システムは相手や状況によって3-4-2-1と4-2-3-1を使い分けるが、そのいずれにおいてもプレーコンセプトは共通。攻撃ではボールポゼッションによりコンパクトな陣形を保ってチームを押し上げ、敵2ライン(DFとMF)間に入り込んでのプレーから崩しを狙う。守備では、FWを含む10人全員による「前に出るプレッシング」が基本原則だ。
 インテル戦の得点シーンにも、それははっきりと反映されていた。
 
 開始3分にPKを奪った場面は、GKサミール・ハンダノビッチからCBガリー・メデルへのパスに対してヨシプ・イリチッチが厳しくプレッシャーをかけ、同時にMF陣も前に出てすべてのパスコースを遮断。やむをえずメデルがGKに戻したところにカリニッチが襲いかかり、ハンダノビッチのファウルを誘ったのだ。
 
 カリニッチが23分に決めた3点目は、左トップ下のボルハ・バレロが2ライン間に引いて中盤からの縦パスを引き出し、そこから左サイドを駆け上がったマルコス・アロンソに展開。そのM・アロンソがドリブルで裏に抜け出し、中央にクロスを折り返すという展開から生まれている。
 
 個のクオリティーでは明らかに劣るにもかかわらず、明確なコンセプトに基づく戦術的秩序と組織的連携によってインテルを翻弄したその戦いぶりは、指揮官の確かな手腕を示すものだ。
 
 献身的なプレッシングやオフ・ザ・ボールの動きでチームを助けつつ、フィニッシュの局面ではゴールセンスを発揮するCFカリニッチ、トップ下で躍動するイリチッチ、的確なポジショニングで攻守のバランスを保証しながら質の高いパスでビルドアップとポゼッションを支えるミラン・バデリとマティアス・ベシーノのセントラルMFペア、そして最終ラインでリベロ的に振る舞うゴンサロ・ロドリゲスなど、戦力的にも質の高いプレーヤーが適材適所に配されている。
 
 さらに故障からの本格復帰が待たれるFWジュゼッペ・ロッシ、現時点ではチームへの適応プロセスにあるM・スアレスなど、さらなる「隠し玉」もベンチに控えており、チームとしての伸びしろはまだまだ残されている。
 
 混戦模様のセリエAで今後も主役を演じ続ける可能性は十分だ。
 
文:片野道郎