今回A代表初選出の南野。右でも左でも器用にこなす将来性豊かなアタッカーで、シリア戦で出番がなくても続くイラン戦では起用されそうだ。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

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 10月1日に、ワールドカップ・アジア2次予選のシリア戦(同8日)、イランとの親善試合(同13日)に向けたメンバー23人が発表された。当日の会見ではハリルホジッチ監督がアウェーで戦う2試合の意義、選手の選考理由などを述べたが、そのなかで興味深かったコメントをヒントにシリア戦の見どころを探ってみた。
 
【Photo】10.8シリア戦&10.13イラン戦に向けたメンバー23人

●“ハリルワード”1
「南野は現代のフットボールに適応できるアタッカー。ゴール前にしっかり現われる」
 
<SD編集部の見解>
 得点力アップを睨んで選出された南野について、ハリルホジッチ監督は「数年後には日本代表にとって効果的な選手になる」とも言っている。このコメントから察するに彼の招集は将来的な布石の意味合いが強く、いきなりシリア戦でスタメンを任せるようなことはしないだろう。
 
ただ、今季ここまでのザルツブルクでの活躍は素晴らしく、その勢いを指揮官が買えば途中出場のチャンスは十分になる。守備を固めてくるだろうシリアに対し、「ゴール前にしっかり現われる」南野はリーサルウェポン(秘密兵器)になれるか、興味深い。
 
●“ハリルワード”2
「今のところ、ロングボールを前線に放り込むのは我々のアイデンティティではありません」
 
<SD編集部の見解>
 会見の席でMFのメンバーを発表した際、ハリルホジッチ監督は「テクニックある選手を選んだ」と言った。前回まで呪文のように唱えていた「デュエル(格闘の意)」、「球際の強さ」といったフレーズがすっかり影を潜めたのは、シリア戦ではポゼッション重視のサッカーを展開しようとしているからではないか。
 
 シリア戦ではクロスよりも「グラウンダーのパス、特に背後へのボールを使いたい」(ハリルホジッチ監督)ということであれば、クロスの名手・太田(FC東京)が落選したのも頷ける部分はある。
 
 テクニックを最重視するなら、4-1-4-1システムで香川と清武をダブルトップ下に置くのも面白そうだ。ハリルホジッチ監督は清武について「ビルドアップのクオリティが高い」と称賛しており、攻撃的センスも兼備する彼をスタメンに抜擢しても不思議はない。
 
●“ハリルワード”3
「火曜日の朝(シリア戦の2日前)に到着する選手もいます。これは私にとって、大きな問題です」
 
<SD編集部の見解>
 ハリルホジッチ監督のコメントを拝借すれば、「シリアはすでに昨日から合宿を始めていて、明日はオマーンと親善試合をする」。今週末のリーグ戦を戦った後に集合する日本代表は、そんなシリアに比べて準備期間が極端に短い。試合2日前の火曜日(10月6日)に合流する選手は、いわばぶっつけ本番で試合に臨むことになる。
 
 これは小さくないハンデで、いくらハリルホジッチ監督がシリアを分析しても、選手のコンディションに大きな問題があれば苦戦を強いられる可能性がある。どこまでフレッシュ(健康体という意味で)なメンバーを送り出せるかは、気になるところだ。
 
 仮に2ボランチを採用するなら、長谷部のパートナー選びに注目したい。ハリルホジッチ監督の見解では、「山口は少し怪我をしていて」、「柴崎は怪我明けでトップパフォーマンスに戻っていない印象」だ。となると、コンディション次第では柏木のサプライズ起用もあるかもしれない。
 
 もっとも、その柏木についても、南野と同じく現体制下で初めて代表活動に加わる(東アジアカップは負傷辞退)点での不安は拭えない。いずれにしても、週末のJリーグでのパフォーマンスがひとつの判断材料になりそうだ。
 
●“ハリルワード”4
「2次予選では、ここまで相手は我々の16メートル(エリア付近)に到達できていません」
 
<SD編集部の見解>
 6月のシンガポール戦、9月のカンボジア戦とアフガニスタン戦では確かに、エリア内に持ち込まれて決定的なピンチになる場面はなかった。ただ、これは相手のミスに助けられた部分もあり、日本の守備組織が完璧に機能していたかと言われれば疑問符が付く。
 
 アフガニスタン戦とのアウェーゲームでは、軽率なボールロストから何度かカウンターを食らっている。一方的に押し込む展開でチームの重心が高くなるのは必然だが、それでもスペースを与え過ぎていた感があった。
 
 ハリルホジッチ監督曰く「(シリアの試合を観て)驚かされたのがゴール前での効率性、リアリストであるところ。(ゴールを奪うのに)それほど多くの決定機を必要としない」。そんなシリアの攻撃を防ぐには、ボランチと4バックとの距離感がポイントになるか。スペースを簡単に与えないようにして、ピンチの芽を確実に摘みたい。
 
●“ハリルワード”5
「我々にいまだPKがないのは理解できない」
 
<SD編集部の見解>
 PKを獲得できない原因のひとつは、良い形でエリア内にボールを持ち込めていない点にありそうだ。実際、9月のカンボジア戦とアフガニスタン戦では左右からのクロスが跳ね返されるなど、最終局面でのクオリティ不足は否めなかった。
 
 ただ、シリア戦ではクロスではなくグラウンダーのパスが多用されそうだ。仮にそうだとして、フィジカル以上に日本人特有のテクニックを前面に押し出して攻め込めれば、PK獲得のチャンスは増えるのではないだろうか。

 得点力アップという意味では、PKを獲得できるかに加えてFKからゴールを奪えるかも見どころのひとつだ。現代サッカーでは「35パーセントのゴールがFKから生まれていると言われている」(ハリルホジッチ監督)だけに、キッカーの選定は重要だ。
 
 13年8月以来セットプレーからのゴールがない本田にこのままメインキッカーを託すのか、それとも違う誰かをピックアップするのか、ハリルホジッチ監督の決断が注目される。
 
取材・文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)