『今をブレない。』(講談社)

写真拡大

「とても公平に報じると聞いていた日本のマスコミに、ガッカリしました」

 プロボクシングの世界タイトルマッチで、挑戦者として来日したアルゼンチンの選手や関係者の一行が口にしていたのが、日本のスポーツ紙記者に対する不満だった。

「選手でもない人間の胸もとを盗撮して新聞に掲載して、本当にひどいと思いました」

 通訳を介して聞こえてきた陣営の不満は、スポーツ紙が「推定Fカップの美人」と報じた27歳のマネジャー、ナタリア・リベロさんの扱いについてだ。

 9月27日に大阪で行われたWBA世界フライ級タイトルマッチ、チャンピオンの井岡一翔と、挑戦者の同級10位・ロベルト・ドミンゴ・ソーサの試合では、戦前23日あたりからウェブ版も含めて掲載された、各紙の記事の見出しがやたらとナタリアさんについてのものだった。

「井岡に“ハニートラップ”の危機、会長『セコンドにつかれたらヤバイ』」(23日、サンケイスポーツ)
「井岡に“最胸の刺客”!F乳ハニートラップに会長KO寸前『汗かくわ』」(23日、同)
「井岡、悩殺刺客 ソーサ陣営に巨乳美女」(24日、デイリースポーツ)
「井岡陣営、F乳美人マネージャーに色々仕掛けられた!」(27日、同)
「井岡“ドキドキ計量”相手ソーサ美人マネに心拍数異変!?」(27日、スポーツニッポン)
「Fカップ・マネジャーのナタリアさん、大胆衣装も大差での敗戦にがっくり」(27日、スポーツ報知)

 各紙が示し合わせたかのように「Fカップ」と胸のサイズを書き、その写真も大々的に掲載。スポーツ報知などは彼女が前かがみになったところを狙った“谷間ショット”も掲載していたが、ナタリアさんはタレントでもなんでもない一般人。父親がボクシングプロモーターであることからマネジャー業を行っているが、年末には母国で結婚を控えているだけに、日本の過熱報道には不快感を示したわけだ。

 ただ、こうした記事を書いた記者のひとりに話を聞くと「そもそも挑戦者が格下すぎて、他に話題がなかったのが原因。これを煽ったのも井岡サイドだ」と反論した。

「挑戦者ソーサはもともと世界ランカーではなかったのに、井岡との試合が決まって世界ランクに入った急造ランカーで、どう見ても井岡の防衛は間違いなかったでしょ。そんな試合をどう煽れというの。そこで井岡の父親である、一法会長が『向こうのマネージャーが凄い美人や。色気でやられてしまうわ』って言い出して我々もネタにしただけ。Fカップと言い出したのは会長ではなく記者のひとりだったけどさ(笑)」

 要するに、一般人女性の胸の谷間を載せて「Fカップ」と書き立てたボクシング記者たちは、勝敗の見えた試合の行方よりもこっちの方が気になっていたということか。実際、試合は井岡が余裕をもった試合運びを見せ一方的な展開で、ジャッジひとりがフルマークをつける大差の判定決着だった。

「試合後、記者のひとりが落ち込むナタリアさんをしつこく追って宿泊先まで行ったけど、さすがにアルゼンチン男性のスタッフに『やめろ』と一喝されたそうだよ(笑)。TBSの視聴率(関東平均10.8%)がいまいち伸びなかったらしいけど、美人マネジャーを特集していたら、あと3%は伸びたんじゃないの?」と前出記者。

 ボクシングファンなら記者の追跡力を別の方向に生かしてほしかったと思うだろうが「美人○○」というカテゴリーが大好きなスポーツ紙に、そんな話は馬の耳に念仏か。