出版拒否されるほどのタブーが描かれた小説『木屋町DARUMA』が遠藤憲一主演で映画化された。映画の詳細はこちら。
この問題作に、『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』の寝取られ夫や、『痛快TVスカッとジャパン』のイヤミ課長で人気の木下ほうかが、期待を裏切らないイヤ〜な役で出演している。それだけでなく、木下鳳華名義でキャスティングプロデューサーもつとめているのだ。いったい、木下ほうかとは何者なのか。この際だから、いろいろ伺いました!


──今回はどういういきさつで、お仕事を?
木下 榊英雄監督の映画『GROWー愚郎ー』(07年)や『誘拐ラプソディー』(10年)などに出演していたご縁で、今回声がかかりました。確か、13年の2月、なんばグランド花月でやっていた『吉本百年物語』にぼくが出演しているところへ、榊監督が、原作者であり脚本家の丸野裕行氏をつれてきたんです。その段階では、遠藤憲一、寺島進のラインはなんとなく決まっていて。それ以外のキャスティングをぼくがやっていくことになりました。
──キャスティングを先に頼まれたんですか? 出演ではなく?
木下 どちらかというとキャスティングが先ですね。こいつを巻き込んどくと便利と思われたんでしょう(笑)。
──頼れるってことですか。その後で、出演も決まったと。
木下 そうです! で、この役がやりたいと自分で決めました。
──ではまず、キャスティングプロデューサーとしてのお話を伺います。
木下 本業は俳優部で、キャスティング専門ではないですが、プロデューサーのように、一応ジャケットをはおって各事務所を訪ね、シナリオ読んでもらったうえで、面接をすることもしました。とはいえ、俳優の知り合いも多いですから、直接連絡してシナリオを見てもらうこともありました。事務所を通す前に、当人の意思を確認することは大きいかもしれませんね。ただ、武田梨奈さんは知り合いじゃなかったんです。女性キャストはエロティックなシーンがあるので、キャスティングが難しかったですが、ある俳優主催の花見に来ていた彼女と話をしたときに、映画の話もしたら、ぜひともやりたいと言うので、話を進めました。エロティックなシーンも、彼女は空手家で、メンタル的にも身体的にも多少のことは大丈夫であろうと判断しました。もうひとつ、関西弁がしゃべれるかも重要でしたが、試しにしゃべらせてみたら彼女はセンスがあったんです。かなりレベルの高い関西弁を話すことができました。


方言に無理を感じることが多い


──関西弁にこだわった。
木下 中心を担う遠藤、寺島が関西の人間ではないため、それ以外をできるだけ関西の俳優にすることで、京都・木屋町で生きる人々の世界観を成立させようと思いました。
──そういう細やかな気遣いが大事なんですね。
木下 常々、映像を見ていて、方言に無理を感じることが多いので。
──やはりわかるものですか。
木下 わかります。難しいんですよ。たいてい方言指導が参加していますが、立場が弱いので、大者俳優には言いにくいんですよ。それで60点でも合格出しちゃうと、わかるひとにはバレちゃう。そこは危惧していました。それから、ほかに気をつけたのは、あえて、従来のイメージと違う役を当てることですね。ヤクザっぽくないひとをヤクザにしたり、それっぽいひとをそうじゃなくしたり。監督は最初、納得してくれなかったけれど、実際見てもらって説得しました。そこは自信ありましたね。
──違和感あるほうが面白い。
木下 例えば、ヤクザの役は、違和感があったほうがかえってこわいんですよ。
──キングコングの梶原雄太さんも印象が違っていました。
木下 彼は舞台で共演したつながりでお願いしたんです。舞台の共演者が3人くらい入っています(笑)。
──吉本の方が多いのは、木下さんが吉本出身だからですか?
木下 そうですね、木村祐一さんとは吉本時代に知り合っていたし、三浦誠己さんも元々は吉本の出身ですから。


大変安い報酬を承諾してくれるか


──『木屋町DARUMA 』の台本を読んだとき、どういう印象をもたれましたか。
木下 自分自身が作品作りをするとき、あまりひとがやらないものだとか、何かタブーなものだとかを選ぶ傾向がありまして。当たり前に無難にできてしまう作品に興味がないんです。そういう意味で『木屋町DARUMA』には刺激も魅力もありました。ぼくだけでなく、キャスティングでオファーしたときも、面白いと言うひとが多かったですよ。タブー満載と謳っていますが、脚本を読んで拒絶反応を起こした俳優は皆無じゃないでしょうか。あ、ひとりいたなあ、女優さんに(笑)。また、大変安い報酬を承諾してくれるかどうも重要です(笑)。
──一応報酬はあったのですね。
木下 はい、商業作品ですから。
──小耳にはさんだのは、今回のキャスティング仕事はボランティアだとか。
木下 ええ、ないです。自分の出演料もないんです。
──え?
木下 低予算ですし、趣味みたいなものですから。
--趣味?
木下 趣味なんです、これは。ボランティアっていうと、どこかでやってあげている感があるけれど、これは純粋に好きでやっていることなんです。
──お金は要らない?
木下 釣りやドライブという趣味と同じですかね。


──相当大変な趣味ですよね。
木下 その代わり、自分が気に入らないことはしないんで。ぼくは他のキャストの衣装合わせにも口出すような面倒くさいタイプですから。そこまで気になるんですよ。今回、キャスティングするうえで、台本も書き直し、役割を増やしたり関係性を膨らませたり。逆に最初の役がどんどん小さくなるってこともあって、ヒヤヒヤしました。(笑)。
──そういうとこも含めての、かけがえない趣味の時間?
木下 やっぱり自分のやりたいものにできるという自己満足でしょうか。
──出来上がったものは木下さんが納得できたものになりました?
木下 すべて納得できるようにはならないですが、おおむねよかったんじゃないでしょうか。
──それだけこだわるなら、監督をやったほうがいいのでは。
木下 北野武さんみたいなことはできないですね。自分が出演して監督するのは無理です。
──俳優業とそれ以外の仕事の線引きはしっかりしている。
木下 自分の出番は少ないものを選んでいます。
──細かいとこにこだわる熱さを持ちつつ、そこは冷静ですね。
木下 いい大人ですからバランスとっています。空気を読みながら(笑)。
──だからこそ、長らく、いい監督に起用されてきたのでしょう。実際、俳優と、プロデューサー的な仕事とどちらかを選べと言われたらどっちを選びますか。
木下 絶対俳優です。例えば、バラエティー番組に数時間出るときの報酬と、プロデュースやキャスティングの報酬を比べたら、後者は労力の割に合わないですよ(笑)。
(木俣冬)

後編に続く

[プロフィール]
きのした・ほうか
1964年1月24日大阪府生まれ。1980年、井筒和幸監督『ガキ帝国』のオーディションに合格し、映画に参加。俳優を目指して大阪芸大に入学、卒業後、吉本興業に入る。吉本新喜劇退団後、上京、映画やテレビドラマで活躍する。2014年『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』(CX)で、不倫する妻とその相手に意地悪をする夫役で注目される。その後、『痛快TVスカッとジャパン』(CX)のイヤミ課長が当たり役となり人気者に。近作に、映画『ソロモンの偽証』『家族ごっこ』『野良犬はダンスを踊る』など、ドラマ『下町ロケット』が10月18日から放送開始。映画『グレイトフルデッド』ではプロデューサーもつとめた。

[映画情報]
映画 木屋町DARUMA
原作、脚本 丸野裕行

監督 榊英雄

出演 遠藤憲一 三浦誠己 武田梨奈 木下ほうか 寺島進 木村祐一 ほか
京都木屋町を舞台に、ある事件から四肢を失った男が闇金融の取り立て屋として生き抜く姿を描く。監督『捨てがたき人々』などの榊英雄。
10月3日(土)渋谷シネパレスほか全国順次ロードショー

大阪・第七藝術劇場 京都みなみ会館 兵庫・元町映画館

公式サイト
(C)2014「木屋町DARUMA」製作委員会