トウモロコシの8割を輸入している日本の加工食品は大丈夫?(shutterstock.com)

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 スーパーに陳列されている食料品に、最近普通に見かける「遺伝子組み換え」「遺伝子組み換えでない」という文字。豆腐や豆乳、食用油、スナック菓子などの商品に見られることだろう。

 ご存じの通り、遺伝子組み換え(GM)とは、生物に対して自然界では起こらない遺伝子操作を行う技術。それにより栄養価の高い食品や機能性を高めた食品を開発したり、生産性を向上させたりなど、消費者と生産者の双方にさまざまなメリットをもたらす。

 そのひとつが、農薬の使用量を減らせることだ。たとえば当初は、ある強力な除草剤に耐性のある遺伝子組み換え作物を栽培していれば、今までは何種類もの除草剤を散布していたのをひとつで済ませることができ、その結果、除草剤の全体量が減ると予測されてきた。

 しかしこの理論上の試算は現在、世界中で裏切られているという。遺伝子組み換え作物の普及により、むしろ発がん性の疑われる除草剤の使用量が増加しているとの主張が、アメリカの総合医学雑誌『New England Journal of Medicine』(8月20日号)に掲載された。

40年で250倍に増えた除草剤使用量

 その論文によれば、米・モンサント社が1970年に開発した「ラウンドアップ」の商品名で知られる除草剤・グリホサートのアメリカ農業における使用総量は、1974〜2014年までの40年間で250倍以上に増加し、今では1億1300万kgにも及ぶ。そしてその原因は、「ラウンドアップ耐性」を持つよう遺伝子組み換えされたトウモロコシや大豆などの作物にあると、ワシントン州立大学研究教授Charles Benbrook氏ら著者は説明している。

 ラウンドアップ耐性のある遺伝子組み換え作物が開発された当初は、農場では1種類の除草剤を全体に散布すればよかった。だが、何年も同じ除草剤を使い続ければ、耐性を持つ雑草が出てくるのは自然の摂理。徐々にグリホサートに耐性を有する雑草が広く出現するようになったため、さらに強力な除草剤も合わせて使わねばならなくなり、使用量も散布回数も増えてしまった。

 そこで今、グリホサートを散布しても枯れない雑草の対策として新たな遺伝子組み換え作物が開発されているが、それに伴い問題になっているのが、米国環境保護庁が2014年に承認した「エンリスト・デュオ」という混合除草剤だ。

 今春、国際がん研究機関(IARC)は「ラウンドアップ」の成分であるグリホサートを、5段階ある発がん性の分類で上から2番目にリスクが高い「おそらく発がん性がある」と分類。さらに除草剤の一種である「2,4-D」を3番目の「発がん性が疑われる」と分類した。

 これらはいずれも新しい混合除草剤「エンリスト・デュオ」に含まれる成分であり、農場の作業者や近隣住人へのリスクが懸念される。実際にアメリカでは、このような化学物質は周囲の水源に侵入し始めており、近年の研究では、地表水、雨水、さらに人の尿からも微量のグリホサートが検出されている。「弱いパンチでも繰り返し当てれば大きなダメージとなるだろう」と、米天然資源保護協議会(NRDC)のJennifer Sass氏は懸念する。

 Benbrook氏ら著者は、環境保護庁に対して「エンリスト・デュオ」の使用許可を延期するよう要求しているが、製造元のダウ・アグロサイエンス社は、認可は長期間の十分な審査に基づいており、国際がん研究機関(IARC)の提議する懸念についても考慮したと反論。両物質はDDTのような有害な殺虫剤とは異なり、血液中に取り込まれず排泄されるという。

取捨選択のためにも適正な表示を

 今のところこの論争は決着を見ないが、今後も世界で同様の問題が起きる可能性は高いだろう。遺伝子組み換え技術が使われている状況は、大規模で画一的な栽培体系なだけに、開発がエスカレートするほど環境や生態系への影響が心配だ。これでは結局、雑草と除草剤、害虫と殺虫剤のいたちごっこをしているにすぎない。

 日本では、遺伝子組み換え作物の商業用栽培はほぼないが、家畜の餌や加工食品の原料として大量に輸入され、トウモロコシの80%、大豆の75%は遺伝子組み換え品種と推測される。

 規制の厳しいEUでは、基本的に遺伝子組み換え技術を用いている食品はすべて表示の義務がある。それに対して日本の表示義務は、原材料の上位3品目についてのみ。また上位3品目内であってもその重量が全体の5%以下なら表示義務の対象外と、非常に甘いのが現状だ。

 遺伝子組み換え作物は、本当に環境や人体に対して悪影響がないのか。いまだ明確な答えが出ていない以上、消費者には取捨選択のための情報を得る権利があるはずだ。この問題に関して、アメリカでは消費者運動が広く展開されている。情報開示と表示義務の適正化に対し、私たちも声を上げていくべきではないだろうか。
(文=編集部)