【福田正博フォーメーション進化論】

 ほとんどの国の代表チームの活動は、時間が限られている。そのため、チーム全体に戦術を浸透させ、コンビネーションを高めていくのは簡単なことではない。

 ましてや、現在の日本代表のように海外組が先発の大半を占めていると、その傾向はさらに強くなる。

 そうした状況にあって、代表をまとまりのあるチームとして機能させるために重要なのは、"選手が所属クラブで見せているプレーを代表でも発揮しやすくすること"だろう。

 選手にとって、所属クラブで求められている役割と代表での役割が似たものならば、違和感なくプレーに集中することができる。また、選手同士が互いの特長を理解することの助けになるというメリットもある。

 一方、起用されるポジションが同じでも、求められる役割が異なっていたら、その選手の武器や特長は発揮されにくくなる。それを強く感じさせられたのが、W杯2次予選での岡崎慎司のプレーを見たときだった。

 9月3日と8日に行なわれたW杯アジア2次予選のカンボジア戦、アフガニスタン戦の2試合での岡崎は、その持ち味をあまり発揮することができていなかった。

 今シーズンからプレミアリーグのレスター・シティに移籍した岡崎は、欧州から日本、そしてイランへの長距離移動の影響で、コンディションが十分ではなかった。だが、それを差し引いても、"岡崎らしさ"が見られず、窮屈そうにプレーしている印象を受けた。

 その理由はハリルホジッチ監督が岡崎に求めるストライカーとしての仕事が、クラブで評価されている岡崎の特長、得意とするプレーと異なっていることもあるように思う。

 岡崎がFWとして評価されている最大のポイントは、その献身性にある。前線からのハードワークでチームの「守備のスイッチ」を入れ、味方がボールを奪えば空いているスペースへ全力で走り込む。岡崎が献身的に動くことで前線にスペースが生まれ、味方の中盤の選手がゴール前に飛び込んで得点を決めるチャンスもできる。

 そして、昨年まで所属したマインツも今季のレスターも、リーグ内でのヒエラルキーは中堅以下で、相手に押し込まれる試合展開が多いため、岡崎は自らの持ち味を発揮しやすい状況にあるといえる。

 それに対して、ハリルホジッチ監督が指揮する日本代表での岡崎は、ゴール前から動くことがほとんどない。W杯2次予選では格下の対戦相手が守備を固めて自陣にベタ引きしているので、岡崎が守備をする必要がなかったということもあるが、同時に、岡崎がサイドに流れてプレーする場面もほとんど見られなかった。あるいは、監督から「ペナルティエリアの幅で動け」という指示が出ていたのかもしれない。

 たしかに、多くのストライカーにとって守備をせずに攻撃に専念できるのはありがたいことだ。だが岡崎の場合、スペースがないなかでボールをおさめるプレーはあまり得意なことではなく、クラブで経験していることでもない。そうした不慣れな役割を日本代表で求められ、その仕事に追われてリズムに乗れず、持ち味を十分に発揮できていないように見えた。

 そのため、日本が「格上」となるW杯アジア2次予選では、ゴール前中央で構えるワントップの役割を、ポストプレーや高さが武器の大迫勇也や豊田陽平など、他のFWに求めてもいいだろう。

 その場合、岡崎をベンチに置くという選択肢もあるが、アフガニスタン戦の2点目のように、常にシュートのこぼれ球を狙ってゴールを決める岡崎の決定力はやはり日本に欠かせないため、先発で起用すべきだ。

 ザッケローニ監督時代のように4−2−3−1の「3」の右サイドに岡崎を置けば、攻撃時はボールを受ける前から動けるのでスペースが作れるし、リズムに乗ってゴール前にも飛び込んでいける。岡崎の持ち味がより発揮されるポジションに据えることで、結果的に日本代表の攻撃に厚みが生まれることになる。

 岡崎を1トップとして起用するのであれば、どういう試合展開なら力を発揮しやすいのかを考え、その特長がより生きるポジションや、チームメイトとの相性を探っていくことが、今後さらに重要になるだろう。

 もちろん、これは岡崎に限ったことではない。選手の能力は一朝一夕で変わるものではないのだから、ハリルホジッチ監督には、選手それぞれの個性と特長を把握して彼らが生きるポジションを見出してもらい、日本代表がさらに強固なチームになっていくことを望みたい。

福田正博●解説 analysis by Fukuda Masahiro