次世代ヘッドマウントディスプレイが変えるAR/VRの未来
 HMD(ヘッドマウントディスプレイ)市場がここ数年活気を帯びている。スマートフォンの台頭によって、デジタルカメラ市場は2011年をピークに縮小しているが、このHMD市場はウェアラブルデバイスとの連携により急速に拡大している。しかし、つい数年前までは一部マニア向けのニッチ市場でしかなかったこのジャンルの製品が息を吹き返したのは、なぜなのだろうか? そこで今回は、活況を呈するHMD市場、そしてそこから見える次世代AR/VRデバイスの未来を覗いてみる。

◆ARとVRに二分されるHMD

 Google glassを覚えている人はいるだろうか? 数年前、次世代のウェアラブルデバイスとして世界の脚光を浴びたこのHMDは、android搭載のメガネ型デバイスで、次世代のウェアラブルデバイスとして世界中の脚光を浴びた。

 しかし結論から言ってしまえば、このプロジェクトは半ば頓挫する形となってしまう。その理由としてはメガネに取り付けられたカメラによるプライバシー問題、常時ディスプレイを見続ける結果生じる健康上の問題や安全性の問題、更にはデバイスそのものの見た目など、さまざまな問題があったからだ。

 それを受けて業界は、屋外で使うウェアラブル用のHMDから屋内で使うVRやAR向けへと舵を切ることとなった。

 ここでARとVRの違いをおさらいしておこう。ARは「Augmented Reality」、つまり拡張現実の略であり、現実に存在するオブジェクトの上に仮想的に作成したオブジェクトを追加する。つまり、現実をコンピューターで拡張するものと考えてもらって差し支えない。それに対しVRは「Virtual Reality」、つまり仮想現実の事であり、現実とは全く違う世界をコンピューターで作り出し、それを利用者に見せる方式だ。

 今、HMD業界はこの2つのタイプのどちらにアプローチをするかで二分されており、各社がしのぎを削っている。

◆ARとVRの開発と取り組みの現状

 次に、各社が具体的にどのような取り組みを行っているかを見ていく。

 まずVR向けから紹介すると、これは主に米国Oculus VR(Facebookが2014年に2000億円で買収)と日本のソニー(HMZシリーズ)が製品を展開している。Oculusは広視野角をウリにしたゲーム向け、ソニーは高画質を売りにした映像コンテンツ向けの色が強く、うまく住み分けができている。また、双方ともに、デバイスを装着した状態での没入感を重要視しており、3Dへの対応やそれに付随する新しい機能の開発に力を入れている。

 しかしながら欠点もある。装着時に外の世界が全く見えないため、どうしても用途や利用スタイルが限られてしまうというものだ。完全に屋内のみでの利用となり、用途も現状では動画コンテンツとゲームのみと限られてしまう。その問題に対し、いかに新しい利用スタイルを提案できるかどうかが今後のカギとなりそうだ。

 ではAR市場はどうか? まず現状でAR向け製品を専用OSとパッケージングした製品を具体的に開発しているのは、マイクロソフト一社のみだ(※)。「HoloLens」と名付けられたHMD、というよりはヘッドマウント型のコンピューターは、一言で言えば近未来そのものだ。頭に装着するだけで、そこにはない仮想ディスプレイが空中に現れ、指先のジェスチャーで操作を行う元来SFの世界でのみ描かれてきたものが、部分的にではあるが現実に稼働するというシロモノだ。(※:EPSONの「MOVERIO」もAndroid搭載でVuforiaのライブラリなどを使えば可能だが、Hololensはそれ自体に投射型深度センサーを搭載し、周辺環境を認知し、リアルタイムかつマーカーレスで画像投影可能なためより現実感のあるARが可能)

 このデバイスをマイクロソフトは5年で市場に投入すると発表しているが、その仕様については不透明な部分が多い。現状、どうしても大きくなりがちな本体を、いかに小型軽量化ができるかがポイントになっている。