どちらにも入りにくい人もいる……(shutterstock.com)

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 最近ではLGBT(L=レズビアン、G=ゲイ、B=バイセクシャル、T=トランスジェンダー)とひとくくりされるセクシャルマイノリティ――。

 しかし、たとえばレズビアンを見てみると、体の性は女性だが心は男性、好きになるのは女性という人もいれば、体も心も女性で好きになるのも女性という人もいる。男性になりたいレズビアンや、女性になりたいゲイばかりでなく、非常に多様化している。トランスジェンダーに至っては、性同一障害と診断された人も含まれるが、両性や中性と自覚する人もいて、一概に「オネェ系」や「ニューハーフ」=トランスジェンダーではない。

 今年4月に電通ダイバーシティ・ラボが行った「LGBT調査2015」によると、LGBTを含むセクシャルマイノリティに該当する人は7.6%(2012年の調査より2.4%増)。500人の会社だと38人のLGBTの人が働いていることになる。「うちの会社にはいない」と言う人もいるだろうが、カミングアウトする人がまだ少ないだけで、隣の席の同僚がLGBTかもしれず、人知れず苦しんでいるのかもしれない。

 セクシャルマイノリティの人にとって、普通に生活することには多くの困難がつきまとう。偏見・差別に直面する例も多いだろうが、「トイレ問題」も切実だ。特にトランスジェンダーの人は男女別のトイレに入ることを避ける傾向にあり、排尿障害を起こす人が非常に多いのだそうだ。

アメリカの小学校の斬新な取り組み

 LGBTの人に肩身の狭い思いをさせている日本に、アメリカの小学校の取り組みのニュースが飛び込んで来たのは9月中旬のこと。「サンフランシスコの小学校が男女別トイレの段階的廃止」という全米でも例のない取り組みを始めたというのだ。

 この学校には、男女どちらの生にも合致しない児童が8人いるという。校長は「生徒全員に安心感を持ってもらいたい。同時に全員が一様に平等であることを理解してもらいたい」という声明を出した。この問題へ真剣に取り組んでいることがうかがわれ、当事者にとってはこの小学校の今後が気になるところだ。

 また、男女別トイレの廃止には至らないものの、性別を分けないトイレを導入する大学も増えている。一方、ミズーリ州ではトランスジェンダーの生徒が女子用トイレや更衣室を使ったことに抗議し、生徒150人が授業をボイコットする騒ぎになった例もあり、アメリカでもスムーズに進んでいるわけではない。

どうする? 日本のトイレ

 かたや日本ではどうか? 関西のある大学では、人権教育の基本方針に「性的指向や性的自認による差別を行なわない」と明記。また、会社の倫理規定や行動規定に国籍や人種、性別、宗教、障害などによる一切の差別やハラスメントをを禁じる項目の中に、性同一性、性的指向を加えている企業も出て来ている。

 しかし、LGBTに理解を示す企業でも、トイレ問題を積極的に解決しているとはいいがたい。現に、人権基本方針の差別禁止項目に「性的指向と性自認の差別を一切行ないません」と追記した大手流通グループの店舗にも、まだトランスジェンダーの人が入りやすいトイレはできていないのではないか。

 先の電通ダイバーシティ・ラボの調査によると、LGBT層の市場規模は5.94兆円だそうだ。無視できる数字ではない。商品やサービスのカテゴリーは、食費にファション、家電・AV機器、家具・インテリア、化粧品、通信、ペット関連、旅行、カルチャー活動など多岐にわたる。この市場のシェアを少しでも多くゲットたいのなら、LGBTのトイレ問題を解決し、アピールすることが企業の発展にもつながるのではないだろうか。
(文=編集部)