鉄分は1日約1回の補給で、十分だといわれる。腸からの吸収率が約10%なので、10ミリグラム前後を食事などで摂ればいい。静脈注射は1回の分量が40〜50ミリグラム。全量が血管から体内に入るため、高い頻度で継続すると「鉄過剰」となってしまう。
 一般的に鉄分というと、不足栄養素としてのイメージが強い。だが、それは女性に限られた話(例外としてアスリート)で、こと男性に限っては圧倒的に鉄過剰状態である。なぜなら、男性は女性と異なり、けがや病気以外では出血することがないからだ。そのため、鉄分が体内に蓄積する一方で、むしろ鉄過剰になることが多い。鉄過剰に陥ると前述したように心疾患や、肝機能異常による肝硬変、肝臓がんのリスクを増大させる弊害がある。

 では、鉄分の過剰摂取をどう防ぐか。ある管理栄養士は「鉄分の摂り過ぎは“寿命を縮める”と主張する人もいるくらいで、鉄分摂取の仕方を真剣に考える必要があります」と、次のような注意点を挙げてくれた。
(1)赤身の肉は控える
 牛肉や豚肉、レバー、マグロなどの赤身に含まれる「ヘム鉄」は、腸からの吸収が早い。また、肉に含まれる成分「ミートファクター」は、植物性食品に含まれる「非ヘム鉄」の吸収を促す効果もあり、いずれも鉄分を摂り込みやすい。
(2)ビタミンCの摂り過ぎに注意
 ビタミンCは体に良いといわれているが、「非ヘム鉄」の吸収を促す効果がある。果物、フルーツジュース、サプリメントの摂り過ぎに注意したい。
(3)アルコールは控えめに
 アルコールは肝臓に鉄を押し込む効果があり、結果として「貯蔵鉄」を増やすことになる。特にC型肝炎の人は注意。
(4)穀物は全粒タイプを選ぶ
 玄米や大麦、ライ麦などの全粒穀物は「フィチン酸」を含んでおり、このフィチン酸が鉄と結合して体内への吸収を妨げる。
(5)運動、献血をする
 鉄分は汗から排泄される。定期的に運動し、汗をかくことで鉄分を減らす。献血は最も手っ取り早い鉄分の放出である。

 アスリートにとって鉄分の摂取は死活問題であり、いずれも長期的な視野に立って判断すべきことだ。われわれ一般人が「鉄分の過剰摂取」を気にすることは少ないが、健康や長寿を考えるには、鉄分についての正しい知識は必要である。