水中出産のリスクに迫る toguchi/PIXTA(ピクスタ)

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 今年8月28日、歌手のAIさんが、第1子の女の子を出産したことが報じられた。AIさんは2013年、音楽集団「カイキゲッショック」のリーダーでボーカルのHIROさんと結婚。妊娠出産のために2年間の音楽活動休止期間をとっていた。

 そして、このたび無事に妊娠、出産に至った。今回、AIさんが選択したのは「水中出産」という、いわゆる温水プールのなかで産む方法だ。あまり一般的ではないお産方法だが、すでに芸能界では、山田優さんや長谷川潤さん、道端カレンさん、三井ゆりさんなどが経験しており、ポピュラーになりつつある。

 水中出産は元々、フランスやイギリスなどのヨーロッパ諸国で提唱された。水中という出産環境を、「羊水」に見立てているのがポイントだ。ご存じのとおり、羊水は胎児を取り囲み保護している液体。その羊水に近い温度と濃度、環境を作り出すため、36.5〜37度の温水に自然塩を溶かす。その「液体」に満たされたプールの中で分娩を行う。

 生まれてくる赤ちゃんとっては、胎内から出てきた後も羊水に近い環境がクッション効果を役目を果たし、外傷などのダメージが少ないといわれている。

 この水中出産にも、いくつか種類がある。分娩第1期を浴槽内で過ごして、最終的なお産は浴槽から出て行う方法、水中で胎児を出産する方法、出産後の胎盤娩出まで水中で行う方法などだ。

なぜ水中出産が選ばれる?

 日本で水中出産が広まったのは、1980年代初頭といわれている。性と健康を考える女性専門家の会が2000年に行った調査によれば、当時の日本ではすでに1900件を超える水中出産が報告されていたという。

 母親たちがこぞって水中出産を選んだ理由には、水の浮力でお産の痛みが緩和されることや、体位が自由に取りやすいこと、お風呂に浸かっているようなリラクゼーション効果が得られることなどが挙げられる。

 出産といえば、自然分娩。分娩台で妊婦がいきみ、激しい痛みとともに出産するというのが一般的である。女性たちのなかに、できるだけそれを和らげたいと思う人が現われるのは自然なことだ。

 また、アメリカの産婦人科学会と小児科学会の報告によれば、産痛の緩和のほか、分娩の初期である第1期の時間が約30分短縮されることや、麻酔の使用が90%に減るなどのメリットもあるという。

 だが一方で、水中出産で母体や新生児にトラブルが起きていることにも注目したい。

水中出産で死亡や感染も! 知っておきたいリスク

 水中出産のトラブルは、分娩の第2期に集中して起きているという。子宮口が開き、赤ん坊が産まれてくるときだ。たとえば、お産のときに産婦の大腸菌などが自身の産道に入ったり、新生児が感染したりというリスクである。また、臍帯の断裂、新生児の水中での呼吸障害なども問題視されている。

 実際に起きた事件として、出生後、長時間水中に留められて新生児が死亡したケース、新生児敗血症(感染症)、新生児の肺出血の例があるという。

 このようなリスクのある水中出産に対して、性と健康を考える女性専門家の会は、次のような対策を挙げている。ローリスクの産婦であることの確認や、浴槽と浴槽周辺の洗浄・消毒、分娩中・後の母子の注意深い観察、症例の研究や個別のケースレポートを積み重ねて、安全性の検証を行うことなどだ。

 妊婦が出産方法を選択するのは自由意思であり、尊重されるべきだ。しかし、リスクとベネフィットの双方についての情報を得ることは、大切な判断材料となる。
(文=編集部)