グループE・1位のシリア戦は、実績重視のメンバーが並ぶはず。清武や南野にチャンスが与えられたとしても、おそらく途中からだろう。

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 試合の度に「縦へのスピード」(3月の連戦後)「デュエル」(7月の東アジアカップ前)「クロスの精度」(9月の連戦後)と異なるテーマに言及してきた指揮官が、ようやく日本人の特長を理解したのかもしれない。

 10月1日に行なわれた中東遠征(8日/ワールドカップアジア2次予選・シリア戦、13日/親善試合・イラン戦)のメンバー発表会見からは、そんな印象を受けた。
 
 新顔は「怪我で東アジアカップに呼べなかった」柏木陽介と塩谷司、そして「シモ(霜田技術委員長)が2週間かけて視察してくれた」南野拓実くらい。怪我で未招集の酒井宏樹と遠藤航を除けば、その他は本田圭佑や香川真司といった常連たちだ。
 
「勝たなくてはいけない試合」(ヴァイッド・ハリルホジッチ監督)グループE首位との直接対決とあって手堅いメンバーが名を連ねたのは、予想通り。しかし、前回までと趣が違ったのは、その選考基準だ。
 
「我々はアイデンティティを探しているが、それはロングボールではない。グラウンダーのボールを使って、相手の背後のスペースを突いたり、バリエーションを持って、そこにスピードを伴った攻撃がしたい。特にリズムの変化のところでスピードを上げたい」
 
 大まかに言えば、選手に求めるのは地上戦で勝負できるテクニックとスピード、ということだろう。その証拠に、今回のメンバーには、あれだけ指揮官自身が求めていた「高さやパワー」があるCFはおらず、クロス精度に定評がある太田宏介も外れている。
 
 ここまで予選3試合を振り返れば分かるが、日本代表はゴール前を固める相手に対してハイクロスからほとんどゴールを奪えていない。そうした経験から、ハリルホジッチ監督も理解したのだろう。テクニックやスピードを活かした“膝下での崩し”こそ、日本代表が活きる道だと。日本人であれば分かりきったそのスタートラインに、指揮官も立ったということだ。
 
 なかなか精度が高まらないクロスからの攻撃よりも、テクニックやスピードを活かした地上戦重視にシフトする。そんな狙いは、中盤の新たな駒として「ビルドアップで貢献できる」柏木を招集した点からも透けて見えた。
 シリア戦は右SB・酒井宏の代わりに、酒井高徳か塩谷が入るくらいで、その他のポジションは“鉄板”のメンバーが並ぶはずだ。所属クラブで出場機会を得られていない左SBの長友佑都や酒井高の試合勘は不安視されるが、実績重視の指揮官が、この重要な試合でギャンブルに打って出る可能性は低いだろう。
 
 唯一、不透明なのは、怪我の状態が心配される山口蛍で、彼にアクシデントがあれば、柴崎岳か追加招集の選手が代役を務めることになる。
 
 もっとも、続くイランとの親善試合では「リスクはあるが、何人かの選手をテストしたい」と複数の選手を試す意向を示している。怪我から復帰した清武弘嗣はもちろん、新戦力の柏木や塩谷、南野にもチャンスが与えられるに違いない。
 
 激戦区の2列目でポジション取りに挑む清武と南野は、前者がトップ下、後者が右FWで起用される可能性が高い。「FKでより点を取りたい」という点で言えば、清武にはセットプレーのキッカーとして、同様に南野には「(これまでの試合で)PKをもらえていない」現状を打破するべく、エリア内での仕掛けが求められるはずだ。
 
 また、ボランチ起用が濃厚な柏木は、所属クラブで披露するプレーを表現できれば、新たなオプションとしての地位を確立できる。

 柏木の持ち味である精度の高い縦パスは、現在の日本代表に欠けている部分。パフォーマンス次第では、一気に序列を上げる可能性もありそうだ。「右SBで競争してほしい」塩谷も同じく、対人の強さを押し出して、やや安定感に欠ける酒井宏にプレッシャーを与えたい。
 
 いずれにせよ、彼らのような新戦力の台頭がなければ、いずれ日本代表の成長は頭打ちになる。ハリルホジッチ監督には、負けが許されないシリア戦での勝点3はもちろん、テストと位置付けたイラン戦での思い切った選手起用にも期待したい。