『民主主義ってなんだ?』(河出書房新社)

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 安保法案に反対するデモなどを行い注目を集めた学生団体・SEALDsの奥田愛基氏が、28日、自身のツイッターで「殺害予告」にあっていたことを明かした。

〈学校の方に、僕と家族に対する殺害予告が来ました。なんか、僕だけならまだしも、なんで家族に対してもそうなるのか...。何か意見を言うだけで、殺されたりするのは嫌なので、一応身の回りに用心して、学校行ったりしてます。被害届等、適切に対応してます〉(奥田愛基氏のツイッターより)

 朝日新聞の報道によれば、今月24日に、手書きで「奥田愛基とその家族を殺害する」という旨が記された書面の入った封筒が、奥田氏が在籍する明治学院大学へ届いたという(間違って別の大学に届いていたという情報もある)。いずれにせよ、現段階では差出人等については報じられていないが、なにより卑劣なのは、SEALDsの中心的人物として国会の中央公聴会に出席するなど、世間の耳目を集めた奥田氏自身だけでなく、その家族も標的とされたことだ。

 しかし、なぜ奥田氏の家族までもが狙われたのだろうか。たしかにこの間、ネット右翼や右派メディアはSEALDsバッシングに熱を上げていたが、じつは、ここのところ奥田氏の父親を叩く動きが表面化していた。奥田氏の父親は、ホームレス支援や貧困者支援を行なっているキリスト教の牧師で、2009年にはNHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』に出演経験もある人物だ。ネット右翼はもちろん、最近、「週刊新潮」(新潮社)10月1日号が、こんな見出しをうって奥田氏の父親のバッシング報道を行なっていたのである。

〈「SEALDs」奥田君の父は「ホームレス支援」の反天皇主義者〉

 「週刊新潮」は、奥田氏の父親が小泉純一郎首相(当時)による靖国神社参拝に反対していたことなどに触れ、「反天皇主義者なのである」と一方的に断定。さらにホームレス支援に関しても、「近所で迷惑だと思っている人は少なくありません」などという「実家近くの住民」なる人物の証言を恣意的に選択・掲載し、記事の最後では「親の背中を見て子は育つ」とまとめた。

 安保法制反対派に対して一貫して批判的で、反安保デモへのネガティブキャンペーンを行なってきた「週刊新潮」だが、奥田氏の父親まで批判の道具に使うというのは明らかに度が過ぎている。しかも、当の奥田氏本人は、作家の高橋源一郎との対談のなかで、父親に反抗するそぶりも見せているのだ。決して親と子が思想的に一体化しているわけではない。

 にもかかわらず、完全に"学生デモは父親の影響を受けた「反天皇主義者」が行っている"と言わんばかりの露骨なバッシング記事を出した「週刊新潮」は、まさしく"クズ"としか言いようがないだろう。しかも、最悪なのは、「反天皇主義者」であると一方的に断定・強調し、見出しが載った広告をうつことで、結果的に広く"右翼テロ"まで扇動していることだ。

 実際、「週刊新潮」には、これまでも右翼による襲撃を煽る記事を乱発してきた歴史がある。

 古くは1983年、新人作家の桐山襲による小説「パルチザン伝説」の内容について、天皇を誹謗中傷するものだったとするコメント(のちに桐山自身の証言によって事実無根であったことが判明)を掲載、殺人事件に発展した風流夢譚事件(61年)を引き合いに出して、右翼結社による襲撃を焚きつけた。

 また昨年も、朝日新聞報道問題に関連して、慰安婦の記事を書いた元記者・植村隆氏を叩き、結果、非常勤講師を務める北星学園大学には"爆破テロ"などをほのめかす脅迫が殺到、植村氏とその家族にも殺害予告が出される騒動となった。

 今回の奥田氏とその家族への「殺害予告」もまた、こうしたネガキャン報道の延長上にあるとみて間違いない。だが、連中はなんの痛痒も感じず、反省もしないだろう。それはネット右翼も同じだ。

 実際、奥田氏のツイッターにはさっそくネトウヨたちが詰めかけ、〈表だって政治活動をするなら、それくらいの覚悟があって当たり前だろwwwやっぱりただのヘタレ学生集団だな。しかもテレビにまで露出してるのに。そこまで想定して覚悟できてないんなら、デモもテレビ露出もするな〉などと中傷しているが、これに対する奥田氏の返答は、立派なものだった。

〈こういうマインドで殺害予告とか書いてるんだろうな。嫌だったら黙っとけって言いたいんだよね。嫌だし、黙らない。ごめん。そんな当たり前知らない。〉

 奥田氏には、こうしたネトウヨや右派メディアによる卑劣なバッシング攻撃に屈せず活動を続けていってほしい。
(編集部)