今、多くの日本企業で「新たな働き方」を模索する動きが広がっている。果たして、これからのビジネスマンの働き方はどうあるべきか? 一人一人の「稼ぐ力」をいかに引き出していくのか? 最近のトピックをもとに、経営コンサルタントの大前研一氏が独自の視点から指南する。

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 リクルートホールディングスとグループ会社の一部は、理由や日数に制限のない在宅勤務(リモートワーク)制度を試験的に導入し、効果が確認できれば10月から対象を全社員に拡大することを目指している。子育てや介護といった理由がなくても、無制限に在宅勤務ができる制度は珍しく、在宅勤務を選んだ社員は原則的に自宅など自分の好きな場所で仕事をすることができ、1日1回、仕事の進捗状況や懸案事項を上司に報告すればよいという。

 また、カジュアル衣料店「ユニクロ」などを展開するファーストリテイリングも、この10月から正社員の一部を対象に「週休3日制」を導入する。まず対象となるのは国内の「ユニクロ」約840店で働く転勤のない「地域正社員」約1万人で、原則として店が混雑する土日祝日が出勤日となる。週休2日制なら1日8時間の勤務時間が10時間に延びるが、1週間あたりの勤務時間(40時間)と給与水準は変わらない仕組みである。

 この件について、私はファーストリテイリング会長兼社長の柳井正さんに直接確認していないので、その真意は想像するしかないが、一時期、ユニクロが離職率の高さや労働時間の長さなどから「ブラック企業」と批判されたことに対する過剰反応のようにも感じる。

 さらに、社員の側からすると、週休2日が3日に増えることにどういう意味があるのか? 学校に通う子供がいたり、夫婦共稼ぎでパートナーの休みが土日祝日だったりすれば、平日に3日休んでも、家族では活用しづらい。また、ユニクロは原則として正社員の副業・兼業やアルバイトを禁止している。それで週3日も休みになったら、大半の人は暇を持て余してしまうのではないだろうか。

 マッキンゼーの例を挙げると、自分が会社で働いている時間の15%を社会貢献に割り振ることができるシステムになっていた。具体的には、無料のボランティアで地元のバレエ団のコンサルティングをしたり、病院のコンサルティングをしたりといった具合である。そういうコミュニティ活動に使った時間が、休みではなく出勤した時間として認められるのだ。

 マッキンゼーの社員は頭脳集団だから、その能力を所属するコミュニティで有効活用することによって企業イメージを高めることができるし、社員の人脈づくりやスキルの向上にも役立つわけだ。ファーストリテイリングも優秀な社員が多いのだから、単に休みを1日増やすのではなく、マッキンゼーのような仕組みを作って、社員の社会貢献を促すのも一手だと思う。

 あるいは、3日の休みのうちの1日は、自己啓発や自己研鑽のために図書館に行って勉強したり、ライバル企業や他業種の店舗を視察したりして顧客動向に関する観察レポートを書くなど、自分の仕事やアパレル業界に対する知識と理解を深めるために使うようにしたほうが、社員のためにも会社のためにもなると思う。

 ただし、最大のポイントは、あくまでも新しい勤務形態が顧客のためになるかどうか、である。リクルートやファーストリテイリングなどの有名企業がこうした新しい勤務形態を導入するのはよいことだが、中途半端で終わっては元も子もない。両社の取り組みが「日本人の働き方」を本質的に見直す起爆剤となることを期待したい。

※週刊ポスト2015年10月9日号