ハリルホジッチがやってきたのは、アギーレ就任の8か月後、2015年3月だ。例のシンガポール戦は3か月後に迫っていた。ハリルホジッチがアギーレと似たような症状に襲われるのは、ある意味で当然だった。

 ハリルホジッチが、2014年W杯後から監督の座に就いていたとしても、メンバーはいまとは全然違ったモノになっていたはずだ。

 この「67mの遅れ」を招いた原因は、アギーレへの八百長疑惑になるが、アギーレ時代の収穫を、ハリルジャパンに反映できていない協会技術委員会の力不足も大きく災いしている。

 アギーレ、ハリルホジッチがガチガチになり、目先の勝利に走り、その結果、先を見越した選手起用ができないのは、取り巻きの日本人スタッフが、彼らをリラックスさせることができていないからだ。アジアにおける日本の立ち位置等々、彼らが知り得ない情報を、技術委員会が的確に伝えているようには見えないのだ。

 一言でいえば、任せっきり。彼らは五里霧中の状態で戦っている代表監督をサポートできていない。シンガポールに引き分けてしまった理由もそこにあると思う。監督が絶対負けられない戦いの呪縛にはまり、必要以上にナーバスになった結果だと思う。

 コミュニケーションに難があることは明白。若手は毎回、最低でも何人メンバーに入れろとか、何分は出場させろとか。その結果には、協会が責任を持つから、心配するなとか。技術委員会と代表監督は、対等な関係を築くべきだと思う。そうでなければ、技術委員会の仕事って、そもそも何だという話になる。

 ハリルホジッチは最長でも2018年7月には日本からいなくなる。だが、日本代表の次の4年は、その瞬間から始まる。それを永遠に繰り返すのが代表チームだ。技術委員会の役割は、4年後を考えながらも、8年後、12年後も同時に見据え、選手を循環させることにある。

 若手の登用を、時の代表監督に、積極的に促すのは当然の役目。新たなメンバーが南野1人という現実は、その力不足の証しと言っていい。技術委員会の役割がこのまま変わらなければ、新チームはまたゼロベースで活動を始めることになる。次の代表はいまよりもっと危ない。僕はそう思うのだ。