初戦のモンゴル戦で5得点を奪った久保。香港戦では徹底マークに遭い、無得点に終わったもののチームへの貢献度は高かった。(C) Getty Images

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 9月16日から20日にかけてモンゴルの首都ウランバートルを舞台にU-16アジア選手権予選が開催され、グループKのU-15日本代表は2連勝で来年インドにて開催されるU-16アジア選手権の本選(U-17ワールドカップ・アジア最終予選を兼ねる)への出場切符を勝ち取った。
 
 この予選に際して、森山佳郎監督はこんな言葉を控え選手たちに贈っている。
「お前ら、喜べ。U-15日本代表のレギュラーだった選手で今のA代表に残ったような選手はほとんどいないぞ! 控え選手のほうに大きな可能性があるんだ!」
 
 これはもちろん、控え選手に発破をかける言葉なのだが、同時にレギュラー陣に対して「安穏としているようでは未来がないぞ」と警鐘を鳴らす意図もある。
 
「日本サッカーは上に立った選手が下にいる選手たちに抜かれていく傾向が強いけれど、上に立った奴がもっともっと自分を磨く意識を強く持っていくようになれば、違う流れもあるんじゃないかと思っている」
 
 かつて広島ユースを驚異の戦闘集団に仕立て上げた熱血指揮官は、今年初頭のチーム結成からエリート選手たちに対し、あえて厳しい言葉を繰り返し投げかけ続けてきた。そうした姿勢は予選に入ってもなお変化はなかった。
 
「圧倒して勝つ」ことを大きな目的に掲げたモンゴルでの2試合、日本は地元モンゴルに17-0の記録的スコアで大勝を収めると、続いて香港にも7-0と完勝。2試合を通じて相手に許したシュートは1本もないという事実が示すように、非常に引き締まったパフォーマンスを見せてくれた。
 
 力の差がある相手を向こうに回すと、どうしても緩みが出るものだが、指揮官の心理的なアプローチがそうした甘えを出させなかったとも言えるだろう。特にほとんど攻められることのないなかで、GKを含めた守備陣が高い集中力とボールに関わる意識を保ち続けていたのは印象的だった。
「この1年で積み上げてきたものを出す」と主将の菅原由勢(名古屋U15)が宣言していたように、球際の激しさや切り替えのスピードという、こだわってきた部分を出しながら「お前が持っている武器を出せ」と強調してきた指揮官の声に応えて、それぞれが持ち味を発揮した。
 
 MF平川怜(FC東京U-15むさし)が沈着なパスワークと豪快なミドルシュートで魅せれば、ボランチの相方であるMF福岡慎平(京都U-15)はダイナミックな攻撃参加でペナルティエリア内に再三侵入。サイドでは右MF鈴木冬一(C大阪U-15)が果敢な仕掛けと高いシュート意識を発揮し、左MFのポジションを争う関係にある(そして本来はストライカーである)棚橋尭士(横浜ジュニアユース)と中村敬斗(三菱養和SC巣鴨)は果敢にゴールへ向かい続けてともに結果も残した。
 
 前線ではFW宮代大聖(川崎U-15)が献身的なプレーを継続。初戦でハットトリックした一方で、第2戦では決定機を逸して無得点だったが、貢献度は非常に高かった。また相棒のFW久保建英(FC東京U-15むさし)はモンゴルとの第1戦で5得点を叩き出しながら、香港戦でハードなマークにあって大苦戦。ただ、宮代と久保のダブルエースが揃って苦しんだ香港戦でも完勝を収めたことが、逆説的にチームとしての層の厚さ、クオリティの高さを証明したとも言えるだろう。
 
 当然ながらこの予選はまだ通過点。本番はあくまで来年秋のアジア最終予選だ。2000年生まれ以降の選手たちで構成された新世代のイレブンがどこまで伸びていってくれるかは楽しみであることもまた確かだ。来年から中学3年生、高校1年生になって環境が変わるなかで新たにブレイクしてくる選手もきっといるはずで、このチームにはまだまだ伸びしろが残っている。
 
取材・文:川端暁彦