コンサドーレ札幌の野々村芳和社長【写真:松岡健三郎】

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コンサドーレにライバルは必要か?

 Jリーグがさらに発展していくためには何が必要なのか? 現場に携わるコンサドーレ札幌の野々村芳和社長へ素朴な疑問をぶつけ、より広い層へ現状を伝え、未来への提言を行っていく。不定期連載です。

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――クラブを地域で盛り上げるために、ライバルクラブの存在があると思います。セレッソとガンバや多摩川クラシコなどのように。ただ、北海道の場合はJクラブが1つしかありません。それはネガティブな要素ですか?

「明確なライバルを見せられないので多少は損かな、と思うことはあります。ただ、あえてネガティブな要素を探せば、その中の1つという程度かな。

 まだ多くの人が、サッカークラブは地域対抗戦だということにあまりピンときていないと思う。コアな人たちは良く分かっているかもしれないけど、北海道の人たちやメディアがある程度そんな認識持っているかとかと言えば、まだ全然ない。

 北海道は大きくて1つの国みたいなもの。そして北海道の人の、北海道に対する思い入れや意識はすごく強いと思う。だから、サッカーは地域対抗戦なんだ、自分たちがもっとこうしていったらクラブもこれだけ大きくなって、あの地域に勝っていけるんだ、というようなことを分かってもらえれば大きなメリットになる」

――それが分かるようになると大きいですね。札幌に200万人住んでいて、北海道の人口は少なくないですから。

「そういうことをいろんなところに行って、話したり、サポーターに来てもらったりして、だんだん浸透するようにやっているところです。メディアがわかってくれれば、うまくテレビを通じて伝えてくれると思う。

 だけどそこがいま、その枠もないし、十分に分かってもらえてないから話をして、伝えていくスピードを上げたい。そういう意味でメディアに出ることは大事だと思っています」

メディアを巻き込む理由

――それもあって野々村さんはテレビに積極的に出ているわけですね。

「以前はお金を貰って出ていたけど、いまは『お金いらないから出してくれ』と言って出ていますよ」

――北海道日本ハムファイターズとの関係はどうですか。メディアという意味では非常に大きなライバルだと思います。

「上手くやっていこうと思っているけど、簡単じゃない。僕は、野球はショービジネスだと思っている。ショービジネスとして歴史もあるし、ビジネスモデルとして素晴らしい。でも、サッカーは最終的にはショービジネスではなくなるというか、文化になっていくんだと思う。

 ショービジネスと文化、コアとライト、いまのJリーグには両方の要素がないといけないし、コアを増やすにはライトを増やさないといけないから、野球から学ぶことはすごく多いと思っている。

 でも野球のファンとサッカーのコアサポーターは全然質が違うものだから、それは一緒に考えない方がいい。野球を観に行く人は、本当に気楽な感じでライトな気分で観に行く。サッカーはどちらかというと、『俺のこのクラブを』という生活の一部として観に行く。

 そこでは勝ったときの喜びの度合いも違うし、一緒にはなかなかできない。野球は野球でサッカーの脅威は絶対的に感じているはずで、もしメディアの露出がイーブンになった時は、野球が相当やられるという感覚を持っているんじゃないかなと思っている。北海道だったらもう9:1くらいだからね」

――9:1ですか。

「時間で言ったらもっと差があるかもしれない。95%対0.5%くらいの感じかもしれない」

――コンサドーレ札幌がJ1へ上がったとしてもそんなに変わらないですか?

「ちょっとよりを戻すくらいかな。そこが野球が生き延びているところだと思う。毎日試合があって、露出が普通にあって……。その露出が減ったとして、サッカーがその半分を獲ったとするなら、確実に札幌ドームは3万、4万の観客が来ると思う」

新しいドラマをつくる感覚を根付かせられるか

――子どもが好きなスポーツでもサッカーが野球を追い抜いているというデータもあります。

「もう抜いている。圧倒しているしね。北海道のテレビ局はサッカーをコンテンツとして育てようという感覚がまだまだ少ない。スポーツはみんなでつくっていかなきゃダメなんだけど。やっぱり『勝たねえからだよ』みたいなことが聞こえてくる」

――それはよく聞く言葉ですね。もちろん地方局にもサッカー好きの人はいるはずですが、営利企業である以上、「勝ち馬に乗る」から逃れられない部分もあるかと思います。

「結局水戸黄門みたいな、結末は分かっている、最後は勧善懲悪である種ハッピーエンドで終わるっていうようなときに、ようやく乗っかってくるような感じだと思う。映画なんかも最終的には気分よく終わるから観に行く。

 その気分の良さと、上手くいかないときもあるけど自分も関わってつくったときのその気持ちの良さは全然違う。どうやって育てていく、ドラマをつくっていくという感覚がまだ全然ないと思う。

 出来上がったドラマ、結末が大体分かっているものを楽しむ以上のドラマをみんなでつくっていくような楽しみ方をできるのがサッカー。そのぶんうまくいかなくて腹が立つこともあるかもしれないけど、だけどみんなで成し遂げたときの喜びは他にない。そういう楽しみ方があるんだということをどれだけ分かってもらえるか。これがすごく大事になってくる」

野々村芳和(ののむらよしかづ)
1972年生まれ。現株式会社北海道フットボールクラブ(コンサドーレ札幌の運営会社)代表取締役社長。慶應義塾大学卒業後の1995年にジェフユナイテッド市原でプロデビュー、2000年にコンサドーレ札幌へ移籍。TV番組「Jリーグラボ」などでの歯に衣着せぬ発言はサッカーファンの間でも話題。

※フットボールチャンネル編集部より:コンサドーレ札幌の野々村芳和社長のインタビュー原稿を不定期連載でお届けしています。野々村社長に聞きたいこと、質問などありましたらフットボールチャンネルのTwitterやFacebookなどでお気軽にお問い合わせください。次回取材時の参考にさせて頂きます。

text by 編集部