セ・リーグ優勝争いの行方がまったく見えてこない。9月16日現在、首位のヤクルトから1ゲーム差で阪神が追い、そこから1ゲーム差で巨人、さらに1.5ゲーム差で広島が続いている。3.5ゲーム差の中に4チームがひしめき合う大混戦。そんな中、首位を走るヤクルトは「主砲・バレンティン復帰」という最後のカードを切ろうとしている。

 バレンティンは昨シーズン途中にアキレス腱の手術のためアメリカへ帰国。今シーズンは4月24日の巨人戦(神宮)で復帰するも、その試合で左太ももを肉離れ。翌日に登録抹消されると、再び手術。4カ月のリハビリを経て、ようやく9月7日に再来日。翌日からファームで練習を開始するなど、復帰に向け意欲を燃やしている。

 バレンティンが来日すると真中満監督は「一軍での復帰は早くて(9月)18日以降と考えています」とコメントした。

 今季、ヤクルトはここまで主砲であるバレンティンが不在でも、チーム打率と得点はリーグ1位を記録。そこに2013年にシーズン60本塁打の日本記録を達成したバレンティンが加わるとなれば、他球団にとっては"脅威"以外の言葉は見つからないはずだ。

 杉村繁チーフ打撃コーチは、バレンティンが加わる打線について「いるといないとでは全然違う。ゲーム勘などいろいろ不安視されることはあると思うけどね」と言い、こう続けた。

「まず一流投手というのは、そう打てるものではありません。ボールのスピード、制球力、変化球、それに精神力とすべて揃っています。だけど、そうした投手を打てるのがバレンティンなんです。だから今、欲しい(笑)。試合の流れを変えられる、打線の核となる選手がいるチームが強いに決まっているんですから。今の山田(哲人)がそうかといえば、まだそこまでではない。バレンティンはホームランが打てるし、フォアボールも選べるので出塁率も高い。なにより、バレンティンが加わることで、山田や畠山(和洋)へのマークが薄くなる。バレンティンには数字から見えない、チームへの貢献力があるんです」

 9月15日、戸田(埼玉)で行なわれたイースタンリーグでのヤクルト対ロッテ。バレンティンは試合前のフリー打撃でバックスクリーンを軽々と越えていくなど、長打力は健在。バッティング投手を務めた伊勢孝夫バッティングアドバイザーは言う。

「春先に見た時(アキレス腱手術後の調整期間中)と比べれば数段いい。あの時はランニングするにしてもぎこちなかったから。今の状態は6〜7割やね。僕らが投げる球を遠くに飛ばして気分がいいと思うけど、まだピッチャーのボールは打っていないわけだから。今の状態では140キロを超すボールへの対応は難しいんじゃないかな」

 この試合、バレンティンは「3番・DH」で出場。見逃しの三振ひとつを含む2打数0安打(2四球)という結果に終わった。だが、「久しぶりにスライディングをしたけど、足は大丈夫」と走塁も無難にこなし、復帰に向け順調に回復しているようだった。

 試合後、バレンティンは多くのファンが見守る中、報道陣に囲まれると次のように語った。

「フリーバッティングは良かったのですが、やはり試合になるとボールのキレもスピードも違います。まだ本来のタイミングが取れず、自分からボールを迎えにいってしまった。ボールを呼び込めていない。ただ、思ったよりボールは見えていたので、悪くはないです」

 16日に行われたロッテとの練習試合では、守備機会こそなかったがレフトの守りにもついた。当初の予定通り、18日から始まる巨人戦(神宮)での一軍登録が濃厚となった。

 現在、首位を走るヤクルトにあって、バレンティンの復帰はギャンブル的な要素を含んでいる。バッティングはもちろん、守備や走塁での不安があるからだ。はたして、バレンティンはヤクルトの切り札となれるのか、それとも......。いずれにしても"バレンティン復帰"が、混戦セ・リーグをドラマチックに盛り上げることになるのは間違いなさそうだ。

島村誠也●文 text by Shimamura Seiya