松田卓也が託す、日本がこれから歩むべき「シンギュラリティへの道」 #wiredai

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「14分経ったら、教えて」手に取ったiPhoneの「Siri」にそう語りかけたのち、松田卓也のスピーチは始まった。9月29日に開催されたカンファレンス「WIRED A.I. 2015」の初っ端を飾るキーノートのテーマは、「シンギュラリティへと至る道」だ。本稿では彼の言葉をもとに、いまぼくらの眼前にあって避けては通れない「AIイシュー」を紹介したい。

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松田卓也|TAKUYA MATSUDAM
1943年生まれ。宇宙物理学者・理学博士。神戸大学名誉教授。NPO法人あいんしゅたいん副理事長。国立天文台客員教授、日本天文学会理事長などを歴任。疑似科学批判も活発に行っており、Japan Skeptics会長やハードSF研究所客員研究員も務める。著書に『これからの宇宙論 宇宙・ブラックホール・知性』『人間原理の宇宙論 人間は宇宙の中心か』『間違いだらけの物理学』『2045年問題 コンピュータが人類を超える日』など。シンギュラリティを議論することを目的とした「シンギュラリティを語る会」を主宰している。当日の内容はこちらでも。

次は、2029年だ

まず、シンギュラリティとは何なのか。それは「人間よりはるかに知的能力の高い“超知能”ができること」だと松田卓也は言う。ではその超知能とは、いったいどれほど賢いものなのか。松田は、未来学者レイ・カーツワイルを引き合いに「全人類の知能を合わせたくらい」だと説明する。高度化された人工知能によって科学技術は爆発的に進化する、そして、結果的に人間生活が大きく変化する──ここまでが松田が定義する「シンギュラリティ」だ。

では、そのシンギュラリティが訪れるのはいつなのか。松田は再び、カーツワイルを引き合いに出す。それによると、2015年の現在を基準にしたときに「次のエポックメイキングな年」は2029年なのだと言う。2029年までの間に「狭い人工知能」、つまり特定目的の人工知能が爆発的に発展し、結果的に社会に「技術的失業」が起こる。2029年をエポックメイキングだとするのは、その年に「汎用人工知能」ができるとされているからで、そして来る2045年、世界はシンギュラリティへと到達する──それがカーツワイルが描いたシンギュラリティへのロードマップだ。

人工知能を定義せよ

人工知能を松田流に分類するなら、まず先述した狭い人工知能(Narrow AI)が挙げられる。これは、例えば松田がスピーチの冒頭に登場させたSiriや、IBMのコグニティヴコンピューター・Watson(ワトソン)が代表的な存在だ。対して汎用人工知能とは、人間のように幅広い能力をもったものを指す(いまだ完成していないこの人工知能をいかにつくるかが、いまの課題だと松田は言う)。他にも「弱い人工知能」「強い人工知能」という分類もあるが、これはどちらかというと哲学的な概念で、そこに意識があるかないかが両者を分ける論点だと、松田は言う。

さらに松田は、「超知能」を大別して4つに分類する。まず一般的に人工知能ととらえられている、機械由来の超知能。対して人間由来の超知能、これは映画『トランセンデンス』に登場する主人公のように人の意識を機械にアップロードした、人間の価値観をもっている人工知能だ。一方、「超人間」と呼ぶものは、映画『ルーシー』に登場する人間の能力を強化したもので、生物的に超知能になるよう操作した結果として生まれるもの。そして「知能増強人間」は、生身の人間と人工知能を合体させたものだという。

日本にシンギュラリティを起こすために

「シンギュラリティは、日本に絶対に必要だ」。これが、14分ちょっとのスピーチにおいて松田がもっとも強調した主張だ。シンギュラリティによって、労働生産性は爆発的に向上し、人間生活が豊かになる。これこそが、250年前に起こった産業革命に次ぐ“第2の産業革命”だというのだ。

250年前、人類最初の産業革命を達成したヨーロッパ、アメリカはその後、世界をリードする強国になった。ならば、これからシンギュラリティを達成した国が21世紀の先進国になる。そして松田曰く、「日本はこのままでは置いて行かれてしまう」のだと言う。

まず企業単位で考えてみると、海外での活発な動きのみが世に知られている。グーグルはDeep Mind社を買収しフェイスブックも巨額の投資をし、マイクロソフトが「Cortana(コルタナ)」を発表しあるいは自動翻訳に力を入れている。IBMは3つのプロジェクト──シナプス、ワトソン、そしてコーティカルラーニングセンターを同時に走らせ、中国のバイドゥも躍進している。翻って、日本には世に知られる同様の存在が見あたらない。

政府にはどのような動きが見られるかというと、EUが「Human Brain Project」、米国が「ブレインイニシアティヴ」という名の下に投資を続けている。一方、日本では文部科学省による100億円の資金投下が報じられたが、その額たるや、在米のいち企業に比しても圧倒的な差をつけられている。

それでは日本に生きるわれわれは悲観するほかないのか? 決してそうではない、というのが松田の直観だ。そして、その根拠となるのが、同じくカンファレンスに登壇するPEZY Computingの存在だ(その詳細は、こちらのインタヴュー記事と、12月1日に発売する雑誌『WIRED』VOL.21〈現在予約販売中〉をご参照)。

「Pezyは、73億人分の知能を6〜8Lの容量に収めるハードウェアをつくるはずだ」。だから、「これから解決すべき問題はソフトウェアにある。ソフトウェアこそ、日本の皆さん方がつくらなくてはいけない」。松田は会場に詰めかけた観衆に向けこう呼びかけ、スピーチを締めくくった。

松田卓也からの6つのメッセージ

    日本からシンギュラリティを起こそう日本の少子高齢化による衰退を止めるためには、生産性の抜本的な向上が必要であるそのためにはロボット化、人工知能化、超知能化が必要であるいままでの前提──人間が働く──を“ちゃぶ台返し”しようハードは齊藤さんがつくるとおっしゃっている。だから、まかせましょう問題はソフト。そしてそれをつくりあげられるのは、若い皆さん方だ

次は、未来の東京を考える!「WIRED CITY 2015」10/13開催

「WIRED A.I.」に続けて開催するカンファレンスイヴェントのテーマは「都市」。2020年に向けて、その先の未来に向けて、ぼくらはどんな東京を、そして社会をつくっていきたいのか。テクノロジーによる都市づくりの可能性を探る「NEW CODE」、”都市開発”を再定義する「NEW DEVELOPMENT」、新しい都市共同体のつくりかたを考える「NEW COMMUNITY」の3つの視点で未来の都市を考える1dayカンファレンスに、国内外から豪華スピーカーが集う。さらにスペシャルセッションとして、トラックメーカー・tofubeatsの登壇が決定! WIRED CITY 2015のために彼がつくった「未来のTOKYOのための音楽」を聴ける、ここだけのチャンスをお見逃しなく。詳細はこちらから。

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