学生の窓口編集部

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日本の国民的RPG『ドラゴンクエスト』シリーズは、英語版がリリースされています。英語版では『Dragon Warrior(ドラゴン・ウオリアー)』というタイトルです。今回は、ドラクエがどのように英訳されているか、をご紹介します。

アメリカではすでに『DragonQuest』が使われていた!

英語版のタイトルが日本語版の『ドラゴンクエスト』でないのは、先行するテーブルトークRPGがあったためだといわれています。日本で『ドラゴンクエスト』の第1作がリリースされたのは1986年。調べてみますと、『DragonQuest』というテーブルトークRPGがリリースされたのは1980年のことです。コンピューターゲームとテーブルトークゲームの違いはありますが、両タイトルともファンタジー世界を舞台としたRPGですので、権利関係が問題になったのでしょうね。

■英語版では「イトスギのぼう」です!

例えば『ドラゴンクエストIII』の英語版『Dragon Warrior III』の「ALIAHAN」(アリアハン)の「WEAPON SHOP」(武器屋)で販売されているものは、このようになっています。

・CYPRESS STICK(サイプレス・スティック):5G
・CLUB(クラブ):30G
・COPPER SWORD(コッパー・ソード):100G
・CLOTHES(クローズ):10G
・WAYFARER'S CLOTHES(ウェイフェアズ・クローズ):70G
・LEATHER ARMOR(レザー・アーマー):150G
・LEATHER SHIELD(レザー・シ-ルド):90G

日本語版では、

・ひのきのぼう:5G
・こんぼう:30G
・どうのつるぎ:100G
・ぬののふく:10G
・たびびとのふく:70G
・かわのよろい:150G
・かわのたて:90G

ですから、アイテムの内容、お値段とも合致しています。ただし、「CYPRESS STICK」の「CYPRESS」は「イトスギ」という意味です。ですので、英語版では「ひのきのぼう」ではなく「イトスギのぼう」なのです。

実は「ひのき」は日本と台湾にしか分布していません。アメリカのプレーヤーにも分かりやすいようにこのように変更されたのでしょう。「WAYFARER'S CLOTHES」の「WAYFARER」は「(徒歩の)旅行者」のことですから、元の「たびびとのふく」に忠実に訳されていますね。

■あの有名なメッセージはどう英訳されている!?

ドラゴンクエスト』シリーズは、ダイアログボックスに表示されるメッセージが面白いことでも有名ですが、これらはどのように英訳されているでしょうか?

モンスターが出現したときのメッセージ表示は、日本語では、

●スライムがあらわれた!

ですが、英語版では、

●A Slime draws near!

と表現されています。「draw near」は「だんだん近寄ってくる」という意味です。モンスターによっては、

●One Baramos Gonus appears!
⇒バラモスゾンビがあらわれた!

というふうに「appear」(現れる/出現する、という意味)が使われる場合があります。

ドラゴンクエスト』1作目で、ゲームに戻ってきた際に王様が言うせりふはこんなふうに訳されています。

●おお○○○! よくぞもどってきてくれた! わしは とても うれしいぞ。
⇒I am greatly pleased that thou hast returned, Hero.

「thou」「hast」は共に古語。「thou」は「you」で「そなた」または「汝(なんじ)」、「hast」は「have」で「thou」が主語のときに使われます。つまり、古語を用いることで時代感を出そうとしているわけです。

ドラゴンクエストIII』に登場するカンダタの有名なせりふはこんな訳です。

●たのむ! これっきり心をいれかえるから ゆるしてくれよ! な! な!
⇒Don't talk like that! Forgive me! I beg you! Please!

カンダタの憎めない感じがよく出ていますね。

ドラゴンクエストIII』には、アッサラームという、旅行者からカモろうという商人がいる油断できない町が登場します。ぼったくり商人の有名なせりふはこんな具合です。