ポイントランキングは現在10チーム中9位。このままだと1980年以降のマクラーレンとしては最悪のシーズンにか…

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今シーズン、開幕前テストから何度も強気な発言を繰り返してきたホンダだが、肝心の結果といえば、初戦から依然として下位チームの域を出ない…。新生マクラーレン・ホンダの現状は一体どうなっているのか?

いよいよ今月27日に三重県の鈴鹿サーキットで決勝レースが開催されるF1日本GP。今シーズンはホンダが7年ぶりにF1復帰。新生マクラーレン・ホンダとして参戦していることもあって、本来なら大きな盛り上がりが期待されるところだが、困ったことになっている…。

肝心のホンダ製パワーユニット(エンジンと運動・熱エネルギー回生のモーターを組み合わせたハイブリッドエンジン。以下、PU)が開幕から大苦戦。その結果、フェルナンド・アロンソとジェンソン・バトンというふたりのF1チャンピオンと、名門マクラーレンの力をもってしても最後尾グループの常連からいまだに抜け出せない“泥沼状態”に陥っているのだ。

当初は「開幕戦からメルセデスと対等に戦える自信はある」(ホンダの新井康久F1プロジェクト総責任者)と豪語していたにもかかわらず、PUのトラブルが続出。マクラーレン・ホンダはマシンのテストがほとんどできないまま開幕を迎えるという最悪のスタートを切った。

その後も「トラブルの原因はすでにわかっている」「夏までには表彰台に上がりたい」「後半戦はすごいことになる」「シーズン終盤には優勝争いにも絡める」と、常に強気の姿勢を崩さない新井氏だが、低迷は続く。エンジン性能の差が出にくい低速コースのモナコGPとハンガリーGPではなんとかポイントを獲得できたものの、それ以外のコースでは“極貧弱小チーム”のマルシャが実質的なライバルという、悲惨な戦いを強いられた。

そんな中、最後の希望だったのがベルギーGPで満を持して投入された「改良型PU」だ。ところが「フェラーリの出力に匹敵し、ルノーにはパワーで確実に勝っている」という新井氏の言葉にかすかな望みを託したホンダファンの期待も虚しく、またしても後方での厳しい戦いを繰りげるにとどまったのだ。

それにしても1988年から92年、アイルトン・セナを擁したマクラーレン・ホンダの時代、無敵の強さを誇ったあのホンダがなぜここまでの戦いを強いられているのか? 最大の原因はホンダの「準備不足と過信にある」と指摘するのは長年、ブリヂストンのF1タイヤ開発責任者を務め、その後はフェラーリのエンジニアとして活躍した浜島裕英氏だ。

「ターボエンジンに運動エネルギー回生(MGU−K)と熱エネルギー回生(MGU−H)を組み合わせた今のPU開発の難しさをホンダがきちんと理解していなかったとしか思えません。

今回の第4期の参戦の仕方にも疑問を抱きます。マクラーレン・ホンダとして連戦連勝を誇った第2期のホンダは、まずF1のひとつ下のカテゴリーだったF2に参戦して、その次にスピリットF1という小規模チームでF1に挑戦してからウイリアムズやロータス、マクラーレンのようなトップチームへのエンジン供給を行なっている。

そうやって着実に一歩ずつステップを踏み、ヨーロッパのレースやF1村の流儀を学ぶという地道で周到な準備がありました。F1でまともに戦えるようになるにはそれが重要だと、当時のホンダF1を統括していた川本信彦さんはよくわかっていたんだと思いますね。ところが今回の参戦にはそうした部分が見られない」(浜島氏)

また、マクラーレン・ホンダは他メーカーよりPUをコンパクトにしてマシンに搭載する「サイズゼロ」と呼ばれるコンセプトを採用しているのだが、ここにも問題があるのではと浜島氏は指摘する。

「空力を優先した小型化の代償として、PUの熱対策に苦しんでいるようです。PUの電気システムの『熱害』は去年のフェラーリやルノーも悩まされた問題。そこでフェラーリは今年、マシン後部の設計に余裕を持たせてPUの冷却を改善しました。その結果、ようやくエネルギー回生を行なう電気系のシステムが機能するようになった。

もちろん、マクラーレンからホンダに対して『PUを小型化してほしい』というリクエストがあったのでしょう。しかし去年、他のメーカーがあれだけ苦労していたのを見ていたはず。その上でホンダが『それでも冷却はなんとかできる』と考えていたのなら、判断が甘かったとしか言いようがありません

聞くところによると、来季もこのコンセプトを継続するということですが、何か画期的な冷却方法を発見したのか? それとも今年の教訓から学習していないのか? そのあたりが心配です」

(取材・文/川喜田研)

■週刊プレイボーイ39・40合併号(9月14日発売)「新生マクラーレン・ホンダのF1日本GPが心配すぎる!」より