■ラグビーワールドカップ2015観戦ガイド(5)

 9月18日のイングランド代表対フィジー代表戦で幕を開ける「ラグビーワールドカップ(W杯)2015」。このカードを皮切りに、ラグビー発祥の地で計48試合が行なわれる。開催国のイングランド代表は、今大会の優勝候補のひとつ。しかし、彼らが予選プールで消えてしまう可能性も十分にあるのだ。

 2003年にW杯を制したこともあるイングランド代表が、まさかそんなはずは......と思う人もいるかもしれない。しかし、彼らが振り分けられた今大会の予選プールにおいて、イングランド代表は必ずしも絶対的な存在ではない。そう、実はイングランド代表が入った予選プールAは、いわゆる「死の組」なのである。

 予選プールAの他の4チームは、過去2度のW杯優勝を誇るオーストラリア代表(世界ランキング2位)、前回大会ベスト4で「欧州6ヶ国対抗」のライバルであるウェールズ代表(同5位)、「7人制王国」として名を馳せるフィジー代表(同9位)、そして最終予選で出場を決めたウルグアイ代表(同19位)だ。世界ランキング6位のイングランド代表を含めた5チーム中、4チームが世界ランクひとケタ台......。熾烈な戦いになることは、想像に難くない。

 W杯の各予選プールからは、上位2チームが決勝トーナメントに進出できる。つまり、残念ながら、イングランド代表、オーストラリア代表、ウェールズ代表の強豪3ヶ国のうち、必ず1チームは予選敗退となるのだ。開催国のイングランド代表が3位になることは、地元ファンにとってまさに「死」を意味する。

 強豪3ヶ国(イングランド代表、オーストラリア代表、ウェールズ代表)の対戦は、以下のとおりだ。

9月26日(土) イングランド代表対ウェールズ代表
10月3日(土) イングランド代表対オーストラリア代表
10月10日(土) オーストラリア代表対ウェールズ代表

 イングランド代表にとって最大の山場となるウェールズ代表とオーストラリア代表との直接対決が、今W杯のターニングポイントとなるのは間違いない。たとえ3位を回避することができても、2位で突破することになれば、準々決勝では予選プールBの1位通過が確実視されている南アフリカ代表との対戦が待っている。地元で優勝する可能性を少しでも高めるためにも、予選1位で通過したいところだ。

 前回大会、イングランド代表は準々決勝で敗退してしまった(フランス代表に12−19)。その後、若手を積極的に起用してきたスチュアート・ランカスター・ヘッドコーチ(HC)は、チームの中軸にふたりの「ディシジョン・メーカー(ゲーム中に戦術を決定する選手)」を配置した。ひとりは、スピードあふれる26歳のSH(スクラムハーフ)ベン・ヤングス、そしてもうひとりは「ジョニー・ウィルキンソン(※)の後継者」の呼び声高い22歳のSO(スタンドオフ)ジョージ・フォードだ。このハーフ団の出来栄えが、イングランド代表の勝敗の行方を大きく左右するだろう。

※ジョニー・ウィルキンソン=2003年W杯で優勝の立役者となったキックの名手。

 一方、オーストラリア代表も強力なハーフ団を擁している。2014年にスーパーラグビーでワラタスを初優勝に導いたマイケル・チェイカHC率いるワラビーズの中軸には、SHニック・フィップスとSOバーナード・フォーリーの「ワラタス所属選手」を筆頭に、SHウィル・ゲニアやSOクエイド・クーパーを状況に応じて使い分けると予想される。

 今年のザ・ラグビーチャンピオンシップ(南半球4ヶ国対抗戦)で全勝優勝を遂げ、勢いに乗るワラビーズ。過去W杯7大会で決勝トーナメントに進めなかったことは一度もない。こちらも早々に負けられないだけに、予選プールAでも1位突破を狙ってくるだろう。

 対して、「レッド・ドラゴンズ」ことウェールズ代表は、大会直前というタイミングで悪夢が舞い込んできた。監督からの信頼の厚かったSHリース・ウェッブと、「世界最高のFB(フルバック)のひとり」と称されるリー・ハーフペニーのふたりが負傷し、代表メンバーから外れてしまったのである。その結果、予選プールAでは実力的に3番手という見方が強まっている。

 ただ、今大会のウェールズ代表にはFL(フランカー)サム・ウォーバートン主将、No.8(ナンバーエイト)トビー・ファレタウ、WTB(ウイング)ジョージ・ノースなど各ポジションにタレントが揃っているので、一矢報いる可能性は十分に秘めている。まずは9月26日、手負いとなった「赤い竜」が開催国に対してどんなラグビーを見せてくれるか、世界中が注目することになるだろう。

 そしてもうひとつ、予選プールAを「死の組」と呼ばせているのが、フィジー代表の存在だ。7人制ラグビーの盛んなフィジー代表は、ポジションに関係なく総じてラン能力が高く、そのスピードは決して侮れない。スーパーラグビーとトップリーグのトライ王に輝いたこともあるWTBネマニ・ナドロを筆頭に、選手個々の突破力は世界屈指のレベルで、W杯直前に行なわれたパシフィック・ネーションズカップ(※)でも優勝して実力を証明した。前述の3チームとしては、フィジー代表戦で勝ち点を積み上げられるかどうかが、死のプール突破のカギとなる。

※パシフィック・ネーションズカップ=環太平洋の強豪国による国際大会。2015年はフィジー代表、サモア代表、トンガ代表、日本代表、アメリカ代表、カナダ代表が参加。

 今大会も予選プールから激戦となることは必至だ。はたしてどのチームが早々に死することになるのか、最大の激戦区「予選プールA」の動向から目が離せない。

斉藤健仁●取材・文 text by Saito Kenji