◆オフィシャル誌編集長のミラン便り2015〜2016(5)

 シーズン前半のこの時期は、本田圭佑にとって難しいものとなりつつある。特にサポーターとの関係はとても微妙だ。土曜日の夜(9月19日)に行なわれたサンシーロでのパレルモ戦で、本田は79分に交代、彼の代わりにはポーリが入った。

 本田がピッチを去る際のミラニスタの反応は、大きく二つに割れていた。多くの拍手も聞こえたが、同時に多くのブーイングも浴びせられたのだ。ブーイングをした方のサポーターは、本田のことを、今のミハイロビッチ・ミランのフォーメーションの中で一番危うい箇所、アキレスの踵(かかと)として見ている。ミハイロビッチは彼をバッカ、ルイス・アドリアーノの2トップの後ろに配置しているが、本田はいまだ彼らしいプレーができず、ミランの攻撃に火をつけることができない。

 試合前の記者会見で、ミハイロビッチは本田の現状をこのように語っていた。

「本田は真のプロフェッショナルで、ボールを持っていない時は自分を犠牲にしたプレーをしている。メンタル面で殻を破る必要があるが、いいものは持っているのだ」

 先週もこのコラムで書いたように、ミハイロビッチは本田の持つ資質を高く評価している。日々の練習で見せる努力とプロ選手らしさ、そして常に教えを守るところだ。これらはミハイロビッチがミランの全ての選手に望むものであり、これまで指導してきたチームの選手にも望んできたものである。

 また戦術面においては、彼の言う「オフ・ザ・ボールの時に自分を犠牲にできる」という言葉はとても重要な意味を持っていると思う。ミハイロビッチの指揮するチームはディフェンスラインが高い。ボールを取り戻した時に、選手の一人がその前にいれば、リスタートはもっと簡単にできるようになる。こうしたミハイロビッチの理念はパレルモ戦でも、よく見られた。

 しかし、守勢に回るとゴールを守るために何度も下がらなければならず、本田も敵と対峙するために後退。結果的にオフェンスのシーンではあまり光ることができなかったのだ。

 ミハイロビッチは周囲の空気や非難の声には左右されない、自分の信念を持った監督だ。

 さて、チーム全体に目を移すと、パレルモを3−2で破ったことはミランが再出発するための重要な起点となった。結果は黒星だったが、良い兆候を感じさせたダービーを最確認する形となったのだ。パレルモ戦のミランは非常によくまとまっていて、ミランらしいプレーも続けることができた。

 アタッカーコンビはこの試合でも優秀であることを証明し、特にカルロス・バッカは2ゴールを決め、多くのサポーターにかつてのシェフチェンコを思い出させた。いや、誰かと比較しなくともバッカは才能ある選手である。ルイス・アドリアーノは、絶えず動き続けることでパレルモのDFを撹乱し、バッカの働きをサポートした。中盤ではモントリーヴォ、ボナベントゥーラ、そしてクツカはミハイロビッチの望むようなプレーを支えた。

 ミランの一番の問題はやはり守備だ。未だにバランスと持続力を保つことができていない。5節まででミランはすでに8失点をしている。上位を目指すチームにとっては多すぎる数字だろう。

 火曜日(9月22日)の夜、ミランはウディネーゼと対戦した(セリエA第5節)。結果はまたしても3−2の勝利。本田は先発し、64分にやはりポーリと交代している。

 次の日曜日、3連勝がかかるジェノア戦はミランが前進する大きなチャンスだ。ミハイロビッチが思い描いているミランが、ミラニスタが望んでいるミランがここでついに現実となって現れてくれるといいのだが......。

ステーファノ・メレガリ(『Forza Milan!』編集長)●文 text by Stefano Melegari
利根川 晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko