フジサンケイグループHPより

写真拡大

 産経新聞とフジテレビの安倍応援団ぶりがエスカレートしていることは重々わかっているつもりだったが、まさかこんなことまでやってくるとは......。

〈FNN世論調査で分かった安保反対集会の実像 「一般市民による集会」というよりは...〉

 9月14日、産経新聞がウェブ版でこんな見出しの記事を公開した。産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が12日・13日に実施した合同世論調査で「安保法案に反対する集会やデモ」に関してアンケートをとったところ、〈最近注目を集める反対集会だが、今回の調査からは、「一般市民による」というよりも「特定政党の支持層による」集会という実像が浮かび上が〉ったというのだ。

 この記事に、ネトウヨたちは大喜び。「やっぱりあいつらは共産党だった」「反日政党支持者がデモを起こしている」などというコメントを拡散させている。

 しかし、それがいったいどういう調査結果にもとづくものなのか、改めてチェックしてみたら、これがびっくり仰天。〈国会周辺など各地で行われている安全保障関連法案に反対する集会に参加した経験がある人は3.4%にとどまった。共産、社民、民主、生活各党など廃案を訴える政党の支持者が7割を超えた〉から。それだけが根拠らしいのだ。

 マスコミの世論調査で普通に野党の名を答えただけで「一般市民」じゃなくなるのか?という疑問もさることながら、それ以前に、安保法案反対デモの参加者が、安保法案に反対している政党を支持するのは当たり前の話ではないか。

 むしろ、この調査で注目すべきは、デモ参加者のうち、民主、共産、社民、生活"以外を"「支持する」と答えた人が26.5%いるということだろう。そのなかには、当然、「平和の党」を標榜してきた公明党支持者もいるし、安倍首相のやり方に疑問をもつリベラルな自民党支持者もいるはずだ。しかし産経は、この記事のなかでは民主、共産、社民、生活以外の支持者の内訳については、一切書いていない。つまり、自分たちに都合の悪い調査結果を意図的にネグり、自分たちの主張したい「特定政党を支持する活動家」というようなデマに誘導しているだけなのだ。

〈安全保障関連法案に反対する集会に参加した経験がある人は3.4%にとどまった〉〈集会に参加したことがない人は96.6%で、このうち今後参加したい人は18.3%、参加したいと思わない人は79.3%だった〉という記述も同様だ。

 産経とフジは3.4%という数字で、「少数の特別な人たち」ということを印象づけたいらいしいが、今回の世論調査の対象である20歳以上の国民の「3.4%」というと、およそ356万人にものぼる。

 デモの参加は交通の便や仕事の都合などの問題もあり、単なる反対意見の表明よりはるかにハードルが高い。それなのに356万人もいるというのは、すごい数字だろう。しかも、デモ未経験者のなかで「今後参加したい人」が18.3%もいる。経験者と合わせれば21.7%、実に国民の5人に1人以上が安保反対デモに参加したいと考えているのだ。

 欧米各国と比べて大衆の社会運動への意識が低いと言われてきた日本で、ここまでデモ参加の意識が高まっているというのは、未曾有の事態と言っていい。それを、平気で「とどまった」などと書くのだから、もしかしてこの新聞社の人間は基本的な算数もできないのか、と心配になる。

 さらに、デタラメぶりをさらけだしていたのは、年代に関する調査結果と分析だ。

〈参加経験者を年代別に見ると、最も高いのは60代以上の52.9%で、40代の20.5%、50代の14.7%が続いた。20代は2.9%で、20代全体に占める参加経験者の割合は0.8%にとどまった。各年代での「今後参加したい人」の割合を見ても、60代以上の23.9%がトップ。20代も15.5%だったが、「60年安保」や「70年安保」闘争を経験した世代の参加率、参加意欲が高いようだ〉

 ようするに、産経は「安保反対デモの中心は若者ではなく老人」と言っているのだが、もしかして、彼らは自分たちの旧態依然たる調査方法のことをわかっていないのだろうか。

 産経FNN合同世論調査は、コンピューターで無作為に発生させた数字の電話番号にダイヤルするRDD方式でなされている。が、この方式で電話をかけるのは固定電話に限られており、携帯電話やスマートフォンにダイヤルされることはない。独身の若者、とりわけ20代や30代に関しては、そもそも固定電話自体を自宅に引いていないことがほとんどだし、主婦層や高齢者と比較して外出していることが多いので、調査の実数を確保しづらい。これは多くの専門家が指摘していることでもある。

 しかも、調査が行われた9月12日・13日は土曜日と日曜日にあたる。たとえば13日には大阪で主催者発表2万人の大規模デモが行われるなど、この土日も全国で安保反対デモが催されていた。ようは、かえってデモに参加していたことで電話に応じられず、世論調査の数字に反映されなかった可能性もある。ましてや未成年は最初から調査対象ではなかったのだから、高齢者が多くなるのは当然だろう。

 結局、これも、SEALDsなど学生や若者による"フレッシュな市民運動"のイメージを矮小化したい産経とフジが無理やり、「老人が中心」という結論に誘導しようとして持ち出したにすぎない。

 だが、どれだけ安倍政権の御用メディアが詐術を使ってマイナス情報を喧伝しても、デモの具体的な映像を見れば、老若男女、あらゆる世代が参加し、多くの人が特定の党派と関係なく集まっていることはすぐにわかるだろう。そして、何より、国民の大多数が戦争法案の廃案を望んでいることも、各種の世論調査を見れば明らかだ。

 実際、前述の産経記事ではネグられていたが、産経FNN合同世論調査でさえ、「今の国会で、安保関連法案を成立させることについて」という問いに対し、「賛成」が32.4%、「反対」が59.9%という結果が出ているのだ。

 昨日の国会での中央公聴会に呼ばれたSEALDsの奥田愛基氏は、公述人としてこう述べていた。

「SEALDsはたしかに注目を集めていますが、現在の安保法制に対して、その国民的な世論をわたしたちがつくり出したのではありません。もし、そう考えていられるのでしたら、それは残念ながら過大評価だと思います。わたしの考えでは、この状況をつくっているのは、まぎれもなく、現在の与党のみなさんです。
 つまり、安保法制にかんする国会答弁を見て、首相のテレビでの理解しがたいたとえ話を見て、不安に感じた人が国会前に足を運び、また、全国各地で声をあげはじめたのです」

 この真摯で誠実な言葉に比べて、フジ、産経の卑劣さはどうだろう。偏った調査結果をさらに歪曲して"安保反対派は「一般市民」ではない"とばかりに、大多数の"市民の声"を排除しようとする──。フジサンケイグループはそろそろ「安倍サマ専用謀略ネットワーク」とでも改名したらどうだろうか。もっとも、かなり頭の悪い謀略機関ではあるが......。
(小杉みすず)