GI戦線に向けて、白熱した前哨戦が行なわれている秋競馬。これまでに実績を積み重ねてきた有力各馬が、本番に向けて次々に始動し始めている。そんな中、いまだ世間に知れ渡っていない"隠れたスター候補"もいる。そこで、日々現場取材を重ねる競馬記者5人に、この秋オススメの"イチオシ馬"を教えてもらった。

■野口 誠氏(勝馬)推奨
サンライズセンス(牡3歳/父グラスワンダー)
戦績:7戦2勝、2着3回、着外2回

「500万条件のあずさ賞(4月26日/京都・芝2400m)を勝ったあと、そのまま続戦してトライアルを使えば、日本ダービー(5月31日/東京・芝2400m)に出走できるチャンスがあったと思います。しかしそこで無理をせず、秋に備えてしっかりと休ませました。その点に、好印象を受けました。

 また、そのあずさ賞は、今年の京都・芝2400mで行なわれたレース(11競走)の中で、最速タイムを記録。とてもハイレベルでした。しかも、サンライズセンスは自ら動いていって、後半4ハロン(800m)ではすべてのハロンを11秒台でまとめています。ポテンシャルが高い証拠です。

 休み明けの前走、1000万条件の信濃川特別(8月23日/新潟・芝2000m)では5着に敗れましたが、それはスタートでつまずいて、リズムに乗れなかったことが原因。まったくの参考外です。次走の予定は、神戸新聞杯(9月27日/阪神・芝2400m)。その結果次第では、本番の菊花賞(10月25日/京都・芝3000m)でも面白い存在になるはずです」

■若原隆宏氏(中日新聞)推奨
エイシンヒカリ(牡4歳/父ディープインパクト)
戦績:8戦7勝、着外1回

「前走のエプソムカップ(6月14日/東京・芝1800m)こそ、後続を1馬身ほど離しての"行儀のいい"逃げ方に見えましたが、よどみのないハイラップがそういった形を実現させただけ。自らどんどん行ってしまう気性が、大幅に改善されたわけではありません。

 とはいえ、行けるだけ行ってスピードで押し切るレースぶりは、サラブレッドの(気性的な要因を除いた)フィジカルの限界がどこにあるのか、それを示してくれているような気がします。その"天井"がどこにあるのか、エイシンヒカリの走りを通して見てみたいですね。

 自分が『獣医師となって厩舎社会に飛び込もう』という意欲に燃えていた大学1年生のとき、快速を飛ばして連勝街道(重賞5連勝)をばく進していたのが、サイレンススズカ(1998年宝塚記念優勝)でした。エイシンヒカリへの期待は、あの"続き"が見たい、という個人的な感傷もいくばくかあります」

■吉田順一氏(馬三郎)推奨
ダノンリバティ(牡3歳/父キングカメハメハ)
戦績:10戦2勝、2着3回、着外5回

「春まではクラシックを意識したローテーションを歩みましたが、デビュー9戦目でダート路線に変更。その初戦となるGIIIレパードS(8月9日/新潟・ダート1800m)で、今年の3歳世代でエース級のクロスクリーガー(牡3歳)にコンマ1秒差の2着と好走しました。早め、早めに押し上げていきながら、最後まで伸び切った内容は、勝ち馬を上回るものでした。

 さらに、次戦のBSN賞(8月29日/新潟・ダート1800m)では、重賞常連の古馬勢を一蹴。着差以上の完勝劇を披露し、改めて能力の高さを証明しました。

 父は、万能型のキングカメハメハ。母は、サカラート、ヴァーミリアン、キングスエンブレムら、ダート重賞馬を兄弟に持つスカーレットベル。その血統背景からしても、ダート戦線で大きな仕事をやってのけるだけの"器"だと思います」

■豊島俊介氏(デイリースポーツ)推奨
マッサビエル(牡3歳/父ハービンジャー)
戦績:4戦3勝、2着1回

「2歳の12月にデビューして以来、2カ月に1走という、ゆったりとしたローテーションを組んでいるマッサビエル。4戦目の1000万条件、芦ノ湖特別(6月21日/東京・芝2400m)では、初の古馬との対戦ながら、2着以下に2馬身半差をつけて圧勝しました。

 祖母はGI5勝のメジロドーベル、母の父がサンデーサイレンスで、父がハービンジャーという血統のイメージどおり、とにかくスケール感のある馬。切れ味も一級品です。神戸新聞杯で同世代の重賞ウイナーと対決しますが、あっさりと突破しそうなムードがあります。そのまま本番の菊花賞でも、最有力候補になると言っても過言ではないでしょう」

■辻 三蔵氏(レーシングライター)推奨
メジャーエンブレム(牝2歳/父ダイワメジャー)
戦績:2戦2勝

「デビュー戦から無傷の2連勝中。抜群のレースセンスに加えて、鞍上の意のままに動く操作性の高さには目を見張るものがあります。しかも、瞬発力に秀でており、一瞬にして相手を抜き去る末脚まで秘めています。

 前走の500万条件、アスター賞(9月12日/中山・芝1600m)では、スローペースと見るや、3コーナーで2番手に進出。メンバー中、最速の上がり(34秒5)を繰り出して楽々と抜け出しました。レース後に話を聞いたところ、手綱を取ったルメール騎手も『追ってからの瞬発力が素晴らしい。将来が楽しみな馬だね』と絶賛していました。

 この夏は"五輪のエンブレム問題"が世間を賑わせましたが、秋競馬でも"エンブレム"が話題の中心になるのではないでしょうか(笑)。今年の2歳女王に君臨する素質を秘め、そうなるにふさわしい存在だと思います」

土屋真光●構成 text by Tsuchiya Masamitsu