外国出身の「桜の戦士」はどういう経緯でメンバー入りしたのか?(後編)

 ラグビー日本代表が南アフリカ代表相手に歴史的勝利を飾った翌日、その立役者となったFB(フルバック)五郎丸歩がツイッターでつぶやいた、日本代表のユニフォームを着て戦う外国人選手にもスポットを当ててほしいとの内容は、ワールドカップの報道のなかでも視点の違った関心事として注目を集めた。

 今大会の日本代表メンバー31人のうち、外国出身の選手は10人。そのうち日本国籍を取得している5名は、前回のコラム(【ラグビーW杯】日本代表を彩る「外国出身選手」の異色な経歴)で紹介したとおりだ。今回は、残る5人の外国籍の日本代表選手がどんな人物なのか、スポットを当ててみたい。

 まずは、日本代表のBK(バックス)陣を見てほしい。そのリストに控える外国籍選手の面々は、いずれも世界クラスの実力を誇るラガーメンばかりだ。

「ワールドカップ史上最大のアップセット(番狂わせ)」と評された南アフリカ代表戦――。終了寸前に決勝トライを決めたのが、宗像サニックスでプレーしているWTB(ウィング)カーン・ヘスケス(30歳)だ。

 ニュージーランド出身のヘスケスは、2010年に来日。日本での生活は6シーズン目を迎えている。妻のカーラ・ホヘパは2010年の女子ラグビーワールドカップにニュージーランド代表として出場し、トライ王を獲得。さらに年間最優秀女子選手にも輝くなど、夫婦そろってインターナショナルレベルで活躍するラグビー選手だ。

 現在7人制ラグビーで活躍する妻の「影響もあった」と語るヘスケスは、来日3年目ぐらいから日本代表を意識しはじめたという。そして、2014年に初キャップを獲得。日本食が大好きで、特にうどんなどの麺類が好物だと語るヘスケスは、日本の地にすっかり根付いたウィンガーである。

 日本代表のBKラインの要として欠かせない存在であるCTB(センター)マレ・サウ(27歳)は、U20ニュージーランド代表にも選ばれたことのある選手。2008年、19歳でヤマハ発動機に入団し、五郎丸とは同期にあたる。

 両親がサモア人であることから、当初はサモア代表入りが有力視され、代表候補にも選ばれていた。サモア代表、ニュージーランド代表、日本代表の3ヶ国で代表資格を持っていたが、2013年に日本を選択。不動のアウトサイドセンターとして、今大会でもBK陣を牽引している。ちなみに嫌いな食べ物は、納豆といくら、なんだとか。

 そのBK陣のなかで一番のベテランは、ラグビーリーグ(13人制)のスター選手としてオーストラリア代表「カンガルーズ」でもプレーした経験を持つCTBクレイグ・ウィング(35歳)だ。父がオーストラリア人、母がフィリピン人で、トップリーグではアジア枠で出場できることから、2010年にNTTコミュニケーションズに入団。2012年から神戸製鋼でプレーしている。

 強烈なタックルが魅力で、2013年、初めて日本代表に選出。同年6月のウェールズ戦では逆転トライを挙げ、13度目の対戦にして初の白星に貢献した。また、イケメン選手としても有名で、トップリーグの「ダンディー総選挙」で1位に輝いたことも。趣味はサーフィン。

 一方、FW(フォワード)陣にも日本代表を支える貴重な外国籍選手がいる。まずひとりは、リーチ マイケル主将とともにFLのポジションでチームに貢献しているマイケル・ブロードハースト(28歳)だ。2009年、ニュージーランド2部のチームからクボタに加入し、2010年にリコーへ移籍。2012年に日本代表メンバーに選ばれた。

 さまざまなポジションを務めることのできるユーティリティープレーヤーで、196センチの長身を生かしてラインアウト時のキャッチャーもできる。献身的な働きぶりで知られ、エディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)からの信頼も非常に厚い選手のひとりだ。弟のジェームス・ブロードハーストもニュージーランド代表だったが、今回のワールドカップメンバーには選出されなかった。「弟のためにも頑張る」と、今大会に闘志を燃やしている。

 そして最後、トンガ出身のNo.8(ナンバーエイト)アマナキ・レレィ・マフィ(25歳)は、ジョーンズHCが「ギフト」と大絶賛するほどの逸材。2010年、花園大学入学時に来日し、卒業後にNTTコミュニケーションズに入団した。爆発的な破壊力を擁しながら、高校2年までWTBだった走力も兼ね備えており、チームメイトから「フィジカルモンスター」と呼ばれている。

 U20トンガ代表歴があり、一時はトンガ代表からも声がかかっていた。しかし、「日本代表としてワールドカップに出たい。そしてジョーンズHCのもとでラグビーがしたい」と、桜のジャージを選んだ。マフィの家族は16人きょうだいで、自身は14番目。今年の春に日本人女性と結婚した。焼肉が大好きなマフィは、愛称「ナキ」の呼び名でラグビーファンから親しまれている。

 以上、さまざまな経緯を辿りながら、日本に来日した外国籍の「桜の戦士」たち――。異国の地でラグビーをしている彼らの背景を想像してほしい。家族と離れ、母国で代表になる権利を捨ててまで日本代表の一員になることを選び、試合前に君が代を大声で歌い、身体を張って戦っている。そうして今、彼らはワールドカップのフィールドに立っている。

 チームメイトの五郎丸はツイートをした理由を問われたとき、こう答えた。

「2019年に向けて、クリアしないといけない問題だと思います。勝った、負けただけでなく、2019年に向けて日本代表がどういう道を進まなければいけないか......と考えたとき、『なぜ外国人が入っているんだ』という見られ方をどうしてもされてしまう。

 メディアのみなさんが注目してくれることによって、『ラグビーというのは、こういうスポーツだ』という理解が広まるし、ラグビー人気を復活させるために僕ら日本代表は、『歴史を変えるんだ』という気持ちでやってきました。そういう思いを込めて、ツイートしました」

「彼らは母国の代表より日本を選び日本のために戦っている最高の仲間だ。国籍は違うが日本を背負っている。」(五郎丸のツイート原文ママ)

 外国籍の彼らはまぎれもなく、楕円球の祭典で「桜の誇り」を抱き、日本を代表して戦い続けるラガーメンである――。

斉藤健仁●取材・文 text by Saito Kenji