バルセロナはアウェイでセルタと対戦して1-4と完敗【写真:Getty Images】

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勇気を持って前に出たセルタ

 リーガエスパニョーラ第5節、バルセロナはアウェイでセルタと対戦して1-4と完敗を喫した。この一戦でセルタが見せたのは、引いた姿勢ではなく「点を取るための前線からの守備」。その姿には番狂わせに必要な要素が詰まっていた。

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 南アフリカを破ったエディジャパン、ジェロム・レ・バンナを破った澤屋敷純一、スペインを破った関塚ジャパン…番狂わせが起こるとき、それは決して偶然ではなく勝利を手にした弱者に讃えられるべきゲームプランがある。

 リーガエスパニョーラ第5節、セルタはホームにバルセロナを迎えた。昨季バルサと1勝1敗の結果で8位フィニッシュし、今季はここまで3勝1分けと好スタートを切っているセルタを弱者というのは間違いだろう。それでも、たとえホームだとしてもやはり欧州王者に対してはアンダードッグな存在である。

『合言葉は勇気』。この一戦を観ていると、かつて放送された連続ドラマのタイトルを思い出した。

 結果は4-1。通常、バルセロナのような破壊力のあるチームを相手にすると、どうしても引いてゴール前を固めることを優先してしまう。もちろん、それは間違いではなく、じっくり耐えてわずかなチャンスを逃さなければ勝利のチャンスはある。

 しかし、それは0-0狙いで1点取れればラッキー。ある程度の偶然にも期待しなければならない。この日、セルタが見せた“対バルサ戦略”は失点しないための守備ではなく、点を取るための守備、攻撃的な守備だった。

 バルセロナのDFラインがボールを持つと、ノリート、アスパス、ヴァス、オレジャナの前線4人は腰を落として構える。そしてボールが動けばすぐさまプレスを仕掛けた。

格好の餌食となったバルサのビルドアップ

 バルセロナはマスチェラーノとバルトラがCBを組んだ前節では、積極的なロングパスで前線へボールを送り込む形で敵陣でのプレー回数を増やしていた。一方でピケが復帰してマスチェラーノとのレギュラーコンビが復活した今回は通常通りのショートパスで組み立てるスタイルに戻した。

 パスの内訳をみると、前節はロングパスが57本だったのに対して、今回はわずか11本。前線から積極的なプレスを仕掛けるセルタに対して、ショートパスでビルドアップを試みるバルサのDFラインは格好の餌食となっていた。

 象徴的なのは2点目のシーン。バックパスを受けたピケがノリートにボールを奪われると、最後はアスパスにネットを揺らされた。セルタを率いるエドゥアルド・ベリッソ監督にとっては、まさに狙い通り。胸のすくような得点だったに違いない。

 そして、これ以前にピケが出場していたスーパーカップもで失点を重ねていたのは偶然ではないだろう。

 試合のスタッツを見ても、ここまで敗れ去ったチームとは大きな違いがある。

 支配率43.6%(セルタ):56.4%(バルサ)、パス本数283本:378本、チャンスメイク数16回:16回、シュート本数18本:18本。

 多くの場合、バルサは70%前後の支配率を記録し、パスは600〜700本を繰り出している。今回の56.4%に378本という数字はバルサにとって極端に低い数字ともいえる。

 さらにボールを持ってプレーした位置を示す「アクション・エリア」を見ると、敵陣・自陣ともに50%。ファイナルサードでは23.08%だった。これも4-1で勝利した前節では敵陣で64.75%、ファイナルサードでは35.48%を記録している。

ビルバオがヒントを示し、セルタが答えたバルサ戦略

 選手個人で最も顕著だったのは、右SBのダニエウ・アウベス。前節を含めて、ほとんどの試合で70%以上を敵陣でプレーし、100回以上のボールタッチを記録するが、この試合では敵陣で40.74%に終わり、ボールタッチもわずか66回。ビルドアップに苦戦するCBからボールが入ってこなかったことが要因だろう。

 逆にセルタのアクション・エリアを見ると、敵陣では43.11%ながらファイナルサードでは23.93%。わずかながらバルセロナを上回る数字を記録している。

 このデータからも、セルタの前線がバルサのDFラインにとっていかに危険な存在だったかがわかる。

 このCBの「ショートパスによるビルドアップ」というゲームプランを選択したバルサは、前線からの効果的な守備を前にするとあまりに脆い。最終ラインから前線までチーム全体が機能不全に陥ってしまう。ネイマールの1点こそあったものの、メッシ、スアレスとの3トップは完全に怖さを失っていた。

 そして、この戦い方をすでに実践していたチームがある。開幕戦で対戦したアスレチック・ビルバオだ。ビルバオも積極的な前線からのプレスでバルサのビルドアップを妨害。その結果、バルサは自陣に67.78%もとどめられ、メッシは力を封じ込められた。

 結果こそスアレスの得点によって1-0でバルサが勝利したが、ビルバオが“対バルサ戦略”のヒントを示した一戦となった。そして今回、セルタがその答えを出した。

攻撃と守備、そしてメンタルが1つとなった勝利

 とはいえ、前線の選手が腰を落として守備に集中力を高めるのは気力も体力も大きく消耗する。それを前節から中2日で完璧にやり遂げたセルタの面々は何よりも讃えられるべきだろう。

 さらに、もちろんバルサも90分全てで押さえ込まれていたわけではない。後半の立ち上がりにはメッシが何度かゴールに迫るシーンもあった。その中でもGKセルヒオ・アルバレスを中心にセルタの守備陣は得点を無駄にしないため奮闘していた。

 データサイト『Who Scored.com』のレーティングは、セルヒオ・アルバレスに8.1点という高い評価を与えている。(もちろん最高評価は2ゴールを決めたイアゴ・アスパスの9.47点)

 セルタはホームのサポーターの前で、チーム全員が最高のパフォーマンスで王者を破ったといえるだろう。

この日、セルタが見せたものは「点を取るための守備」、「相手を封じるための攻撃」、「奪った点を守るための守備」、そしてそれらを実行するための「勇気」。

 これら全てが1つにまとまったとき、番狂わせは起こるものだ。

text by 海老沢純一