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西口のすべてはライオンズとともに!

まだ屋根がなかった西武球場。レオのマークが描かれていたのは一塁側でした。小さな電光掲示板と薄くくすんだ人工芝。下界よりも多めの月と星が見える碧い夜空。勝利の日には眩い花火が打ち上がりました。内野席へと向かう長い坂道を登りながら、田舎から出てきたばかりの僕は「これが西武球場なんだ」と黄金時代の残像を見ていました。

その残像の向こうに立っていた細身の青年。大きくも太くもない体躯を天高く伸ばし、全身をムチのようにしならせるダイナミックなフォーム。跳ね上げた右足の勢いだけを見れば150キロは出ようかという剛腕から繰り出される基本緩速球、ときどき剛速球。しかし、速球など飾りだと思わせるようなキレで縦に大きく落ちるスライダー。新たな時代と、ちょっと不吉な13番を背負った青年は、テレビで見ていた黄金時代の残像をすぐに忘れさせてくれました。

背番号13が投げる試合のすべてに勝利を期待し、よく裏切られました。1997年、背番号13にとって記録上は最高の結果を残した年、背番号13は日本シリーズで2敗を喫しました。翌1998年、マシンガン打線と呼ばれた横浜ベイスターズの前に真っ向立ちはだかり、背番号13はやはり2回マシンガンで撃ち抜かれました。2002年、2004年、よく見ると日本シリーズ勝ってない。2008年は日本一をかけた第7戦に先発したと思いきや、乱調で2回降板という体たらく。ここぞという日、背番号13は思い通りにいかない苦笑いを浮かべることが多かった。

二度のノーヒットノーラン未遂、一度の完全試合未遂も、そう。

記録よりも記憶に残る選手というと、その記憶は印象的な勝利や歓喜の雄叫びだったりするもの。しかし、背番号13が残した鮮烈な記憶は、終戦の黒星と何かを逃した苦笑い。ただ、不思議と後味は悪くない。背番号13は誰も責めなかったし、何の不満も漏らさなかった。勝てない自分を自嘲するように笑うだけで、怒りや悲しみを誰かにぶつけることなく、逆にそのすべてを引き受けてきた。それがエースだと背番号13に教えられた。

どんなに晴れがましい日も、どんなに悔しい日も、背番号13はいつもそこにいました。多くの仲間が西武球場を去り、より大きな成功や栄光を手に入れたあとも、そこに背番号13は居つづけました。積み上げた182勝も、喫した117敗も、ただの1球の混じり気もなく、すべてが西武ライオンズのためのものだった。西武ライオンズだけに愛するチャンスが与えられた贈り物だった。敵になることなく、最後まで一緒に戦えて嬉しかった。あなたと同じ球団でよかった。

初めて見たあの日から、別れを告げた今日まで、我が西武ライオンズのエースはただひとり。

西口文也、あなただけが僕のエースです。

21年間、一緒にいてくれて、ありがとう。



◆西武球場前の改札、1ヶ所しかないけれどアレ「西口改札」にしようぜ!

2015年ホーム最終戦。クライマックスシリーズ進出を争うロッテとの直接対決。それはそれでとても大事なことですが、この日の試合のテーマはそれじゃない。西口文也、現役引退。お別れの場に立ち会い、感謝を届けることが一番大切なことだった。伊東監督率いるロッテとの試合であることさえも、そのためのお膳立てであるかのよう。西武VSロッテ⇒西VSロ⇒西ロ!!な、な、なんだってぇー!!

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当日券完売、満員札止め。

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背番号13のメモリアルボード。

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この日の来場者には西口文也の足跡を記したメモリアルチケットと、ライオンズブルーに白い文字で13の数字を入れた応援ボードが配られました。勝利はもちろん欲しいが、それよりも大切なことがある。そんな想いが、ライオンズの人々を今日ここに集まらせた。ビッシリと埋まったスタンドは、それだけ多くの「ありがとう」が西口に向けられているということ。西口の「西」は西武の「西」。何もかもが約束された幸せのように思えてきます。

先発を任されたのは菊池雄星。本来であれば自他ともに認める西口直系の男・岸孝之がマウンドに上がる予定でしたが、左脇腹肉離れにより登板を回避することに。そんなスライドの影響もあってか、菊池雄星はピリッとしない内容。ほとんどの打者をフルカウントにしているんじゃないかと思うような乱調で、初回いきなりの先制点を許したかと思えば、味方が逆転した次のイニングで四球⇒逆転ツーランを喫する始末。チームの大エースを送り出すにはあまりに低調な試合ですが、これもまた西口らしいと言えばらしい。「思い通りにいかない」、それが西口の野球人生だったような気がします。

2回頃からブルペンに入った西口は、ストレッチをしたあと、軽く肩を作って試合を見守っていました。味方の攻撃を正座して見守り、またキャッチボールをしました。投げるのか、投げてくれるのか。ライオンズの人々の期待は、試合より西口に向いていたかもしれない。多くの人がマウンドではなくブルペンに視線を送り、あのフォームを写真におさめようと群がっていました。

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ブルペンで淡々と準備をする西口。

理想的には大量リードで最後のアウトを西口に託したかった。誰もが安心して送り出せるタイミングで西口のラストピッチを迎えさせたかった。しかし、思い通りにいかない西口の星は、思いがけない舞台を用意しました。1点ビハインドの5回表、二死走者ナシ、バッター井口の場面。戦況を見守っていた西口がマウンドに送り出されたのです。ブルペンを出る際に、「俺?」と確認するまさかの展開。あぁ、そうか、西口に勝ちをつけたいのだな。意図は理解できるけれども、ココなのか!と驚きを隠せない場面でのラストマウンドです。

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最後のマウンドに西口が向かう。

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スタンドを埋める「13」のボード。

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電光掲示板には「西口」の文字。

西口は135キロを記録する真っ直ぐで、今日も跳ねました。真っ直ぐ、真っ直ぐ、真っ直ぐ、真っ直ぐでカウントツーエンドツー。そして外角低めに伝家の宝刀スライダー。最後に投じたスライダーは、肩口の高さから低めいっぱいに落ちていきました。自信を持って投じた西口と、自信を持って見送った井口。餞にはふさわしくない四球という幕切れ。おさえるでも打たれるでもないあたりが西口らしい幕切れだったかもしれません。

そりゃあ、スパーンと三振に取れるならキレイでカッコいいけれど、もうそれができないから辞めるわけでしょう。でも、打たれるのは面白くないし、まして同情されるなんて湿っぽくて敵わない。最後の瞬間まで、勝利を目指す真剣勝負の中に西口が留まり、戦うチカラを残していたこと。そして、そのチカラに陰りが訪れたこと。この四球が今が終わりだと示してくれているのだと僕は思いたい。「思い通りにいかない」男の幕引きに、お義理の空振りは似合いません。

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マウンドで跳ねる姿も見納め。

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勝ちがつく可能性もなく、誰をアウトにするでもなくマウンドを降りる苦笑いのエース。

↓もっと長く西口を見ていたかったけれど、そうならないのもまた西口らしさ!これが西口だ!


なお、この回をおさえていたところで、味方の逆転はなかった模様!

「西口を勝たせたい」程度の想いで西口が勝つなら、とっくに200勝してるわ!

思い通りにいかないからこその西口文也!

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試合部分はあまりにヒドイので割愛しますが、西武はこの色々な意味で大事な試合をスコーンと落としやがりました。水差し用の消防車か何かがウーウーやってきて西口に水をぶちまけていったかのような戦いぶりには、一部のファンがブーイングを始めたほど。どうですか、これが我が西武ライオンズがレジェンドに捧げる試合です。これが現役時代、何度も西口を苦笑いさせてきた、ライオンズの試合です!

↓さぁ、こっぴどく負けたところで引退セレモニーやるよ!みんな元気に西口選手にサヨナラを言おう!

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いや、めっちゃ空気悪いやんwwwww

どうせ負けるなら西口先発完投を見たかったわwwwww

↓脇谷選手も松葉杖で駆けつけてくれたぞ!
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お、おぅ、何かすまんの…。

大変なところ、山の上まで来させちゃって…。


↓高橋朋己選手も松葉杖で駆けつけてくれたぞ!

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お、おぅ、何かすまんの…。

大変なところ、山の上まで来させちゃって…。

って、この球団、松葉杖多いなwww

怒号の中で行なわれたホーム最終戦セレモニーで「今日は負けたけど、CSにいって、日本シリーズでここに帰ってきます(キリッ)」という挨拶を聞き流したところで、いよいよ本日のメインイベント・西口文也引退セレモニーの幕開け。バックネット前には娘さんを始めとした親族の皆さんが集まり、西武選手一同は13番の特製Tシャツを着て整列します。ロッテ側のファン、伊東監督・涌井秀章らロッテ選手も敬意を表してその場に残ります。

今年引退を表明した元西武・現中日の和田一浩。元西武・現横浜の後藤武敏。いくつもの勝ち星を消してきた元西武・現横浜の長田秀一郎。続々とかつての同僚からのメッセージが紹介されていきます。ソフトバンクで引退を控える松坂大輔も、「野球のことよりメシ食ったりゲームしたことが思い出です」と言い放った帆足和幸も、「おつとめご苦労さまでした」とヤクザの出所みたいな挨拶をした細川亨も、「え、原拓も出るの?」と笑いが起きた原拓也も、ヘンな頭の中島裕之も、片岡易之にソックリの名前が読めない巨人の選手も、西武で送り出すことはできないだろう松井稼頭央も、ともに過ごし、旅だっていった選手たちがみな西口に敬意を示し、別れを惜しみました。

西武を去った選手が多いほど、西口がこの日を西武で迎えてくれたことのありがたみが増していく。この思い出は僕たちだけのものだ。西口の喜びも西口の哀しみも、苦笑いも、すべて西武だけのものだ。幸せを独占させてくれた西口文也。本当にありがとう。本当に本当にありがとう。

↓そして西口は最後の挨拶で会心の笑いを生んだ!


西口:「ノーヒットノーラン、未遂2回」
西口:「完全試合、未遂1回」
西口:「そして、今日フォアボール」
観衆:「(大爆笑)」

いいネタできてよかったなwww

これでこそ西口!

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西口、涌井、岸が並ぶ感動的なスリーショット!

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ライオンズブルーの中で別れの手を振る西口!

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満場の「13」が見守るラストピッチ!

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紙のように舞い上がる胴上げ!

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涌井、胴上げにシレッと混ざってるwww

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マウンドにグラブを置いていくという山口百恵みたいなこっ恥ずかしい演出www

↓西口の胴上げやっと見れたよ!ずっと見たかったものがやっと見れたよ!軽々と13回西口が飛んだ!


似合わない、すごく似合わないよ!

似合わなすぎて忘れられないよ!

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ビクトリーロードを通って舞台裏へと消えていく西口の姿。ひとつの時代が終わりました。マウンドに置いたグラブは高橋光成の手に渡り、想いは引き継がれました。でも、やっぱり西口と一緒に勝ちたい。今まで消してきたぶんの勝ちを最後に払い戻してほしい。ロッテを退け、日ハムを下し、勝てる気はしない相手ですがソフバンを倒す。そして、1997年の悔しさをノシつけてヤクルトに叩き返す。

「思い通りにいかない」野球人生だからこそ、最後もまさかで送り出したい。これだけ派手にお別れ会をやったあとで、「えっ、投げるんですか?」「大事な日本シリーズで?」「ゴメン光成、一瞬グラブ返して」というまさかが見られたら、西口伝説にキレイなオチがつくのではないか。いいときも悪いときも、その通りにはおさまらないからこその西口文也なのですから。

日シリまでいったら普通に中継ぎ足りないんで、戦力としてヨロシク!