■福田正博フォーメーション進化論

 所属クラブのドルトムントで好調なパフォーマンスを見せている香川真司は、W杯2次予選の日本対アフガニスタン戦(9月8日)でも躍動感のあるプレーを見せてくれた。

 2014年のW杯ブラジル大会後、香川は居場所を失っていたマンチェスター・ユナイテッドから、古巣のドルトムントに復帰。しかし、チームにフィットするのに苦労してコンディションが上がらず、日本代表でも本来のプレーを発揮できないままだった。それが今季は、開幕からアシストとゴールを重ねて、輝きを取り戻しつつある。

 そして、イランの首都・テヘランで行なわれた日本対アフガニスタン戦では、香川は前半10分に先制ゴールを決めると、その後はピッチを縦横に動き回って日本の攻撃のリズムを作り出した。

 前線のスペースを有効に使い、左サイド、中央、右サイドと自由に動きながらボールを引き出すと、ターンしてからパスを出してゴール前に走り込み、シュートに絡んだ。こうしたプレーこそが、香川本来の姿といえる。

 ドルトムントでの香川のプレースタイルは、高い技術力と広い視野で周りを うまく使いながら連動し、味方のゴールを演出するというもの。そのプレースタイルは、「何がなんでもシュートを打つ」というものではない。香川がシュートを打つときは、シュート以外にプレーの選択肢がないとき、あるいは周りがお膳立てをしてくれて、ほぼ確実に決まるときに初めてシュートを選ぶ傾向がある。

 そんな香川が、アフガニスタン戦の前半10分にミドルレンジから積極的にシュートを打ってゴールを決めた。これは、9月3日に行なわれたカンボジア戦前半の決定機を外していたことが影響していたのではないか。それがゴールへの強い意識を持つきっかけになり、ドルトムントの香川ならばシュートを打たないエリアでの思い切りの良さにつながったのだろう。

 試合開始後、早い時間帯でのゴールで「得点を決める」という重圧から解放されたのか、香川はドルトムントで見せているパス&GOを主体とするプレーでリズムに乗っていった。

 アフガニスタン戦で香川らしさを出せた要因は、もうひとつある。この試合でサイドアタッカーに原口元気が起用されたことだ。原口や宇佐美貴史のような「シュート意識が強く、ドリブルを武器にする高い技術力の選手」がメンバーに入ると、香川は持ち味を発揮しやすくなる。

 それはドルトムントでのプレーを見ても明らかだ。わずかでもシュートチャンスがあれば果敢にゴールへ突き進むマルコ・ロイス、ボールを持てばドリブルで仕掛けていくミキタリアン、爆発的なスピードで縦に抜けるオーバメヤンという3人のアタッカーと連係して、香川はその特長を最大限に発揮している。

 香川は足もとの技術に長けているが、決してドリブラーではない。味方とのワン・ツーや、パスを受けてからのターン、細かいタッチでDFをかわすことを得意にしている選手だ。

 その香川の能力を最大限生かすには、強引にドリブルで仕掛けてシュートを狙う宇佐美や原口のようなタイプとの組み合わせが必要になる。そうした選手と連係しながら速いテンポで攻撃を組み立てることで、香川らしさは日本代表でもさらに発揮されるだろう。

 また、トゥヘル監督を迎え、昨シーズンのクロップ体制下での素早いカウンター主体から、ボールを保持して相手を押し込む展開が多くなったドルトムントでプレーすることで、香川が代表にもたらすメリットもある。

 W杯アジア予選では、日本は引いて守りを固める相手と対戦することがほとんどだ。その守りを崩してゴールを奪うことは、簡単なことではない。そして、守備的な相手を崩すことに慣れていないと焦れてしまい、安易にゴール前に放り込むなど単調な攻撃になりがちだ。

 そうした局面を打開するために、日本代表のトップ下で攻撃を司る香川が、ブンデスリーガで守備を固める相手を押し込んで戦うスタイルを経験し、さまざまな攻撃のアイデアを蓄積できていることは、日本にとって確実にプラスになる。

 日本代表は10月8日にオマーンでシリアとW杯2次予選を戦うが、メンバーはアフガニスタン戦からほとんど変わらないはずだ。選手同士の相互理解を深めながら、チーム全員で日本の攻撃力に磨きをかけていってほしい。

福田正博●解説 analysis by Fukuda Masahiro