今夜、飲むならこの曲を…お酒をゆったり味わう大人の5曲
 8月31日に酒類業中央団体協議会が出した声明が、話題になりました。それは、お酒の広告に関する自主規制のこと。中でも、「ごくごく」「ぐびぐび」と美味しそうに飲み干すときの効果音を使わないとした取り決めには賛否両論。

◆「グランドキリン」CMの、あの曲は?

 依存症を克服しようとする人たちや、18歳への引き下げが検討されている成人年齢などの懸案事項を見越しての判断なのでしょうが、これからCMを作る際には、直接的な表現に頼らず、飲酒のポジティブな面を引き出す必要があるのかもしれません。

 となると、クローズアップされてくるものの一つが音楽。

 現在、キリンの新作ビール「グランドキリン」で使用されているジェイソン・ムラーズの「I’m Yours」は、その点でとてもスマートな選曲でした。ミュージシャンの持つロハス(死語)な雰囲気と、ゆったりとしたレゲエのリズムにアコースティックな響き。健康的なおおらかさと、アルコールのもたらすリラックスが、うまいこと同居している。

 特別「ぐびぐび」しなくても美味しそうですし、なんとなく身体によさそうな気さえしてきます。

⇒【YouTube】Jason Mraz - I’m Yours [Official Music Video] http://youtube.be/EkHTsc9PU2A

 というわけで、過剰な演出がなくても、「お酒っていいね」と思える音楽をいくつか考えてみたいと思います。酒類、シチュエーション別にいってみましょう。

◆ウイスキーには「If The Sea Was Whiskey」

 まずNHKの朝ドラ『マッサン』で復権の兆しが見えてきたウイスキー。過去にはジャズベースのロン・カーターや、マーラーの「大地の歌」を使って、ぜいたくに香るお酒というイメージを強調していました。しかし、いまではもう少し親しみやすさが欲しいところ。

 角ハイボールのCMで流れる「ウイスキーが、お好きでしょ」に加えて、ウィリー・ディクソンの「If The Sea Was Whiskey」など、どうでしょう。“あんまり飲み過ぎると、湖に飛び込むアヒルみたいになっちゃうよ!”と、警告の意味も込めて。

⇒【YouTube】Willie Dixon - If The Sea Was Whiskey http://youtube.be/DwIWNHwedSQ

◆スパークリングには、儚い泡のようなこの曲

 それでも、いまはスパークリング全盛。シャンパン、ワインはもちろん、日本酒、焼酎までもが弾ける。飲みやすさに加えて、どこかカラフルな楽しさがあるからでしょうか。イギリスの女性シンガー・Shuraの「2Shy」を聴いていると、その中にわき立つ儚げな泡の絵が浮かんできます。ひんやりとして、甘すぎない。のどごしのいいポップスです。

⇒【YouTube】Shura - 2Shy http://youtube.be/8gtREooYQ9w

◆『グッドフェローズ』酒盛りシーンの名曲

 そして、何よりもお酒はみんなでワイワイと飲むケースが多いはず。でも、気分は上げながら、所作には落ち着きが欲しい。そこで思い出すのが、マーチン・スコセッシ監督の傑作『グッドフェローズ』のワンシーン。

 マフィアのファミリーが、雑草の生い茂る粗雑な裏庭で、ぶっとい蚊取り線香のようなソーセージを焼きつつ、酒盛りをする。そこで流れていたのが、ムーングロウズの「Sincerely」。

 貧しさを排除しないからこそ、豊かさの複雑な香りが立ち込めてくる。そんな選曲でした。スコセッシ監督は、音楽にも匂いがあることを教えてくれる存在です。

⇒【YouTube】The Moonglows - Sincerely http://youtube.be/XsxVKN114M0

◆ふと寂しくなる瞬間に

 込み入ったときはさておき、アルコールが適切にまわれば、気分もほぐれて楽しい時間を過ごせるのは当然のこと。それでも、ふとした瞬間に素に戻ると、妙な寂しさに襲われることはないでしょうか?

 まだ周りの友だちは大声で笑ってしゃべっているのに、そこから自分だけ切り離されたように感じるとき。それもまた、お酒の裏の味わいなのかもしれません。

 昨年亡くなったジャズシンガー、ジミー・スコットが歌う「Heaven」(オリジナルはトーキング・ヘッズ)で歌われるのは、“楽しいことには違いないけど、そこでは何事も起きない”という、「天国」と名付けられたバーのこと。最高の酔い覚ましソングですね。

⇒【YouTube】Jimmy Scott - Heaven http://youtube.be/Z8SoBRt7ct4

<TEXT/音楽批評・石黒隆之>