西武投手陣の救世主になった驚異の高卒ルーキー・高橋光成。ここまで5勝2敗(9月25日現在)と好成績を残している要因について、本人に語ってもらった。

高橋光成"マイペースで語る"インタビュー(後編)

―― ファームでは群馬での凱旋登板もありましたが、あまり結果が良くなかったそうですね。

高橋 群馬では雨が降って、それに結果も良くないので......。なんか、もう行かないほうがいいのかなって......。

―― (笑)

高橋 でも、やっぱり「いいところを見せたい」という思いが強すぎましたね(笑)。力んだのか、わからないですけど。

―― 大学日本代表との壮行試合(6月29日/1回、1失点)でも、登板後に「力んで思うような球が投げられなかった」と言っていました。

高橋 力んじゃいますね。

―― スピードが出るようになって、「もっと出してやろう」という色気が力みにつながるのでしょうか?

高橋 そういう感じではないですね。でも、「力み」は誰もがあるもので悪いことではないと思うんです。「力み具合」がちょっと良くないときは、球には伝わらないですね。

―― 一軍で投げるようになってから、勝利投手インタビューで「思い切り投げられました」というコメントがよく出ます。「思い切り」と「力み」は違うものでしょうか?

高橋 「力み」はあっていいものだと思うんですよ。ヘンな力みじゃなくて、力みをいい方向に向けて、それが結果的にダイナミックな投げっぷりになると思うので。......といっても、マウンドでは何も考えてなくて、ただ一生懸命投げているだけなんですけど(笑)。

―― 高校時代以上にダイナミックさが増していますね。

高橋 そうですね、そこを武器にしていこうというのが、今のスタイルなので。今はそこを変えるつもりはないです。

―― 一軍デビュー戦は球界屈指の強打線・ソフトバンクを相手に敗戦投手になりました(8月2日/3回0/3、4失点)が、プロの打者はやはりすごかったですか?
高橋 やっぱりオーラといいますか......。テレビで見ていた選手と目の前で対戦しているというのは、ちょっと不思議な感じもあったんですけど、そこで投げられているということが良かったですね。あ、良かったというか......(長い沈黙の後、微笑を浮かべる)。

―― では、「この選手はすごい」と感じた打者はいますか?

高橋 全員です(笑)。

―― プロ初奪三振を李大浩選手から取りましたが、次の登板(8月16日)では外角の難しいボールをライトスタンドに放り込まれましたね。

高橋 あれはビックリしました......。衝撃的でしたね。いいコースに行ったと思ったんですけど、あれは本当にビックリしましたね。「あそこを打つか」と。ホームランの映像を見ても、そんなに甘くないコースでした。でもやっぱり、そこでバットを押し込める強さを求めていきたいです。

―― 高橋投手にとっての「理想のストレート」のイメージはあるんですか?

高橋 「わかっていてもとらえられない」というボールを目指したいですね。僕の真っすぐはどちらかというと空振りが取れるタイプではないので、わかっていてもファウルを打たせてカウントを取って追い込んで、三振や内野ゴロを取る。わかっていてもとらえられないストレートが理想です。

―― 変化球は、スライダーとフォークを投げていますね。

高橋 はい。高校の時はカーブが一応ありましたけど、それ以外は変わっていないです。

―― 高校からプロに行った投手で、ボールの質感が微妙に違って、高校時代に投げていた変化球が投げられなくなったという話を聞いたことがあります。高橋投手はどうでしたか?

高橋 そんなことがあるんですか? 僕は......なんも感じなかったですね。鈍感なだけかもわからないですけど。でも、そんぐらいが、いいと思います、何事も(笑)。

―― 繊細すぎると、いろいろと気にしすぎてしまいますからね。

高橋 気にしたら、もう止まらないので......気にしません。あの、自分さっきお腹が鳴ったんです(長く沈黙した時のこと)。それを気にしちゃいました(笑)。

―― それで黙っていたんですか!

高橋 すいません(笑)。

―― 突然黙りこくったので、何事かと思いました。ところで、決め球のフォークは高校以前からずっと投げていたんですか?

高橋 フォーク的なやつは中学の頃からあったんですけど、軟式だったので感覚が違いました。高校に入ってからコーチに握りを教えていただいて、それから今まで変えていません。自分のなかでしっくりきているので。今はまだ、変えようとは思っていません。

―― 西武のスカウト陣も、指先感覚の良さを高く評価していたようですね。変化球については自分でも自信がありましたか?

高橋 変化球......。ヘンな言い方ですけど、高校の時はわりと変化球投手というか、技巧派みたいな感じだったので。崩れることがあっても、変化球でゲームはつくれていたのかなぁと思うんです。でもやっぱり変化球もキレがまだ足りないので、そういったところも余裕があったら見つめ直して、やっていきたいとは思います。

―― まずは変化球の前にダイナミックさを追求していくということですね。

高橋 そうですね。やっぱり、真っすぐが良くないと変化球もダメなので。第一は真っすぐですね。それは大切にしていきたいです。

―― あとフォームは、プロに入ってから足の上げ方を少し変えましたよね?

高橋 フォークですか?

―― いえ、「フォーム」です。

高橋 フォーム......。

―― 足を上げる高さとか、リズムが高校時代と変わっているように見えます。

高橋 ちょっと変わったと思うんですけど......、昔の投げ方がちょっと、思い出せないです。

―― 意識しないなかで、自然と今のフォームになっている?

高橋 そうですね。今は、あのリズムがすごくいいので、あれでやっています。

―― プロ1年目で5連勝して、月間MVPも獲りました。自身としては、満足なのか、それとも......。

高橋 これで満足したら終わりなので(笑)。満足はないですし、シーズンもまだ終わってないですし、やっぱりやるべきことはたくさんあるので。満足している余裕がないです。

―― 内容的にも、ロッテ戦での完封勝利(8月23日)以外は、5回前後で降板しています。大事を取って交代している印象ですが、自分としては「もっといける」という感覚なのでしょうか。

高橋 そうですね......、でも、まだ任せられていないので。たぶん体力もないと思われているので、そういった部分を変えていけるように、トレーニングをしっかりして、もっと信頼していただけるようなピッチャーになりたいです。

―― 先発投手として長いイニングを投げるのに必要なことは、体力的なこと以外では何があるのでしょうか。
高橋 自分的には、投げながらリズムをつくろう、というのがあります。リズムをつくって、ゲームの流れを引き寄せる。そういうピッチングができたらいいなという思いも少しあります。

―― 完封したロッテ戦は、それができた?

高橋 できた......。うーん、できていたほうかなぁ......うーん、難しいです(笑)。

―― まだシーズンは終わっていませんが、西武ファンもアマチュア時代から見ているファンも、高橋投手に対して「いずれエースになってほしい」という期待があると思います。ご自身のなかで、将来こんな投手になっていきたいという理想があったら教えてください。

高橋 そうですね、大事な試合で任される、任してもらえるようなピッチャーになって、誰からも信頼してもらえるようなピッチャーになりたいです。

――いずれは、日本代表も......。

高橋 なりたいです!

 かつて、前橋育英時代の恩師、荒井直樹監督がこんなことを言っていた。

「僕の高校時代(日大藤沢)の1年後輩に山本昌(中日)がいるんですけど、ものすごくいいヤツなんです。試合後の囲み取材で取材陣から『お疲れでしょうから座ってください』と言われても、『みんなが立ってるから、いいよ』と言うらしいですよ。よく、『プロでやっていくなら"ワル"くらいがちょうどいい』と言われますけど、僕は違和感があります。『いい子で何が悪い!』と思うんですよ。高橋には、山本昌のようなプロ野球選手になってほしいですね」

 荒井監督の願い通り、ここまで真っすぐに、おおらかに育ってきている高橋光成。インタビューでは、エアコンのスイッチを自ら入れたり、空腹であることを突然カミングアウトしたり、独特なマイペースぶりを見せてくれた。チーム関係者に聞いても、「先輩たちみんなから、かわいがられていますよ」という。

 鷹揚な雰囲気が、大器をさらに大きく見せている。野球ファンの過大な期待を注いでもすべて受け止めてくれそうな大きな器は、まだ完成までに時間がかかるだろう。その過程を見守れる幸せを噛み締めながら、高橋光成の次なる登板を楽しみにしたい。

菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro