ちょっと変わり者の印象を抱いてはいたけれど、やっぱり変わり者だった木下ほうか。趣味で、映画のキャスティングをやり、とことん自分のこだわりを突き詰めているという。映画『木屋町DARUMA』も木下のこだわりが生きた作品で、『ハイキック・ガール!』『進撃の巨人』などで活躍する武田梨奈を、借金の肩に風俗に身を落とす汚れ役にキャスティングしたのも木下の仕事。前編では、キャスティングの話を主に伺ったが、後編ではいよいよ俳優・木下ほうかについて聞く!


とくに狡くて悪い感じを目指しました


──『木屋町DARUMA』の金内という人物は、遠藤憲一さん演じる取り立て屋と関わりのあるヤクザの幹部。この役を演じるに当たって大事にしたことを教えてください。
木下 いや別に大した役じゃないし、ふだんよくやっているちょっといやな役をやっただけです(笑)。
──ピンクのシャツとか、ちょっと衣裳がオシャレでしたけど、あれはどういうふうに選んだんですか。
木下 ちょっと羽振りがいいひとのイメージです。男性誌の『LEON』とかを読んで、イタリアンファッションをしているという(笑)。
──着こなしが巧いですよね。今日の私服もオシャレですし、オシャレな方なんですね。
木下 『LEON』読んではいます。立ち読みですけど(笑)。
──金内は一見おしゃれで紳士的に見えてーー。
木下 悪い人がたくさん出てくるなかで、とくに狡くて悪い感じを目指しました。ほかの登場人物は悪とはいえ、かっこいい極道だったり、正義感があったりするんですが、唯一そうではないのが、ぼくの役です。
──そういうときでも、どこか、いい人そうなところを出したいと思うことありませんか。
木下 いやな役だけどどこか、かわいくやろうとすることはありますよ。でも今回、それは要らないと思いました。
──そこはやっぱり空気を読む。
木下 はい。


──金内って京都のひとの設定ですか?
木下 そこは書かれてないんですが、ちょっと京都寄りの言葉遣いは意識しました。
──木下さんは大阪出身ですが、京都のひとぽいニュアンスを役になんとなく感じました。
木下 うちの両親は京都ですし、京都に親戚が多いんですよ。
──じゃあ、木下さんも京都のひとなんですね。
木下 いやあ、生まれ育ったのは大阪ですよ。まあ、なんとなく京都のニュアンスもわかります。形容詞を2度続けると、京都の女性らしくなるんですよ。「かわいい、かわいいわぁ」とか。武田梨奈さんには方言指導はたくさんしました。
──キャスティングの仕事は、漢字の鳳華さんですが、「ほうか」って本名ですか?
木下 はい。
──運が強そうなお名前ですね。
木下 祖父がつけた名前らしいですが、ちゃんとした理由は知らないんです。
──漢字だと女性なのかなって思いますね。
木下 ひらがなでも女性と間違われます。「ほのか」と間違われることも多くて、郵便物がほのかって書かれてきます。
──平仮名と漢字で分けているのは。
木下 照れです。キャスティングの仕事まで俳優名にするのはなんかちょっと・・・。

一緒に演劇やっていました


──大阪芸大、舞台芸術学科出身だそうですが、64年生まれということは、劇団☆新感線の旗揚げメンバーの人たちと同期くらいですか?
木下 新感線はぼくが芸大に入学した年にできたんですよ。四回生の先輩が立ち上げて。新感線に限らず、小劇団が活躍していく時代をぼくもともに過ごしました。ぼく自身も、同級生と一緒に劇団を旗揚げしたことがあります。そしてお互い出演しあったりね。渡辺いっけい、筧利夫はひとつ先輩で、古田新太、橋本じゅんなんかはひとつ後輩ですが、一緒に演劇やっていましたよ。
──授業をいっしょに受けて?
木下 受けていました。
──当時の大阪芸大、才能の宝庫だったんですね。
木下 宝庫でしたねえ。
──木下さんは舞台よりも映画をやりたかった?
木下 『ガキ帝国』(80年)に出たのがきっかけで映画俳優になりたくて、ほんとは日大芸術学部にいきたかったんです。日芸には映画学科があったから。ところが、当時、競争率が34倍だったんです。で、大阪芸大は3.4倍だったんです。
──ひと桁違った。
木下 舞台をやりたかったわけじゃ全くなかったけれど、俳優の仕事を学ぶ点では同じだと思って受けたんです。
──映画がやりたかった。
木下 もちろん。吉本興業に入ったのも、たまたま卒業の年にオーディションがあったから受けてみただけで、芸人になれるとかなりたいという気持ちはなかったんです。
──目指すものはーー。
木下 映画でしたね。

やっと世間がついてきてくれたかと


──もともと映画が好きだったんですか。
木下 子供のとき、父親の影響で、洋画をよく見ていました『スパルタカス』とか『ベン・ハー』とか。自主的に好きになったのはブルース・リー。日本映画では、田宮二郎と勝新太郎の『悪名』シリーズが好きでしたねえ。
──お仕事が続いて、いま脚光を浴びたのは、積み重ねだと思いますか?
木下 やっと世間がついてきてくれたかと(笑)。いや、以前からぼくの存在に気づいてくれていたひとも少数はいたので。
──邦画ファンには木下ほうかさんは前から気になる俳優でしたよ。
木下 ぼくは、今まで出演した脚本は、ひとつも捨てずにとってあるんです。学生の卒制の台本まで。それを数えると、今まで100本以上映画に出ていることがわかる。そうやって26年間俳優をやってきたにもかかわらず、世間はぼくのことを知らなかった。ところが、たった1年やそこら、たまたま連続ドラマやバラエティーの再現ドラマに出ただけで、あっという間に、世間でぼくの顔と名前が一致していく。まるで今までがなかったことのように。それで思ったのは、ああ、よっぽど前に出ない限り、この仕事ってなかなか認められないんだなあということです。いや別に、有名でなくても成立するけれど、なかなか認められないものだなっていうことを痛感しました。
──こうして多くのひとに存在知らしめたことで、木下さんの作品を見に来るお客さんが増えますよね。
木下 そういうこともあるでしょうけれど、10年前とやっていることはそれほど変わらないし、むしろ、今のほうが意識してくさい芝居しているところもあるかも。この間、ちょっとVシネマの『実録梁山泊パチプロ列伝』(00年)をGYAO!かなにかで見ていたら、その頃のほうが自然で巧いなって思ったんですよ。
──自分が嘘くさい芝居をするようになってしまった?
木下 年を経て、逆に退化していることもあるわけです。ということは、積み重なってないってことですよ(笑)


──今後の木下さんが気になります。
木下 よく聞かれるんですが、ぼく、そんなに野心がないんです。これ以上何かを目指す年齢でもなく、もう死んでいく年齢ですから。
──いやいや、織田信長の時代じゃないんですから。
木下 でもね、そうはおっしゃいますけど、結構なひとが若くして病気とかで亡くなりますでしょう。ぼくなんか独身だから、今、野心云々よりも孤独死が心配です(笑)。……こんな話になって、どうやってまとめるんですか(笑)。
──ハハハ・・・。では、最後に『木屋町DARUMA』について、推薦のメッセージをお願いします。
木下 ぜひ見てほしいですね。タブーに挑んだエグい作品という触れ込みですが、意外とそんな映画じゃないんですよ。誤解しないで、家族で見てください。
──家族で!? 父親の借金の肩に娘が風俗に身を落とす家族の出てくる映画で、それはなかなか挑発的な気もしますが・・・。
木下 ぼくは、主題歌『空が泣いている』がとっても気に入っているんです。監督の奥さん・榊いずみ(元橘いずみ)さんがつくった楽曲を、京都のmasamiさんという方が歌っていて、その歌声がとってもいい。映画ととても合っていますから、ぜひ、それを聴きに来てください。
(木俣冬)


[プロフィール]
きのした・ほうか
1964年1月24日大阪府生まれ。1980年、井筒和幸監督『ガキ帝国』のオーディションに合格し、映画に参加。俳優を目指して大阪芸大に入学、卒業後、吉本興業に入る。吉本新喜劇退団後、上京、映画やテレビドラマで活躍する。2014年『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』(CX)で、不倫する妻とその相手に意地悪をする夫役で注目される。その後、『痛快TVスカッとジャパン』(CX)のイヤミ課長が当たり役となり人気者に。近作に、映画『ソロモンの偽証』『家族ごっこ』『野良犬はダンスを踊る』など、ドラマ『下町ロケット』が10月18日から放送開始。映画『グレイトフルデッド』ではプロデューサーもつとめた。

[映画情報]
映画 木屋町DARUMA
原作、脚本 丸野裕行

監督 榊英雄

出演 遠藤憲一 三浦誠己 武田梨奈 木下ほうか 寺島進 木村祐一 ほか

京都木屋町を舞台に、ある事件から四肢を失った男が闇金融の取り立て屋として生き抜く姿を描く。監督『捨てがたき人々』などの榊英雄。
10月3日(土)渋谷シネパレスほか全国順次ロードショー

大阪・第七藝術劇場 京都みなみ会館 兵庫・元町映画館

公式サイト
(C)2014「木屋町DARUMA」製作委員会