ラグビーW杯大金星 指揮官は「極め付きの喧嘩屋」

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ラグビーワールドカップ(W杯)のイングランド大会で9月19日、優勝経験が2回ある南アフリカを日本が34―32で破り、強豪相手に劇的な勝利を挙げた。日本がW杯で勝つのは1991年大会のジンバブエ戦以来、24年ぶり。

対戦時の世界ランキングは日本13位に対して、南アフリカは3位。格上の優勝候補相手に鮮やかな逆転勝利した裏には、仕掛人がいた。それが、エディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)だ。

9月15日発売のFLASH1347号では、著述業の傍ら早大ラグビー部のコーチも務めた藤島大氏の特別寄稿を掲載。以下、その記事から、エディー・ジョーンズについての箇所を抜粋。

エディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)。オーストラリア・タスマニア生まれの55歳。’03年のW杯では母国代表を率いて地元での準優勝に導いている。日系の母と日本人の妻を持つ。どこか東洋的な風貌で、体格も大きくはない。ファンや取材陣の多くは、「エディーさん」と親しげに呼ぶ。

しかし、その実像に「さん」の柔らかな響きは相応しくない。

激怒。激情。激烈。「激」の字がピッタリとくる。’12年春の始動以来、怒り噛みつき、怠惰を嫌悪しながら周到な準備と執拗な情報収集に邁進、湿地帯を彷徨ったジャパンを再生させた。

オーストラリアのラグビー記者、グレグ・グロウデンは、5年前の著書において、エディー・ジョーンズをこう評している。

「極めつきの喧嘩屋。衝突を愛している」「ワーカホリックであり、目標に突き進み、己を律し、独裁的で、しばしば扱いづらい」「微小なまでの細部に取りつかれ……」(Inside the Wallabies)

どうです。普通の人ではないでしょう。さらには「1日10時間から14時間をコーチングに捧げた」といった記述も。選手やスタッフに対して容赦はなく、ときに辛辣な言葉で追い込んだりもする。

他方、強化の手順はきわめて正統である。まず「キックを封印。手にボールを持って攻めつづける」という明快な方針を掲げる。本人の分析によれば、国際的なスタンダードは「パス4本に対してキック1本の比率」。だが、このジャパンは「11対1」を理想とする。その遂行に求められる体力とスキルのレベルを追い求めた。

先にくっきりと輪郭の濃いイメージがあって、そこからの逆算で妥協なくチームを構築していく。日本の選手は進みながら考えるより、決まった方針を貫徹するほうが一般に得意だ。相性は悪くなかった。

就任2年目の秋、軽い脳梗塞に倒れるも、この人らしく、徹底的なリハビリで快復する。ちなみに、素早く病院の手配をするなど「命の恩人」ともいえる日本のスタッフは、退院後は何もなかったかのように厳しい要求と叱責にさらされているらしい。

復帰後の’14年春は快進撃。サモア、カナダ、アメリカ、イタリアを破り、世界ランクは9位に上昇した。ここをピークに、W杯イヤーの本年はやや失速の感もあったが、これはいわば積年の心身の疲労による。そうした「負」を差し引いても、猛練習の蓄積は、格上の南アフリカ、スコットランド、サモア、やや格下のアメリカとの本大会での連戦を前に「正」の要素だ。

「W杯で旋風を起こす」

出発前の会見で、眠らぬ人は言った。虚勢ではない。鍛錬の質量は裏切らない。リングに上がる資格なら得た。

(週刊FLASH9月29日・10月6日号)