ワールドカップバレー男子大会(9月8日〜23日)、日本は5勝6敗・勝ち点16の6位で幕を閉じた。成績としては1995年大会の7勝4敗5位以来の好成績となる。99年、2003年、2007年が3勝、2011年が2勝。実に20年ぶりに5勝以上をあげた大会だった。

 個人の成績を見ても、ベストスコアラー4位に清水邦広(パナソニック)、8位に石川祐希(中央大)、ベストスパイカー(決定率)4位が石川、8位が清水、ベストサーバー5位に柳田将洋(サントリー)、ベストセッターランキング1位が深津英臣(パナソニック)、ベストディガー2位が永野健(パナソニック)、10位に石川と、6位というチームの躍進もうなずける内容だ。

 大会が始まる直前の記者会見で、木村憲治日本バレーボール協会会長が「現在の全日本男子は、ミュンヘン五輪前の全日本男子と似ている。女子が成績でも人気でも上回り、男子は欧州遠征22連敗をして『世界のクズ』と新聞に書き立てられた。私はその頃現役だったが、その屈辱から這い上がってミュンヘンでは金を獲った。今の全日本男子も必ずや復活してくれます」と語っていたが、今大会での成績については「長い目で見守ってほしい」と控えめなコメントにとどまった。

 女子と異なり、中東やアフリカ勢も力をつけてきている男子には、明らかな格下は存在しない。今年度は「ベテランは充電期」とのことで、昨年の主将だった越川優や福澤達哉を招集せず、「NEXT4(※)」と名付けた若手4人を中心にすることが発表されていたが、そのうち石川、柳田の2人は確実に全日本の主力と言えるまで成長した。
※石川、柳田、高橋健太郎(筑波大)、山内晶大(愛知学院大)の若手4名

 石川はやはり桁外れの選手だった。11試合中5試合でチームベストスコアラーをマーク。スパイクだけでなく、サーブ、ブロックでも得点を重ねた。中盤にサーブが入らなくなって苦しむ場面もあったが、彼がすごいところは、サーブの不調が他のプレーに影響しないことだ。メンタルの弱い選手だと、サーブが入らないとスパイクなども引きずられて不調になる悪循環に陥る。石川にはそれがない。終盤ではサーブも復調し、柳田とともにエースを量産した。

 また、石川によって意識が変わった選手もいた。セッターの深津は、これまでは低く速いトスを特徴としていたが、今年度の全日本の招集があってすぐに、昨季イタリア・セリエA1のモデナに留学していた石川に、「世界に通用するトスは、もっと高く、スパイカーに選択肢を与えるトスです」と教えられ、持ち味をがらりと変えた。ミドルブロッカーへのトスも、山内晶大(愛知学院大)や出耒田敬(堺)についてはネットから離し、高いものにした。

 主将の清水もまた、石川によって変わった選手の1人だ。

「これまでは自分一人が全て決めなければならないと思っていました。でも、石川や柳田が頑張ってくれて、彼らにも任せていいんだと思えるようになりました。石川はブロックを見て打つのがすごく上手いので、見習うようにしています。サーブも、常に全力で打つのではなく、次に控える柳田や石川につなげるために、いろいろ考えて打つようになりました」

 スタメンの平均身長が2メートルを超すオーストラリア戦で、被ブロックが多かった石川が途中からブロックの横を抜いて打つようになったのは、前回記事でも指摘した。やはり高身長の選手がそろうロシア戦で、今度は打ち出しを少し早くして、相手ブロックの吸い込みを誘うなど、修正能力の高さを見せた。「高いブロックにもある程度通用するという手応えはつかめました」と語る石川は、ベストシックスにあたるセカンドベストアウトスパイカー賞を受賞した。

「(受賞は)素直にうれしいです。チームのみんなが獲らせてくれた賞で、とても感謝しています。ワールドカップは今までやったことのない強い相手と戦えて、とても楽しかった。自分は大学に戻ってプレーしますが、レベルは違うけれども意識は高く持って来年に臨みたい」と笑顔でコメント。

 南部正司監督は「この大会は間違いなく参加したすべての選手にとって貴重な経験になりました」とワールドカップを振り返った。

「今年呼ばなかったあの人やあの人は、来年は呼ぶのですか?」という質問に、「それはVリーグや大学リーグの内容を見て決めます。今大会若手が非常に成長してくれたので、それに勝るものを持っていれば呼ぶし、そうでなければ呼ばない。遅くても年明けくらいには決めたい」と答えた。今大会ではミドル以外のポジションのリザーブがほとんど機能していなかったこともあり、今後のメンバー選考は大いに注目される。

 また、南部監督も挙げていたが、強豪国との差で一番大きかったのはジャンプフローターサーブだ。ジャンプサーバーに関してはしっかりと効果を上げていたが、日本のジャンプフローター陣は強豪国には簡単にセッターに返され、逆に相手のジャンプフローターにレセプション(サーブレシーブ)をズタズタに崩された。この2点を改善すれば、強豪国にも勝機は見えてくるはずである。

 リオ五輪への切符は、来年5月に日本で開催されるアジア予選兼世界最終予選で、上位3国またはアジア最上位になれば獲得できる。

 石川の昨季のチームメイトで、一足早く五輪出場を決めたイタリア代表のマッテオ・ピアーノ選手がメッセージをくれた。

「ユウキはイタリアで一緒にやっていた時よりも、僕たちと戦った時の方がよくなっていた。そして驚くべきことに、イタリア戦よりも(9日後の)ポーランド戦の方がもっとよくなっていた。間違いなく日本を強い国に導く選手となるだろう。ユウキ、リオでまた会おう」

中西美雁●文 text by Nakanishi Mikari