東京五輪にどれほど外国から観光客がやってくるのか定かではないが、日本を宣伝するにはまたとない機会だ。初めて訪れる人も多いはず。彼らにリピーターになってもらうためには、これから5年掛けて、いま抱えている問題を調査し、一つ一つ潰していくことだと思う。それこそがCool Japanの真髄だ。

 ロンドン五輪がそうだったように、東京五輪のコンセプトも観光なのだと思う。それ以外には見あたらない。表参道を歩いている人の2人に1人は外国人という現実を見せられると、その線で押していくべきだと強く思う。

 宣伝すべき場所はどこか。売りはどこか。大抵の外国人は、電車がダイア通りに動くことに何より感動する。だが、日本人はそれを褒められても全然嬉しくない。当たり前だと思っているからだ。言い換えれば、外国の事情を日本人はあまりよく知らない。

 灯台もと暗しとはこのことだが、それは国立競技場の魅力についても言えると思う。国立競技場。いまは更地になっているが、僕は日本人が思っている以上に、優れたスタジアムだと思っている。世界ナンバーワンと言いたくなるほど。

 都心のしかもド真ん中にあるスタジアムは世界でも滅多にない。交通アクセスも抜群。それでいて厳かさも兼ね備える。神宮の杜、明治神宮外苑の一角にあるスタジアム。それこそが、一番のセールスポイントだ。問題は古くなっていたことだけ。大規模改修で済む問題だった。日本スポーツ振興センターは、それをなんの説明もなく全部壊し更地にした。

 新スタジアムを建てるなら、コンセプトは見えている。場所的な特徴、つまり厳かさの演出だ。スタジアムが変に主張する必要は全くない。背後にせまる杜はもっと深々とさせるべきと言いたいぐらいだが、一時は、あのザハ・ハディド案で決まりそうになったわけだ。このことも、日本人が日本のよさに気付けていない証拠だと思う。

 日本人には当たり前でも、外国人には驚くべきもの。そのよい点、悪い点について、整理できていないのがいまの日本。客観的に見る目を持たないと、外国人が喜ぶ、観光の発展に寄与する五輪にはならないと思う。