最近、世間を騒がせているのが「人食いバクテリア」というもの。
もちろんこれは俗称で、正式名称は「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」といいます。
発症すると急速に症状が悪化して手足が壊死、ひどい時には死に至る恐ろしい病気です。
その致死率は3割といわれています。
今年8月、この病気に感染した患者の数が過去最多になったと国立感染症研究所が発表しました。
症状の詳細や感染ルートなど、この病気について気になる点を調べてみました。

目に見えないバクテリア(写真はイメージです)


劇症型溶血性レンサ球菌感染症とは?

「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」が最初に確認されたのは1987年の米国でした。以来、ヨーロッパやアジアなどで患者が発生し、日本における初の症例は1992年のこと。
現在では毎年100人から200人の患者数が報告されていますが、今年8月末の時点で、昨年の患者数をすでに越え、過去最多の299人になったと国立感染症研究所が発表しました。
なぜ増えているのかはわかっていません。
いったいどういう病気なのでしょうか。
主な病原体は「A群溶血性レンサ球菌」といい、私たちの身のまわりに存在する細菌です。
子どもの15%〜20%が喉などに保菌しているといわれ、この菌が引き起こす病気として知られているのが咽頭炎、とびひ、扁桃炎などです。通常は抗菌剤で治療が可能です。
ところが、何らかの突発的な要因で症状が劇的に重症化することがあります。これが「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」です。
なぜそうなるのかはわかっていませんが、高熱をだして、手足が腫れ激しい痛みを引き起こし、やがて筋肉が壊死してしまいます。
さらに、多臓器不全に陥るなど全身で症状が悪化、時には数時間で死に至ることも。致死率は高く、3割に達するため「人食いバクテリア」と呼ばれるのです。症状が劇症化するのは主に大人で、60代以上の高齢者に多いのが特徴です。


劇的なスピードで悪化する!

初期症状として、次の点があげられます。
?皮膚が赤く腫れる。
?喉が痛い。
?発熱があり体がだるい。
?血圧が下がっている。
?と?は風邪の症状にも似ているので、「たいしたことはない」「様子を見よう」などと思いがちですが、放っておいてはいけません! 今日は赤く腫れていた手足が、翌日には壊死しかけて紫色になるなど、ものすごいスピードで症状が悪化してしまうからです。
早期の段階であれば、抗生物質の投与により治療が可能ですが、万が一、診断や治療が遅れた場合、壊死した手足は切断しなければなりませんし、敗血症などで全身に症状がまわってしまえば、まさしく命取りになることも……!
自己診断は大変キケンです。
特に?の腫れが強い痛みを伴うようであれば、病状が進んでいる可能性がありますから、すぐに病院に駆け込みましょう! 初めの診断が病状の進行を左右しますので、個人の病院よりも総合病院での受診をおすすめします。


感染経路はどこから?

残念ながら、現在、この病気に対するワクチンはありません。
確認されている感染経路であげられるのは、まず飛沫感染です。インフルエンザなどのように感染力は強いものではありませんが、咳やくしゃみなどから感染すると考えられます。
次が、傷口感染。多くは傷口に細菌が入り込んで発症しています。くれぐれも傷がある箇所を舐めたりしないように。ケガをした場合は流水で洗う、もしくは消毒するなど、適切な処置をとりましょう。
さらに、食べ物からの感染もありえます。傷のある保菌者が調理をした食材を食べて発症した事例が報告されています。


感染を防ぐにはどうしたらよい?

では、感染しないためにはどうしたらよいのでしょう。
・うがいや手洗いを徹底する。
・マスクをする。
・傷口を清潔に保つ。
わからないことが多い「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」ですが、日常生活において上記の点に気をつけることで感染を防ぐ効果があります。
そして、早期発見と早期治療が症状の劇症化を防ぐといえるでしょう。
どうか、これ以上、発症者が増えませんように。