辻元清美WEBより

写真拡大

 ついに安保法制が特別委員会で可決され、参院本会議に持ち込まれることとなった。しかし委員会採決は、与党がどさくさに紛れて勝手に断行、議事録に何が行われたのかさえ記録されていない異常な採決だった。

 本会議では与野党の攻防はさらに激しさを増すと思われるが、昨夜の委員会採決を阻んだのは、野党の強い抵抗があったからだ。だが、そのなかで、野党の女性議員たちが鴻池祥肇・参院委員長を室内から出さないよう理事会室前で行ったバリケード作戦が、いま、批判に晒されている。

 というのも、女性議員たちは彼女たちを排除しようとした与党男性議員たちに「触るな、セクハラだ!」と抵抗したといい、これに対して「女を使うのはずるい」「女を利用している」「ヒステリーだ」「セクハラ冤罪なのでは?」と大きな非難が巻き起こっているのだ。

 この件を伝えている産経新聞では、〈理事会室前には、社民党の福島瑞穂前党首や民主党の小宮山泰子、辻元清美両衆院議員ら複数の野党女性議員が、いずれもピンクのハチマキ姿で集結。与党の男性議員が触れるたびに「セクハラを働いた」などと騒いでいる〉と書かれている。

 同様に読売新聞は〈民主党などの野党は(中略)女性議員を「盾」にするなど、なりふり構わぬ抵抗を繰り広げた〉とし、〈与党議員が封鎖を解除しようとすると、「セクハラだ。懲罰だ」などと絶叫した〉と伝えた。

 はたして、ほんとうに女性議員たちは「セクハラ」と騒ぎ立てたのか。そこで女性議員たちの事務所に確認してみたが、辻元清美議員の事務所は「現場はかなりの混乱状態にあってもみくちゃにはなりましたが、辻元は『セクハラ』とは言っていません。また、少なくとも辻元があそこにいた時間帯に、そのような発言をした人はいませんでした。あの場にいた女性議員全員がセクハラとずっと騒ぎ続けていたかのような報道は明らかにミスリードです」と回答した(他の議員にも取材を行ったが、委員会出席や攻防の最中の時間帯であったため、この原稿には回答を掲載することができなかった)。

 また、「その場に居合わせた」という大手新聞社政治部記者にも話を聞いてみたが、「『女性の声を聞け!』という言葉は聞いたけど、セクハラだ、などの声は聞いていません」と言う。

「でも、昨日はものすごく混乱していたので、どこかで誰かがそう言った可能性は否定できません。ただ、みんなして『セクハラだ』などと叫んだりはしてない。だって、福島瑞穂さんみたいによく声が通る人が叫んでいたら、それはさすがに気付くと思うから(笑)。基本的にはみんな安保法案に対する反対や強行採決への抗議を口にしていましたよ」

「セクハラ」発言が起こったかどうかは不明だが、少なくとも女性議員たちが口々に「セクハラ」とがなり立てていたということはなさそうだ。産経と読売がこれまでも一貫して安倍政権擁護、野党批判を行ってきた経緯を鑑みても、かなり誇張して記事にし、女性議員批判を煽っているというのが真相だろう。とくに大多数のメディアや世間は、怒りの声をあげる女性を「跳ね上がりだ」と徹底して嫌う。そうした女性嫌悪の心理を当て込んで、あるいは記者自身の感情から、「セクハラ」攻防がミスリードされていったのだろう。実際、このミスリードが効いたのか、ネット上では女性議員たちに対する批判の声が圧倒的だ。

 しかも、今回、抗議を行った「怒れる女性議員の会」は、野党の超党派からなる団体だ。彼女たちは垣根を越えて自分たちから手を結び、立ち上がった。その目的はもちろん、民意を無視し、説明もろくになされていない安保法案を数の力で採決しようとする暴挙を食い止めるためだ。「野党は正しい議会運営を行う義務を放棄している!」と怒る人たちもいるが、それは大きな間違いで、この穴だらけの法案を押し通すことこそが議会を軽視した、民主主義に反する行為なのである。

 それでなくても、国会においては、女性議員の数は男性にくらべて圧倒的に少ない。そんななかで女性たちが徒党を組んでも何もおかしな話ではないが、産経や読売は"野党は女をバリケードに使うなんて卑怯だ"と論陣を張る。すなわち、野党の男たちは女を利用している、と言いたいのだ。

 しかし、「女を利用」したのは、むしろ与党のほうだ。この「怒れる女性議員の会」を排除するために、山崎正昭参院議長は女性の衛視を送りこんできた。衛視というのは議院の警務を担当する職員のこと。野党の女性議員たちのボルテージがもっとも上がったのも、この女性衛視が投入されたときだったという。

「現場は本当にもみくちゃ状態でかなり危険だった。危険な現場とわかっていながら、あえて女性の衛視を送り込んできたことに、女性議員たちから強い抗議の声があがっていました」(前出・政治部記者)

 このとき、民主党の小宮山泰子衆院議員が「女を利用するな! こんな時だけ女性を前に出して。こうやって女を使うんだな、今の政権は」などと抗議したことは、産経新聞も報じている。だが、この抗議に対しても、ネット上では「女性を利用しているのは、あんたらだ!」「どっちが女を利用してるんだ」「ブーメラン」など非難の声が浴びせられている。これはネットだけではなく、実際に現場でも「自民党議員は『女を使ってるのは、お前らだろう!』と言い放っていました」(前出・政治部記者)と証言する。

 しかし、考えてみてほしい。自分たちの意志で集まった女性議員たちと、議長からの命令で強制的に投入された女性職員。これはまったく意味がちがう。職員たちは命令には従わざるを得ないわけで、文字通り「女性を利用」したのである。セクハラどころかパワハラと言ってもいい悪質な行為だ。このパワハラ行為に女性議員たちがもっともヒートアップしたというのは、当然の話だろう。

 しかし、メディアは自主的に集まった女性議員たちの抗議を"野党の姑息な手口"だと誘導しても、一方の与党が命令して女性職員を強制的に投入したことを"女性を利用している"とは決して指摘しない。

 そしてもうひとつ、言及しておきたいのは、彼女たちがバリケードを張った相手である鴻池参院委員長による"セクハラ発言"についてだ。

 今週発売の「週刊ポスト」(小学館)によれば、鴻池参院委員長は今月9月2日に開かれたオフレコの懇談会で、記者たちを前にしてワイン片手にこんな話を披露したという。

「蓮舫あれはいい女や〜」
「(強行採決で蓮舫が詰め寄ってきたら)抱きしめちゃう」
「(福島瑞穂は)総理に質問しているのに、委員長の俺の目を見ている。俺のことが好きなのか?」

 女性議員たちは、国会において社会の問題を提議するため、母として、仕事をする女性として発言することがある。あるいは社会的弱者の女性たちの声を届けるため、「同じ女性として」と言葉にすることもある。だが、それは女性という立場を「利用」しているわけではない。安保法制についての議論でも、彼女たちは一議員として疑義を呈してきた。なのに、鴻池参院委員長の発言からは、結局、女性議員を性的な存在としてしか扱っていないことが伝わってくる。

 今回の女性議員たちの自発的な行動は「女を利用した」ものではないと考えるが、もしそうだとしても、このように一議員としてではなく性的な女としてしか取り合わない男性議員に対して、戦略的に女として対抗して何が悪いというのだろうか。

 本サイトは、野党女性議員たちの行動を支持するし、民主主義をないがしろにする政治に抵抗した行動を"女のヒステリー"にすり替えようとする産経、読売などの卑怯な報道には断固抗議したい。ヒステリーを起こしているのは、あなたたちが書き綴った記事のほうだ。
(水井多賀子)