ランを着せたんです。それで擬似セックスをしたら、バカ受けしてドーンと人気が出ましたね」と言う。

 また、現役風俗嬢も副業的に参戦している。

 風俗店に勤務するある女性は、週1、2回、夕方から深夜の1時過ぎまで都内繁華街のルームに通いネット風俗嬢としても働いている。だいたい6〜7時間働いて、1日の間に2〜3回のチャット放送を行う。オナニー1回、セックスを1、2回して日給2万円。時給3000円の計算だ。決して楽な仕事とは思えないが、運営者に言わせると、「世の中、顔出しできないけど、アソコは見せてくれる子多いんですよ。顔を出したらバレるけど、アソコは見せてもほぼバレないですからね」ということらしい。

 とくに、マスクとものまねメイクで話題のタレントのざわちんが登場してから、このマスクをするネット風俗嬢がFC2を中心に多くなっているのだという。

 顔バレしなくて済むし、手軽に儲かる──そうした認識が広がるが、何より注意しなくてはいけないのは、女性が強要されてネット風俗の世界に引きずりこまれるという事件が起こっている点だ。2013年には家出中の未成年女性が男にライブチャットを強要され、ユーザーに助けを求める事件が発生。このように女性にわいせつ行為を強いることで男が荒稼ぎするという事例は頻発しており、事件の温床になっているのは紛れもない事実だ。

 さらに、ふとしたやりとりから個人情報が割り出され、ネット風俗嬢がストーカー被害に遭ったという話も多い。一方、ユーザーの過激さも増している。しかも性器を露出させれば逮捕されることもある。敷居が低いと感じてはじめる女性も多いだろうが、危険と隣り合わせの仕事でもあるのだ。

 今後は過激さだけでなく、価格競争が活発化すると見られているネット風俗界。気楽、気軽、儲かるという甘い誘い文句には裏があることを覚えておきたい。
(時田章広)