198センチの長身から投げ下ろすストレートには威力があった。9月10日の阪神対巨人の伝統の一戦。甲子園球場の球速表示は150キロを超えていた。打者の内角を鋭くついていたかと思えば、タイミングを外すカーブ、スライダーでも三振が取れる。

 巨人の外国人左腕、アーロン・ポレダは、いつしか「虎キラー」と呼ばれるようになっていた。今季ここまで8勝のうち5勝が阪神戦で挙げたものだ。1シーズンに阪神から5勝を挙げた外国人投手は巨人では初めて。だが、ポレダ本人には阪神戦が得意という意識はない。

「阪神打線は強力だからね。毎試合、簡単に抑えられると思っていないよ。マートン、福留(孝介)、ゴメス。彼らは毎回、僕を攻略しようとアプローチの仕方を変えてくる。変化球を振ってこなかったり、低めの球を捨ててきたり。最近は投げていて、研究してきているなと感じているよ」

 それでも「アグレッシブな投球スタイルは貫いていく」と、150キロを超えるストレートを打者の胸元に投げ込んでいく。長身から投げ下ろすため角度があり、球速表示以上に打者は速く感じるという。持って生まれた体格を生かし、異国の地・日本で才能を発揮している。

 ポレダはチームメイトからは「ビッグ」の愛称で呼ばれ、親しまれている。そしてポレダ自身もこのニックネームを気に入っている。なぜなら、ポレダが幼少の時から憧れ、「ビッグ・ユニット」と呼ばれていたメジャー通算303勝を挙げた208センチの大投手、ランディ・ジョンソンに少し近づけた気分になるからだ。

「僕はランディ・ジョンソンと同じ長身の左投手。だから、彼の投球スタイルを真似するようになったんだ。僕にとってランディ・ジョンソンはスターであり、ヒーロー。球場にも観戦に行ったことがあるよ」

 その時、ポレダ少年は打者のバットのへし折り、三振の山を築いていくランディ・ジョンソンの姿に魅了された。そんな大投手の投球術を研究し、今のポレダのピッチングスタイルがあるのだ。

 実はポレダとジョンソンは同じ街の生まれ。アメリカ・カリフォルニア州サンフランシスコ近郊にあるウォールナット・クリークという街でポレダもジョンソンも生まれた。ポレダが「街で会ったことはないけど、彼が生まれ育った家や、彼が小さい頃に遊んでいた広場は行ったことがあるよ」と言うように、偉大な投手の背中を追うのは自然の流れだった。

 昨年まで、テキサス・レンジャーズなどメジャーで投げていたポレダだが、ジョンソンとは面識がなかった。だが今年、日本でついに憧れのスターとの対面が実現した。

 2010年に引退し、現在52歳のジョンソンはアリゾナ・ダイヤモンドバックスの球団社長の特別補佐を務めている。そのジョンソンが先月、日本野球の視察と、東日本大震災で被災した宮城県石巻市での野球教室に参加するために来日したのだ。さらに、巨人戦の前に始球式を行なうため、東京ドームにも姿を見せた。球団の厚意で、外国人投手のポレダ、マイコラス、マシソンらはジョンソンと話をする機会が設けられた。

 ポレダはジョンソンとの初対面に感激。こんなチャンスはないとばかりに技術的な質問を投げかけ、最初は緊張しながらの応答だったが、「投球時の体の使い方など、アドバイスをもらった」という。そのほかにも、日本の野球や生活のことなど、至福の時はあっという間に過ぎた。

「僕とは比べものにならないぐらい実績があるけど、ずっと手本にしていた投手。フレンドリーに話をさせてもらったよ」

 興奮はしばらく冷めなかった。

 ポレダは、メジャー時代は先発に定着できず、ほとんどがリリーフ登板だった。日本に来てから再び先発でやっているが、走者を出すと揺さぶられ、制球を乱すこともある。それでも日本の野球に順応しようと少しずつ克服してきた。

「巨人に来て、今こうして先発をさせてもらい、調整を任せてもらっていることが嬉しいんだ」

 ジョンソンにはまだ遠く及ばないが、ジョンソンを彷彿(ほうふつ)させるダイナミックな投球は、多くの日本のファンの目に強く焼きついているに違いない。ポレダのストレートの威力と存在価値は日々高まっている。

高松正人●文 text by Takamatsu Masato