エレクトロラックスの赤松氏(左)と芦田氏

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 日本の家電メーカーが揃って苦境にあえぐなか、右肩上がりに存在感を増しているのが、スウェーデンに本社があるエレクトロラックスのスティック型コードレス掃除機「エルゴラピード」だ。日本市場での販売数が100万台を突破し、世界では累計1000万台を販売したエルゴラピードは、どこがすごいのか? 作家の山下柚実氏がエレクトロラックス社を訪ねた。

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 エルゴラピードが日本の家電量販店で販売され始めたのは、実は4年ほど前の2011年から。家電量販店舗は全国で約2300ほどあり、今やそのほぼ100%に陳列されているという。短期間で一気に日本の売り場に浸透したことになる。いったいその推進力とは何だったのか? エレクトロラックス・ジャパン・スモールアプライアンス事業部の芦田倫子さんはこう語る。

「10年程前、日本へ参入した当初はテレビ通販やインテリアショップで販売を始め、色や曲線のデザインが注目されて次第に『オシャレ家電』と呼ばれるようになりました」

 オシャレ度が高ければインテリアのように部屋に置いたままでいい。すぐ掃除にとりかかることができる。

「当時、日本にはデザイン性の高い白物家電がほとんど存在していなかったこともあり評判が評判を呼び、問い合わせが増えていきました」

 たしかにエルゴラピードのボディカラーは独特だ。ローズゴールドやタングステンと、掃除機では見たこともない斬新な色彩。形もユニーク。手元は細く、吸い込み口付近はふっくらと膨らんだ美しい流線型。取り外すとハンディタイプに変身する2in1構造だ。

 つまり、人気に火が点いたのは、掃除機として高い「機能性」はもちろんのこと、「デザイン」においても「類似製品がなかった」からだった。市場の関心が十分に高まった状態の中、一気に全国の量販店へと展開した。それが、短期間で浸透した理由だったのだ。

「スウェーデンと日本の生活文化には共通する部分があるんです」と芦田さんは興味深いポイントを指摘した。

「欧州では珍しく、スウェーデンは靴を脱いで家に上がるので、室内を清潔に保ちたいというニーズがあります。また日照時間が短く晴天が少ないため、家の中を明るく快適にしたいという欲求が強い。カラフルなデザインが生まれる背景ではないでしょうか」

 北欧独特の風土が生んだ斬新な掃除機に日本の消費者が刺激された。が、それだけには留まらなかった。

「日本のユーザーから実に多くのことを学んでいます。寄せられた声は、新たな機能へ反映させています。例えばヘッドのローラーに髪の毛が巻き付いて困るという課題。黒く長い髪の女性が多い国ならではのお悩みに対して、巻き込んだ毛を短くカットし吸い込むという新機能を開発しました。特許出願中です」

 世界で「最もきれい好き」な日本ユーザーから多くのヒントを得ているという。「家電はもっと使う人にとって心地よくできる」。それがエレクトロラックスの根底に流れる問題意識だ。

 デジタル家電などの新領域へ次々に事業拡大していく前に、家電メーカーが取り組むべきこと。それは、腰を据えて「白物家電」に向き合うことではないだろうか。掃除機という「古典」的製品の中にもイノベーションの種は見つかるのだから。

 プリンシプル原理原則から決してはずれることのないエレクトロラックスの頑固な姿勢。日本の家電メーカーはヒット商品作りの可能性をそこから学ぶ必要があるだろう。

※SAPIO2015年11月号