「億馬券」が生まれたWIN5に次いで高額配当が出やすい3連単に関して、ここ数年、ある噂が流れているという…。

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10月4日のスプリンターズステークス(中山・芝1200m)を皮切りに、いよいよ始まる秋競馬(秋のG1シリーズ)。

9月13日には、WIN5(5重勝単式、対象5レースすべての1着を当てる馬券の賭式)で4億円足らずの払戻し、すなわち「億馬券」が生まれており、「俺もこの秋競馬で必ずや!」と夢見る読者もいるはず。

一方、WIN5に次いで高額配当が出やすい3連単に関して、ここ数年、ある噂が流れているという…。

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「お手持ちの勝馬投票券は、確定までお捨てにならないようお願い致します」

競馬中継で必ず流れる、このフレーズ。多くの競馬ファンは、このアナウンスについて「走行妨害などの違反行為で上位の馬が降着処分を受ける可能性があるから 」と答えるだろう。もちろん、それも間違いではないが、実はもうひとつ、別の理由が…。

それが「特払い」である。

特払いとは「馬単」「3連複」「3連単」などといったそれぞれの賭式で、的中が1票もない時に行なわれる払戻しのこと。事実、地方競馬や競輪では時折、的中者が出なかったゆえに特払いが実施されることがある。

一方、中央競馬(JRA)ではこの特払いが実に44年間も出ていない。上位2頭の馬を当てる馬連、馬単なら組み合わせが少ないが、上位3頭を着順通りに当てる3連単の場合は、12頭立てのレースで1320通り、18頭立てでは4896通りの組み合わせにも上る。客がまばらで注目度の低い午前中のレースなら誰も買っていない組み合わせがあっても不思議ではないはず?

ちなみにJRAで3連単が導入されたのは2004年(全面導入は2008年)のこと。3連単導入後もJRA主催レースでの特払いは一度もないことからネット上には次のような壮大な陰謀説が出回っている。

「JRAに委託された会社が全レース3連単を100円ずつ購入している」――

特払いを避けるために業者に委託して全ての組み合わせを購入させているという噂が流布されているのだ。もしそれが事実なら馬券販売の公平性は担保されない。

ちなみに、こうした噂の“出所”であるSNSやブログの投稿をチェックしたところ、噂自体はどうも3〜4年前から流れているようだ。古参の競馬ファンはこう眉を顰(しか)める。

「3連単の全通り買い? ワシは聞いたことないけど、まぁ、JRAならそんなことやっとっても不思議やない。今の中央競馬は『社台の運動会』やろ? でも社台グループ(国内最大手の競走馬生産集団)や関係の(一口馬主)クラブの馬ばかり勝ちよったら、競馬人気がなくなるかもわからん。せやから、一部のG1で競馬界では力を持ってない個人馬主を勝たせて、JRAはドラマを作っとるゆうのがワシの見立てや。大体、社台はなぁ…(以下、3連単とは関係ない競馬界の陰謀論が続いたため割愛)」

…社台の影響力云々はともかく、競馬のレースにこのての“操作”が働いていると噂する声は以前から少なくない。そこで、まずは“本丸”であるJRAにまことしやかに流れる「3連単全通り買いする会社」の存在について直撃してみた。

「は? なんですか、それ?」

3連単に関する噂は「初耳」とまず回答。なぜ、そんな噂が出ているのか説明すると、次のようなコメントが返ってきた。

「それは不正に当たりますので、当然ながらJRA本体、ないしは委託されたどこかの会社が馬券を買っているという事実は全くございません。特払いが出ていないのも、それだけ多くの馬券をお客さまに買っていただいているから、という事実に他なりませんね」

苦笑しながら、噂をきっぱりと否定する担当者。当然といえば当然? だが、実は「3連単全通り買い会社」が存在し得ないのは、データからも説明できる。

この噂の根拠となっているのは「JRAが払戻しをしたくないから」というものだが、特払いの金額は1口=70円(3連単の場合)だから、賭け金の70%が払い戻される。一方、3連単の払戻率、すなわち売上のうち当たり馬券の払戻しに充てられる割合は72.5%。JRAの立場からすれば2.5%分、特払いとなった方が利益が多い計算となる。つまり、そもそもの話として「3連単全通り買い会社」を存在させる意味がないのである。

前出・JRAの担当者も「払戻率とは無関係に全通り買いなんてあり得ません。買う意味もありません」と噂を改めて一蹴する。

お金を賭けるだけに「着順は最初から決まっている」「オッズは操作されている」などといった都市伝説や陰謀論が流布しやすい競馬界。この手の“おもしろネタ”はガチで調べるのではなく、程よく信じて心揺さぶられるくらいがロマンがあってよいのかもしれない。

(取材・文 藤麻迪)