もう絶対に負けられない。ラグビーのワールドカップ(W杯)イングランド大会で、南アフリカから歴史的な勝利を挙げた1次リーグB組の日本代表は、3日午後2時半(日本時間同日午後10時半)から、英国ミルトンキーンズでパワフルなサモアと第3戦を戦う。目標の決勝トーナメント進出(ベスト8)を果たすためには、勝利が至上命令となる。

 日本は目下、南アフリカに勝ちながらも1勝1敗の勝ち点4でサモアと並んでいる。同組1位が2勝のスコットランドで勝ち点10、2位は1勝1敗の南アで勝ち点7となっている。いずれもボーナスポイントを生かした結果で、日本が残り2戦を連勝しても、決勝トーナメントに進出する5チーム中上位2チームに入れない可能性もあるが、人気急上昇のフルバック(FB)五郎丸歩(ヤマハ発動機)は言う。

「我々はあくまでチャレンジャー。まだ(ボーナスポイントを)計算するレベルではないですね。他チームのことや、先のことを考えずに、勝つことが一番大事だし、チーム全員がそう思っています。(サモアに)勝たないことには何も始まらない」

 第2戦のスコットランド戦ではラスト20分、ディフェンスの連係、ブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)での精度が落ちて大敗した。だが、中9日で心身ともにリフレッシュはなされた。ディフェンスも、アタックも、個のサモアに対し、「全部組織で勝負ですね」と、五郎丸は強調した。

 サモアの選手個々の破壊力は凄まじく、身体能力も高い。巨漢の相手がスピードに乗ると手がつけられなくなる。日本が守勢に回ると、タックルを受けながらでもボールをつないでくる。まずはこの勢いを止める。南ア戦で見せたような相手の太ももに入る"チョップ・タックル"と前に早く出るラインディフェンスがカギを握る。

 サモアのキーマンは、トップリーグのサントリーでお馴染みのスタンドオフ(SO)トゥシ・ピシと、今季からリコーに入団するFBティム・ナナイ・ウィリアムズである。特に「アンストラクチャー(崩れた局面)」で自由にさせるとピンチが広がる。怖いのはキックからのカウンター、ターンオーバーからの逆襲......。「アンストラクチャーからのアタックは彼らの得意なところ。その辺は警戒すべきですね」と五郎丸。

 すなわち、蹴り出す時はきっちりタッチを割る。パントキックには複数で"網"となってチェイスし、フォローする。五郎丸らの戦略的なキックがより重要となるだろう。「相手の(ゴール前)5メートルまでいけば、(ラインアウトから)トライは獲れるので強気で攻めるしかない」と意気込む。

 チーム練習では、このサモアの2人のキーマンの名前を叫びながら、マークを意識した。ピシは精神的に脆いところがある。名前を呼ぶことは、相手へのプレッシャーになるし、日本チームの意思統一を促すことになる。

 月曜日(9月28日)の練習ではエディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)のカミナリが落ちたそうだ。「気持ちを切り替えろ」「サモア戦に集中しろ」と。理不尽な怒り方にカチンときたらしいが、これでスイッチが入ったと副将の五郎丸は説明する。

 スタメンでSO小野晃征(サントリー)、ウイング山田章仁(パナソニック)らがケガから復帰する。スコットランド戦で負傷退場したアマナキ・レレイ・マフィ(NTTコミュニケーションズ)もリザーブに入った。破壊力のあるナンバー8のホラニ龍コリニアシ(パナソニック)が今大会初出場。左プロップには大型の稲垣啓太(パナソニック)が先発し、まずはスクラムのヒット勝負からサモア撃破をもくろむ。

 日本の先発メンバーのキャップ数(国代表戦出場数)の合計は615とサモアの倍近くになる。ジョーンズHCは「相手の勢いを止め、マイボールを動かしまくる。賢くフィジカルなラグビーを80分間、継続させたい」と期待する。マイケル リーチ(東芝)主将は「ディシプリン(規律)」「ハードワーク(努力)」を練習から徹底してきた。「タックルとブレイクダウンが重要」という。タックルは起き上がりのスピード、ブレイクダウンでは2人目の速さがポイントとなる。

 さらにいえば、ブレイクダウンなどで相手反則を誘い、五郎丸が確実にペナルティーゴール(PG)を蹴り込んでいきたい。ただいま得点王争い(全チーム2試合終了時)では29点(6PG、3ゴール、1トライ)でトップに立っている。チームのグラウンド練習がなかった9月30日も1人、ゴールキックの練習に励んだ。W杯を楽しんでいると笑い、「感触としては(キックの調子は)非常にいいですね」と頼もしいセリフを口にした。

松瀬 学●文 text by Matsuse Manabu