ペナントレースも佳境を迎えたが、セ・リーグはさらに混戦を極め、4強がひしめき合っている。9月14日時点で、首位ヤクルトと3位巨人までのゲーム差は0.5。猛追撃を始め、首位まで3ゲーム差の4位広島まで優勝の可能性がある。
 「巨人が前半戦のうちに混戦を抜けられなかった理由というか、いまも首位にあと一歩及ばないのは中継ぎ陣の崩壊が原因です。山口、マシソンの2人が揃って不振。クローザーの澤村も防御率こそ1点台だが、いつも走者を得点圏に背負っての苦しい救援が続いています。状況を一変させるだけの戦力も残っていません」(プロ野球解説者)

 そんな、沈滞しがちなベンチのムードを一変させる好機は一度だけあった。しかし、原監督はあえてそのカードを切らなかったのだ。
 9月6日、対DeNAの試合前、テレビ局の取材クルーがいつもと違った動きを見せた。先日、プロ初アーチを放った高卒ルーキーの岡本和真(19)にカメラを向け続けたのだ。それも1社や2社ではなかった。理由は簡単だ。「今日、岡本がプロ初スタメンを果たすのではないか」との声が各方面から出ていたのである。テレビ各局は晴れ舞台に臨む高卒ルーキーの様子を捉えようとしていたのだ。しかし、試合前に交換されたスターティングラインアップ表に岡本の名前はなく、しかも試合は雨天中止になってしまった。
 「巨人の高卒ルーキーがプロ初安打を本塁打で記録したのは1966年以来、49年ぶり。6日のスポーツ紙の巨人コーナーの反響も大きかった」(ベテラン記者)

 話題性抜群だった生え抜きのスター候補のスタメンデビューを遅らせたのは、勝ちたかったの一点に尽きる。同日にスタメンで三塁手として起用しようとしたのは、村田修一(34)だった。原監督は将来性と話題性の高卒ルーキーよりも、不振でも実績のあるベテランを選んだのである。
 「いま追撃の手を緩めてしまえば、このままシーズンが終わってしまう。岡本をスタメンで使って結果が出ればチーム全体は盛り上がるが、守備難の岡本を使うのはあまりにもリスクがありすぎる。岡本が大事なところで失策したら、イップスになって将来性まで潰してしまうかもしれない。村田と岡本を天秤に掛け、安全策を取ったんでしょう」(同)

 村田は少しずつだが打率を上げている。得点圏打率が2割を切っているため、好機でバントのサインを出したり、容赦なく代打を送るのも、原監督が勝ちたいからだろう。
 「原監督は今季限りでの退団も意識している。契約任期が今年で切れるのは分かっていましたし、いまのところ来季のことでフロントから何も打診がないため、退団も止むなしと考えるようになりました。優勝して退くのと、負けて交代するのとは全然違う」(同)

 原監督は4月に25歳の中井大介を四番打者に抜擢したが、1試合限りで諦めている。これはシーズン序盤戦だからできたテスト起用であり、終盤戦に一軍昇格してきた岡本にはそのチャンスを与える余裕はないというわけだ。岡本のスタメンデビュー。ガッカリしたのはテレビ局員だけではなかったが…。