ハーフタイムになると、新戦力のFWネイサン・ダイアーが急ピッチでアップを開始した。そのダイアーが後半開始時から投入され、代わりに退いたのは岡崎慎司。日本代表FWのプレミアリーグ5試合目は、わずか45分であっけなく終わってしまった。

 しかしながら、パフォーマンスは決して悪くなかった。「最初の立ち上がりはメチャメチャ良かったと思う」と本人が言うように、序盤は積極的に仕掛けて21分までに2度のチャンスを作った。胸トラップから素早くシュートを放った1本目は、元イングランド代表DFのジョリオン・レスコットがブロック。ペナルティエリア内でグラウンダーのクロスをフリーで受けた2本目も、トラップが大きくなってシュートまでもっていけなかったが、ゴールへの姿勢は示していた。

「そこからチームとともにしぼんでいった」と唇を噛んだように、その後は見せ場を作れなくなっていったが、悲観しなければいけないほど内容が悪いわけでもない。交代を告げられると、岡崎は「『交代が俺かよ』という気持ちはあった。結局、俺かぁ......」と感じたという。

 岡崎の交代理由について、クラウディオ・ラニエリ監督は「世界中を飛び回って帰ってきた。悪くなかったが、これまでほど良いプレーでもなかった」と代表戦の影響を説明したが、岡崎自身は「自分の良さを出せなかったわけではない。周りの選手とさほど変わらなかった。みんな悪かった」とこぼした。

 たしかに、岡崎のプレーうんぬんの前に、チームパフォーマンスがまったくと言っていいほど振るわなかった事実のほうが遥かに重いだろう。動き出しが鈍いうえにパスを出すタイミングも遅く、アストン・ビラの左MFジャック・グリーリッシュを中心としたアタックに押し込まれていった。39分には先制ゴールを被弾。指揮官がなんとかして悪い流れを断ち切りたいと考えるのは自然なことで、1枚目の交代カードに選ばれたのが岡崎だった......ということになる。

 後半開始時からMFリヤド・マフレズをトップ下に据えた4−2−3−1に移行するも、それでも流れを引き寄せられず、63分に2点目を献上。これで決着がついたかと思いきや、追い詰められたレスターがここから勝負をひっくり返してしまうのだから、不思議なものである。セットプレーから1点を返すと一気に勢いに乗り、たった20分の間に畳み掛けるようにして3点を奪って勝利してしまった。

 勢いに乗ったら止まらない──。岡崎が「(このチームは)勢いですね」と語るように、ラスト20分間の総攻撃にはレスターのストロングポイントが凝縮されていた。選手全員が「縦へ」「前へ」という意識を強く持つことで躍動感が生まれ、チーム全体がフル稼働する。「俺が前から行くことで、チームが乗ってくる」と語る岡崎の積極果敢なプレッシングも、言わばこうしたプレースタイルのガソリンのような存在で、好調の原動力になっているのだ。

 しかし、「(ホームの)トッテナム戦でもそうだったが、引いたときに、やっぱり前へ出て行かないクセがチームにある。今日の試合の前半もそうで、前へあまり行かずに引いたときのプランがない。自分たちがボールを回させてもらっているときもそう」(岡崎)と言うように、慎重策に比重を置いたときは攻撃の形をうまく作れない......という悪いクセをレスターは抱えているのだ。セントラルMFの「構成力不足」はその一因で、アストン・ビラ戦で初先発した新戦力のMFギョクハン・インラーも持ち味の展開力を発揮できず、むしろプレミア特有の展開の速さに戸惑う場面のほうが目についた。

 アストン・ビラ戦では2点のリードを許したことで、結果的にレスターは前へ出ざるを得なくなった。言うなれば、追い込まれてようやく本来の姿を取り戻した格好である。

 ここに、前半だけで交代させられた岡崎のジレンマがある。

 岡崎としては、献身的な守備で貢献しながらゴールを目指したい。たとえ劣勢にまわっても、セカンドストライカーの位置から「ファーストディフェンダー」として守備に走りつつ、ペナルティエリア内の危険なエリアに顔を出してチャンスにつなげたい――と考えているのだ。それが、自分の強みであるという自負がある。

 しかし、こうした献身性はゴールやアシストという結果に比べると、どうしてもインパクトや派手さに欠けてしまう。特にチームが劣勢にまわると、前方へ仕掛けられず、中盤も組み立てられず、という悪循環。チームとしての未熟さが増長され、結局、FWジェイミー・バーディーの「スピード」や、マフレズの「突破力」といった『個の力』に頼らざるを得なくなるのだ。

 そうなってしまうと、周りに活かされるタイプの岡崎は、難しさが増す。とりわけベンチには、「高さ」のFWレオナルド・ウジョアや、「速さ」のダイアーら強烈な個の力を持つ選手が控えているだけに、ラニエリとしては選手交代のカードを切りたくもなるのだろう。

「替えても影響ないというところで、そこまで評価されていないのかなと感じる」と岡崎。イタリア人指揮官の日本代表FWへの評価は決して低くないが、たとえば4試合連続フル出場中のバーディーのように、「絶対に不可欠な存在」という立ち位置でもない。こうした状況を変える手立てになるのは、やはりゴールという結果を掴んでいくしかないように思うが、はたしてこの難局をどう乗り越えていくだろうか。

田嶋コウスケ●取材・文 text by Tajima Kosuke