腹痛が続くようなら要注意

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腸閉塞のため1か月近く入院していた落語家の桂歌丸さん(78)が2015年7月11日、無事退院した。6月に背部褥瘡(背中の床ずれ)で手術を受け、退院したものの直後に再入院していたのだ。

病気の原因は、意外ともいえるものだった。

極めてまれな「やせすぎ」原因の腸閉塞

腸閉塞は文字通り「小腸や大腸が何らかの理由で完全にふさがってしまい、内容物が通過できない状態」になる疾患で、ふさがった部分は詰まって膨張し、治療せずに放置していると最終的には腸が破裂したり、血管が圧迫されて腸が壊死してしまう。原因はいくつかあるが、歌丸さんの場合は「やせすぎ」だと発表された。

「これまでに多くの腸閉塞の患者を診てきましたが、やせていることが原因だった人は1人しかいません。非常に珍しいケースの腸閉塞です」

北里大学医学部外科教授で、消化器外科医として数多くの腸閉塞の手術を手掛けてきた渡邊昌彦医師はそう語る。

歌丸さんは若いころからやせ気味で、自らを幽霊やがい骨にたとえて笑いをとることもあった。体重は公称40キロ前半程度としていたが、今年1月にインフルエンザで長期入院してから36キロまでダウン。やせすぎたせいで、高座の際に座布団から立ち上がれなくなり、「がんではないか」と心配する声もあった。最近は食欲もなく、あめ玉を口にするだけという日もあり、よりやせ衰えてしまっていたようだ。

なぜやせすぎると腸がふさがってしまうのか。胃と小腸をつなぐ十二指腸は、上腸間膜動脈と大動脈というふたつの血管の狭いすき間を通っている。通常は血管と十二指腸の間にクッションのように脂肪があるが、やせすぎるとこの脂肪がなくなってしまい、腸が直接血管に挟まれて圧迫され、閉塞が起きるのだ。歌丸さんも入院中は鼻から脂肪を注入し、脂肪を増やす治療を受けていたという。

「鼻からの注入は経腸栄養と呼ばれる方法です。あまりにもやせすぎている状態だったので、口からではなく、栄養が効率よく吸収される腸へ送り込む方法をとったのでしょう」(渡邊医師)

ほとんどの原因は過去の開腹手術

やせていれば誰でも腸閉塞になるわけではない。もともと十二指腸の通り道の幅が狭い、内臓下垂気味、極端に腹腔の筋力が落ちている、座業が長く前のめりの姿勢で腸を圧迫しているなど、いくつかの条件が重なって閉塞が起きる。渡邊医師が診断したケースでは、ダイエットが過ぎた拒食症が原因だったという。

「やせすぎ以外に便秘が原因の腸閉塞も極めて稀です。何といっても最も多いのは以前に受けた開腹手術を原因とする腸閉塞です」(渡邊医師)

開腹手術後の傷が腸と癒着し閉塞してしまう例が一番多く、腸がねじれて腸への血流が途絶える例などもある。

腸閉塞には閉塞の状態によっていくつかの種類があり、症状もそれぞれ異なるが、開腹手術の既往がある人が明らかに普段と様子が違う腹満や不快感、激烈な腹痛に襲われたときは、速やかに医療機関で診断を受けたほうがよい。[監修:渡邊昌彦 北里大学医学部外科学教授・北里研究所病院副院長・日本内視鏡外科学会副理事長]

(Aging Style)